BBB MAGAZINE
CREDIT
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- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
リトルカブ
いまでは全国的なメジャー食となっている香川の讃岐うどん、チェーン店などもできて勢力は全国各地に広がっている。2006年には香川県を舞台にしたうどんの映画まで作られた。
僕は大のうどん好きで週に3回以上必ずうどんを食べている。我が家ではカトキチの冷凍うどんが一年中冷蔵庫に常備されていて、もしストックがなかったりしたら大変、飛んでスーパーへ買いに行くだろう。
今回はせっかく四国へ行くので大好きな讃岐うどんにしようと思うが、どこにでもあるような普通のうどん屋では面白くない。できれば「えーっ、ここがうどん屋!?」と仰天しちゃうようなお店を紹介したいところ。
実は10年前に日本一周をしているときに、僕はある知人から「恐るべき讃岐うどん」なる本をいただいた。これが読んでみるとめちゃ面白い。地元タウン誌のうどん好きの編集部員達が、誰も知らないうまいうどん屋を求めて、いろんな場所へ行くのだが、これがとても地図がなければたどり着けないド田舎の店だったり、客が自らまな板でネギを刻んで入れなきゃいけない店だったり、うどん屋なのに店名に「米穀店」とか「製麺所」と付いていたり、かなり怪しいうどん屋ばかりなのだ。
ではでは、今回はそんな怪しいうどん店をめぐった中で「もし、讃岐うどんを食べるなら、ここだっ!」と激しく思った、山内というお店を紹介します。
「この辺に入口があるはずなのになぁ…」
すでに30分近く同じ道を行ったり来たりしていた。周りは畑と民家と林…どこにでもありそうな平凡な田舎の風景が広がっている。資料ではこの県道から入る道の入口に、うどん屋の案内看板があると記されているのだが、それらしき看板が見つからないのだ。
県道のナンバーも合っているし、地図の通り線路が平行に走っている。完全に迷子になった僕は近くにあった郵便局に飛び込んだ。窓口で山内を尋ねると、何度か聞かれたことがあるのだろう、丁寧にわかりやすく道順を教えてくれた。どうやらかなり行き過ぎていたようだ。
3kmほど戻ると、看板が簡単に見つかった!なぜこれに気が付かなかったのか、不思議に思うほど大きい。手書きでうどんと書かれた看板。入口の道は思ったよりも狭かった。脇道へ入ってクネクネと走ると小さな丘が現れる。そこに再びうどんの看板。丘をグルッと回り込むと、山内が忽然と現れる。
「おおおっ!ここかぁ!」
主要道路から遠く離れた僻地にうどん屋が存在していることに驚くが、まるで民家のような平屋建てという建物にも驚く。外観は少し汚れているところにも、何ともいえない哀愁を感じる。普通に考えるうどん屋の概念を越えた、怪しさが山内の魅力なんだろうな。こりゃ楽しみだ。
家の庭のような駐車場にバイクを止めて、のれんをくぐる。内部は田舎の食堂風。いろんな形のテーブルが置いてある。席は30席くらいあるが、ほぼ満席だ。湯気の上がる釜の前で作業をしている大将の所に声をかけられると「ひやあつの大」を注文する。
この「ひやあつ」の「ひや」は冷たい麺こと(冷たい方が麺が締まっていてコシがあるのだ)で、「あつ」はそこに熱いダシをかけるという意味。サイズは小が1玉、大が2玉、特大3玉となっている。うどんの入ったどんぶりを受け取ると数ある天ぷらの中からげそ天を選んびどんぶり載せる。そして隣のレジへ行き精算をする。
ちなみに大が200円。天ぷらが120円。合計320円という安さ。儲けに走っていないところがまたいいね。
どんぶりを持って空いている席に腰掛ける。あらためてうどんを眺める。箸で麺を摘むといわゆるエッジが効き角張っている。いかにもコシが強そう。食べてみるとやはり弾力満点。さっぱりしたダシとの相性もよかった。
このエッジの効いた麺ができる理由のひとつは地下水を使用していること、そしてもうひとつが火力が強い薪釜を使っていること。この時代でも頑固に薪釜を使い続ける、こだわりからうどんに対する熱意が伝わってくる。さらに加えて、どんぶりからはみ出すほど大きなげそ天がうまい。噛めば噛むほど、たこのコクとうまみが舌と胃袋に染み込んでくる。
「うーん、幸せ!」
うどん食べているだけで幸せを感じる。ズルズル…笑顔が止まらない。うどんはシンプルなのにスゴイ食べ物だとあらためて思う。店の怪しい雰囲気、うどんと天ぷら、全てに大満足だった。
店先のテーブルで休んでいるとバイクがトコトコとやって来た、話してみると高知から来た2人組と沖縄帰りという長期ライダーだった。高知の人はこのうどんを食べるためだけに80kmも走ってきたという。それほどまでに山内の愛されているのだ。ライダーが集まると自然にバイクとうどん談義に花が咲く。思い出がたくさん残る、旅ごはんとなった。
かんいち的採点表
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