BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
モトラ
4.朝起きたら周りは羊だらけ[イギリス]
ヨーロッパはキャンプ文化がしっかり根付いている。湖や海岸、山間部など自然豊かな場所は当然のこと、観光地、大都市、郊外の町など至るところに設備の整ったキャンプ場あった。ヨーロッパでは子供と行く家族旅行といえばキャンプが定番。家族でキャンプを楽しむ姿をあちこちで見かけるし、泊まっている子供たちから「どこから来たの?」とよく声をかけられた。宿泊者のスタイルもバラエティでバックパッカーから自転車、バイク、車、キャンピングカーと色々。キャンパーもひとり旅、カップル、グループ、家族などあらゆる層の人たちがキャンプを楽しんでいた。
そんなヨーロッパ、イギリスであるキャンプ場に夫婦でテントを張った。緑の芝生がドーンと広がる気持ちのいいテントサイトで、気分は上々。簡単に夕食を済ませ、いい感じで夜を過ごし、寝袋に入った。ところが翌朝、不思議な声で目を覚ました。「メェ~、メェ~」羊の鳴き声が、近くから聞こえるのだ。それも近いどころではなく、すぐ隣に羊がいる感じなのだ。「ええっ、まさか」飛び起きてファスナーを開けると、すぐ目の前で羊が草を食べているではないか! しかも周りに何頭もいる。もう完全にテントサイトが羊たちに占領されていて、まるで牧場にテントを張ったみたいになっている。
「あっ、そういえば...」昨日テントを張るとき、周りに羊の糞のようなものがたくさん落ちていて「これ何だろうね?」と妻と話したことを思い出した。確かに看板の名前に「○○ファームキャンピング」って書いてあったけど、まさか羊が飼育されている場所にテントを張るとは思わなかった。日本では絶対にありえない、さすが酪農の国イギリス。このキャンプ場のことは今でも夫婦の笑い話として語られ続けている。
5.眠れない夜[アイルランド]
イギリスの隣、アイルランド。イギリスは雨が多いことで有名だが、アイルランドも同様、よく雨に降られた。物価の高いヨーロッパはホテル代が高いのでなかなか泊まることができず、ほとんど毎日のようにキャンプ場に泊まっていた。そんなある日、小雨が降る中、海の近くにあるキャンプ場に到着。海が眺められる丘の上にあり、いい雰囲気だが、雨ではそんな魅力も半減。早々とテントを張って、休むことにした。
夕食も終わり寝袋に潜り込むと風が吹き始めた。最初はテント地が少し揺れる程度だったが、徐々に強さを増してくる。テントがバタバタと大きな音を立て、激しく揺れ始めた。隣にいる妻が「大丈夫? テント飛ばされない?」と心配し始める。「ペグを打っているから大丈夫だと思うよ」と応えながら、僕もかなり心配になってきた。
すると強風でペグが一本抜けて、テントが大きく傾いた「やばっ!」と寝袋から飛び出し、テントが飛ばないように両手で支える。それから重い荷物を風上のほうへ置き、重石代わりにする。外へ出てペグを打ち直すが、不安は消えない。
この時間、この状態ではテントを撤収してもほかに泊まれる場所がないだろう。とりあえず強風が収まるまで、この状態で耐えるしか方法はない。それから妻とふたり、テントを飛ばされないように支える担当、寝る担当を交代しながら、夜明けまで必死に頑張った。
長い一日だったが、何とかテントが飛ばされずに朝を迎えることができた。風も少し衰えてきたので、早く出発しようと大急ぎでテントを撤収、パッキングをして走り出した。しかしヘトヘトに疲れている上に超寝不足、とても走る気力など湧かず、隣り町で安い宿を見つけるとすぐにチェックイン。ベッドに入ると死んだように眠った。
6.風の大地パタゴニア[アルゼンチン]
南米大陸の中で最もキャンプをしたのがアルゼンチンだった。物価が高くてホテルに泊まれないこともあったが、ヨーロッパ文化が色濃く残っているため、設備が整ったキャンプ場があり、よく泊まった。
アルゼンチンは南部へ行くほど自然が豊かになり(南半球なのでさらに寒くなる)、キャンプ場に泊まる比率はどんどん増していった。コロラド川以南は「パタゴニア」と呼ばれるエリアで、アンデス山脈の影響から強風が吹くことで知られている。そのときはスーパーカブ2台、夫婦で旅をしていたのだが、パタゴニアは風が強すぎてサイドスタンドを立ててもバイクが倒れたり、まっすぐな道なのに風上に車体を傾けながら走ったり、まさに風と戦う毎日だった。
そんな訳でキャンプも苦労した。風の弱い日は問題ないが、強風の日にテントを張ろうと思いテントを広げたら、そのまま凧のように引っ張られ人間ごと飛ばされそうになった。「びっくりした~!」それでも頑張って張ろうとしたら、今度はポールが思い切り歪んで折れそうになった。結局「これは無理、あきらめよう!」ということでテント泊は中止、宿に泊まったことがあった。とにかくパタゴニアの風はすごかった。
しかしそんな地域ならではのキャンプ場があった。キャンプ場の案内に沿って受付してからテントサイトへ行くと、なんとサイトごとに大きな防風壁が立っているではないか。こんなの初めて見た、これなら強風でも大丈夫だ。さらに風の影響を受けないよう調理するキッチンとダイニングも室内に作られていた。至れり尽くせり、これぞ風の大地パタゴニアのキャンプ場だった。
7.マンゴー食べ放題[マラウイ]
アフリカにも少ないがキャンプ場はある。歴史的な背景からアフリカにはヨーロッパ系の企業がたくさんある、そこに勤める欧米人がホリデーを楽しむためのキャンプ場だ。僕のような外国人旅行者が泊まることがあるようだが、全体的にはとても少ない。設備もトイレとシャワーだけと最低限のところが多いが、場所によっては超高級キャンプ場もあるらしい(宿泊したことはないが(笑))。
思い出に残っているのがアフリカ南部、マラウイのキャンプ場。マラウイ湖という熱帯魚が泳ぐ大きな湖があって、その湖畔にはいくつかキャンプ場が点在していた。僕が見つけたキャンプ場は一泊約200円とその中でも激安。設備は水シャワーとトイレのみ。それでも必要十分だ。地面はフカフカの砂地。囲いがあることで一応キャンプ場とわかるようになっている、なんともアフリカらしいアバウトなキャンプ場だ。一応、草屋根のレストランが隣接しているのだが、宿泊者は僕ひとりだけ。これでやっていけるのか、心配になる。一応、西洋人向けにハンバーガーやホットドックなどがあったので食べてみると、味はまずまずだが、外国人向けで値段が高いのが玉にキズだった。
そのキャンプ場にした理由はテントサイトに大きなマンゴーの木があることだった。近づくとマンゴーが砂の上にいくつも落ちていて、マンゴーのいい匂いがあたりに漂っていた。管理人に食べてもいいのか聞きに行くと、「あははは、ああいいよ、いくらでも食べて!」というではないか。それから3泊4日の間食べまくり、それからマンゴーはしばらく見たくない、というほど食べた。そんなキャンプ場はこれが最初で最後だった。
※注意:天候や諸事情により内容等が変更される場合があるので、詳しい内容は直接キャンプ場までお問い合わせください。
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