BBB MAGAZINE

  • インプレッション

    2016.09.28 / Vol.06

    SV650 ABS 試乗インプレ・レビュー

CREDIT

取材・文/武田正衛 動画インプレ/小林ゆき

1999年に発売された初代SV650から、17年もの長きに渡り熟成が重ねられてきた650ccVツインエンジン。このユニットを搭載する新型SV650は、スズキの伝統的とも言える"愚直な方法"で改良を積み重ねられたことにより、完成度が高く、出力・フィーリングとも非常に高いレベルに仕上げられている。

SV650
SV650
SV650

スズキイージースタートシステム

ハンドル
ハンドル

早速股がりエンジンを始動してみる。セルボタンを押してすぐに手を離しても、エンジンが始動するまでセルモーターが回り続けるという"スズキイージースタートシステム"によってエンジンが始動した。従来では、エンジンが始動するまでセルボタンを押し続けなければならなかったが、この新型SV650ABSではセルボタンをワンプッシュするだけで始動できるという使い勝手の良いシステムが装備されている。

ローRPMアシスト機能

写真/小林ゆき
写真/小林ゆき
スズキ新型「SV650ABS」低速走行インプレッション#1

さらに使い勝手が良いのが、ローRPMアシスト機能。これは、スタート時にライダーがクラッチを繋ぐ瞬間、回転数が自動的に上がり(自然にアイドルアップするような状態)クラッチを繋いで負荷が掛かっても、アイドルよりも低い回転数になることが無くスムーズにスタートできるというシステム。通常の発進時はもちろん、特に渋滞時のノロノロ運転やUターンの時など、エンストの心配を限りなくゼロにしてくれるライダーに優しい装備だ。また、緊張感がアップする坂道発進や踏切一時停止からの発進にも威力を発揮し、ライダーはエンストの恐怖という緊張感から開放される。

国内新排気ガス規制にも対応

国内新排気ガス規制
スポーツライディング

国内新排気ガス規制(ユーロ4相当)をクリアしながら、グラディウスよりも約3馬力アップしたエンジンは、低回転ではトルクで走る感覚を強く感じる。もともとスズキVツイン650ccエンジンは、低速トルクに充分余裕を持たせたセッティングだったが、新型SV650ではさらに低回転での余裕が大きくなったようだ。スタート時にクラッチを繋いだ瞬間、少しでも乱暴にスロットルを開けるとフロントアップしてしまうパワフルなスタートダッシュも簡単に体験できる。インジェクションセッティングに関しても細やかにプログラミングされているようで、低回転から中〜高回転へ移行する時のトルクの谷は感じられずきれいに高回転へつながる。さらにレッドゾーン手前では回転上昇速度がさらに速くなり、高回転でのパワーの盛り上がりを演出。スポーツライディングをよりメリハリのある楽しいものとしてくれている。

サスペンション・ブレーキ周り

ブレーキ
サスペンション

フロントサスペンションは軽快ながら安定感も持ち合わせているスタンダードなセッティング。リヤサスは非常に良く動きしっかりと路面を掴んで路面情報をライダーに与えてくれる。特に今回試乗した時のような滑り易い路面などでも、タイヤをしっかりとグリップさせてくれて安心感が高い。フロントブレーキには290mmのダブルディスク、リヤブレーキには240mmのシングルディスクが採用されている。制動力やコントロール性は公道やサーキットでのスポーツ走行では不足のない性能を有している。

ABSの動作は?

ABS
ABS

車名にもなっているABSを故意に作動させてみる。指先や足先にABS特有の"レバーの戻され感"は、前後ともわずかに現れるだけ。それも"レバーの戻され感"は停止直前の数秒だけしか感じないため、初めてABSを体験するライダーにも大きな違和感無く受け入れやすいのではないだろうか。ハンドリングは極めてニュートラル。マシンをバンクさせて行くと、低速では適度なセルフステアが働き小回りをアシストしてくれるが、必要以上にセルフステアが介入してくることは無い。要するに、ハンドルが必要以上に切れ込む事もなくまた外に逃げることもなく、あくまでもライダーの意志通りに自然な旋回ができるハンドリングとなっている。

気楽に乗れる お勧めの1台

SV650
スポーツライディング

装着しているタイヤのサイズはフロントが120、リヤが160。特にリヤが160サイズということで、このクラスの一般的なタイヤサイズである180よりも2回りほど細い。このため、コーナーでの寝かし込みや切り返し時には、180タイヤ装着マシンと比べて軽い操作力で向きを変えることができる。これは、ワインディングでの軽快なハンドリングに寄与すると同時にライダーへの体力的な負担も少なくなることから、ツーリングライダーにも大きなメリットとなる。また、タイヤ交換費用(ランニングコスト)が抑えられる点もユーザーにとっては大きなメリットのひとつだ。

今やスズキの伝統エンジンとなりつつある90度Vツイン650ccは、初期型SV650からエンジンの基本となる排気量を"まったく変えず"に熟成に熟成を重ねてきた。熟成を重ねるという点では、かつてのスズキ油冷エンジンにも通ずるスピリットを感じる事ができるし、スズキ技術者のまじめさが伝わってくるエンジンでもある。もし、スズキの試乗会等で試乗できるチャンスに遭遇した時には是非とも試乗していただきたい。そして650ccVツインエンジンの懐の深さと車体の作り込みの良さを体感してみて欲しい。

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