BBB MAGAZINE

  • MotorCycleDays

    2014.07.26 / Vol.11

    バイクトラブル大百科「海外の旅・前編」

CREDIT

ツーリング中に起こって欲しくはないけど、無事に乗り越えて後で振り返ると、強く心に残っているのがバイクトラブル。僕がバイクで旅した日々は国内外合わせて10年間以上、これまでどんなトラブルに遭遇して、そこをどう乗り越えてきたのか!? "他人の不幸は蜜の味!?(笑)"のバイクトラブル特集! 今回は海外の旅の前編、自身が描いたイラストと一緒に振り返ります!!

①「旅の初日にバイクが動かなくなる!」 ~ホンダ モトラ50cc/オーストラリア/1987年~

ブレーキワイヤーがハブに巻きついている
ブレーキワイヤーがハブに巻きついているではないか!!

初めての海外旅行がバイクでのオーストラリア一周。日本から船便で送ったモトラをシドニーで受け取り、ついに夢大陸への一歩を踏み出した。流れる未知の風景にワクワクしながら首都キャンベラへ向かって走っているとグギャォーーーッ!と異音を飛び散らせながら、バイクが突然止まった。「...うそだろ!?」

何が何だかわからないまま、バイクを降りてリアタイヤを覗き込むと、とんでもないことになっていた。リアブレーキを止めるボルトがなくなり、ブレーキワイヤーがハブに巻きついているではないか!! とんでもない状況に背筋が凍る。船で送るときにバイクを自分で分解して梱包したので、その時にボルトが緩んだのだろうか?

僕の旅はここで終わってしまうのか? そんなの嫌だ! とにかく自力で何とかしなくては。路肩にバイクを移動させて修理を始める。少しずつだが修理できたが、自走できるところまではいかないまま、日が暮れてしまった。まさか記念すべき旅の初日に、こんなことになるとは、想像もつかなかった。場所は車のほとんど通らない田舎の牧草地帯。路肩の茂みに寝袋を敷いて寝ていると、遠くから車のライトが近づいてきた。気が付き降りてきた人に状況を説明すると、嬉しいことに「それは大変だな、よし、おれの家で直そう」と言ってくれた。なんて優しい人だろう。


トラックで運んでもらった
状況を説明すると、嬉しいことに「それは大変だな、よし、おれの家で直そう」と言ってくれた。なんて優しい人だろう。

バイクを車に乗せて家へ。どうやら牧場主らしく、たくさんの大型牧場機械が置かれ、大きなガレージには工具が山のようにあった。メカに詳しく修理を手伝ってくれ(というかほとんどやってくれた)、ある程度動くところまで直すことができた。もう、心から感謝だ。さらにその夜の食事から、ベッドまで提供してくれた。まさに地獄から天国。本当にありがたかった。翌朝、町のバイク屋まで車で乗せて行ってくれた。「サンキュー!」といいながら何度もハグした。

ホンダ モトラ50cc/オーストラリア/1987年
ホンダ モトラ

修理が終わると再び走り出すことができた。喜びで胸がいっぱい。旅の初日に絶望的になったが、オーストラリア人のお蔭で旅を再開することができた。いまとなっては忘れられない、貴重な思い出となっている。

②「エンジンが焼き付いたーーっ!!」 ~ホンダ モトラ50cc/オーストラリア/1987年~

ドレンボルトがない。
ナナナナント! ドレンボルトがない。

オーストラリアの旅を始めて3か月、大陸のど真ん中にあるアリススプリングスの町で何度目かのオイル交換を済ませると、無人の砂漠地帯に延びるアウトバックルートへ向かった。ダートを600km走った先の町までストアもガソリンスタンドもないという情報だったので、水と食料、予備ガソリンを積んで突入する。

ブッシュと赤土の道がどこまでも続く、ひたすら走り続け、もうすぐ半分というところで突然ウォ~ン!とスピードが落ち、バイクが止まってしまった。同時に焼けたような匂いが漂ってくる。2度目のバイクトラブル発生。車と一日数台しかすれ違わないアウトバックのど真ん中で、なんてこったい! スタンドを立てエンジンの下を覗くと、ナナナナント! ドレンボルトがない。どうやらどこかでボルトが抜け、穴からオイルが流れ出て焼き付いたらしい。

そういえば、オイル交換のとき、かなり力を入れてボルトをグイグイきつく締めたからな。もしかしたらあの時、ネジ溝が削れてバカになったのかも。穴に指を入れてみると案の定ネジ溝がなくなっていた。わーっ、大変なことになったぞ。もうアリススプリングスへ引き返えすしかないな。しかし、動かないバイクでどうやって行けばいいんだ。大陸に絶望の風が吹く。


車が通るのを待つことにする
とにかくその場で車が通るのを待つことにする

とにかくその場で車が通るのを待つことにする、もうそれしか方法はない。結局その日は一台も通らず、その場にテントを張った。翌朝、ようやく車が現れた。「神様どうか止まってください~」祈りながら大きく手を振ると、止まってくれた。よかった! 助かった!

事情を話すと、その車は100kmくらい先にある鉱山に向かっていて、そこへ行けば工場があり修理できるという。車に載せてもらい30分ほど走ると砂漠の真ん中に鉱山が現れた。人も結構働いている。まさか砂漠にこんな場所があるとは思わなかった。工具もいろいろ揃っていて、何とそこにはねじ山を削り出す機械まであった。そこで一回り太いねじ山を掘り、新しいボルトを入れることにする。出来上がるとオイルを注入。よしこれでエンジンがかかれば、走れる。

祈るような気持ちでキックを踏む。これでエンジンが動かなければ終わり。「モトラ、蘇ってくれ~!」キック、キック、キック!「頼むっ!」トット...ト...トト、トトトトトw 「やった、蘇った!」。異音もほとんどない「これならいける」。さすがカブ系エンジンは耐久力が高い、モトラにしてよかった。助けてくれたみんなにお礼を告げると、みんなも自分のことのように喜んでくれた。そして再びアウトバックの世界へ、モトラとともに飛び出して行った!

ホンダ モトラ50cc/オーストラリア/1987年
ホンダ モトラ50cc/オーストラリア/1987年

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