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    2017.06.09 / Vol.14

    2017年マン島TTレース情報! 決勝レースレポート Vol.1

Vol.2 TTの開幕レース、スーパーバイクレース

5月27日(土)のプラクティス(予選を兼ねた練習走行)の日程から幕を開けるはずだった2017年のマン島TTレース。今年は天候に翻弄されてばかり。本来、5月27日(土)から6月2日(金)の日曜日を除く毎日18時過ぎから21時まで公道を閉鎖してのプラクティスが行われるはずが、27日(土)、29日(月)、6月1日(木)の4回も雨や霧で走行キャンセルとなりました。

スーパーバイクレース、今年の見どころ

グランドスタンド
スーパーバイクに出場するスズキのマイケル・ダンロップ選手。お父さんはTT最多の伝説のライダー、故ジョイ・ダンロップの弟で同じく公道レースで活躍した、故ロバート・ダンロップ。写真はジャンプすることで有名なバラフブリッジですが、ご覧のように彼はあまりジャンプさせずに通過します。(プラクティス時に撮影)

このため、3日(土)から始まるはずの決勝の日程を教会との兼ね合いで本来レースが行えない4日(日)に第一レースのスーパーバイクを順延。第2レースのサイドカーを5日(月)に順延。さらに、予備日である6日(火)と8日(木)にもレースやプラクティスを行うことになりました。 目まぐるしく天候が変わるのがマン島TTレースの特徴でもあるのですが、21年取材してきた経験の中でここまで翻弄されることは初めてです。 さて、今年のスーパーバイクの話題といえば、昨年の覇者マイケル・ダンロップ選手がBMWから新型GSX-Rを擁するスズキにスイッチしたこと。これに因縁の対決となるであろうライバル、イアン・ハッチンソン選手が昨年に引き続きBMWで挑みます。

グランドスタンドの裏
休憩しているツーリングライダーではありません。レーススタートを待つTTライダーたち。TTは10秒ごとに出走するタイムトライアルのレースなので、トップから最後尾までは11分も要します。しばし、リラックスしたり、集中を高めます。

また、若手選手で近年台頭してきたピーター・ヒックマン選手(カワサキからBMWにスイッチ)、地元マン島のダン・ニーン選手(BMW)、お父さんはTTのサイドカーで活躍中のディーン・ハリソン選手(カワサキ)、カワサキのエースライダー、ジェームズ・ヒリアー選手らの活躍も期待されます。 モトGPマシンをそのまま市販車にしたRC213Vに乗るブルース・アンスティ選手、イギリスのバイクメーカー、ノートンの2台がどこまで食い込むかも話題になりました。

バラフブリッジ
スタート1分前を告げるボードが掲示されました。担当するのはACU(日本におけるMFJ。レース統括団体)の人です。
ブルース・アンスティ選手
グランドスタンドは大勢のお客さんで満杯です。このようなスタンドは有料ですが、コース沿いの多くは無料で観戦することができます。個人のお宅のお庭を開放している場所もあります。
山中正之選手
インターバルスタートなので、このように1台1台順に並びます。現在は、トップ20台は昨年の順位を加味した固定ゼッケン、それ以降は予選タイム順に出走します。
小林ゆき
スタートの合図はいまも110年前と変わらず、フラッグにより行われています。今年は三本足マークのマン島国旗が使われていました。

スーパーバイク・レースレポート

グランドスタンド
順位を示すリーダーボードも110年前と同じ手書きです。ペインターの方々がボランティアで担当していて、白いペンキでゼッケン番号やラップタイムをオンタイムで書き込んでいきます。レースが終わると黒いペンキで塗りつぶし、次のレースに備えます。

ようやく天気に恵まれた6月4日(日)午後からレース日程が始まりました。 世界中から押し寄せた観客で、グランドスタンドも道路沿いもいっぱいです。 マン島の三本足の国旗でスタートの合図が切られ、ゼッケン1番のデイビッド・ジョンソン選手(ノートン)から順に10秒ごとにスタートしていきます。 TTスーパーバイクは6周、約360kmを走るレースで、一人で走る耐久レースとして世界で最も長距離となるレースです。 2周ごとにピットインして給油とタイヤ交換を行います。

グランドスタンドの裏
スコアボードはボーイスカウト、ガールスカウトの子供たち担当します。上からゼッケン番号、時計のようなものはライダーがいまコースのどこを走っているか、周回数(スタート地点を通過すると紙をめくります)、ラップタイム(スコアボードの裏でペインターさんが書いた札を掲げる)となっています。

1周目、トップで帰ってきたのは、やはり下馬評通り、スズキのマイケル・ダンロップ選手。次いで、カワサキのハリソン選手、同じくカワサキのヒリアー選手が続きました。 ところが2周目。ダンロップ選手のマシンにトラブル発生、リタイヤとなるとレースは僅差で混とんとしてきます。 2周目のトップはハリソン選手(カワサキ)、3周目はハッチンソン選手(BMW)が浮上してきました。 5周目までトップ4台のタイム差が12秒以内に収まるほどの大接戦。TTは一周60kmを約17分ほどで周回するので、ちょっとしたミス、ピットワークによって容易に順位が入れ替わるタイム差です。

グランドスタンドの裏
ピットでは給油、タイヤ交換、水分補給、ヘルメットのシールドの交換などを行います。給油は主催者が用意した自然落下式の給油缶を使うことになっています。
山中正之選手
レースが終わり、ウイナーズエンクロージャーでクルーに祝福されるハリソン選手。スーパーバイクでは初の表彰台です。

結局、レースを制したのはハッチンソン選手(BMW) 。2010年にTTレース全勝(5勝)の偉業を成し遂げたあと、BSBで大怪我を負い2年のブランクを経て復活した選手です。続いて、初表彰台となったヒックマン選手(BMW)、3位はハリソン選手(カワサキ)となりました。

【RSTスーパーバイクレース】

エントリー 78台
決勝出走 67台
入賞・シルバーレプリカ 15台
入賞・ブロンズレプリカ 23台
完走 43台

【リザルト】

1位 イアン・ハッチンソン BMW
2位 ピーター・ヒックマン BMW
3位 ディーン・ハリソン カワサキ
4位 ジェームズ・ヒリアー カワサキ
5位 ダン・ニーン BMW
6位 マイケル・ラッター BMW

山中正之選手
優勝はハッチンソン選手。このトロフィーを掲げられるのは勝者のみ。入賞者に配られるトロフィーのことをマン島TTでは「レプリカ」と呼びます。
小林ゆき
レース直後にすぐ記者会見が行われます。ラジオで実況中継が行われるほか、毎晩放送されるTTのダイジェストTV番組でも放送されます。
マン島
マン島

マン島公式サイトはこちら♪♪

TT公式サイト:https://www.iomtt.com/

リザルト:https://www.iomtt.com/TT-Info/Results-2017.aspx

バイクジャーナリスト 小林ゆき

【略歴】横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。最近、KAWASAKI Ninja H2を購入。普段は総走行距離24万㎞に達した愛車GPZ900Rでの街乗り派だが、自らレース参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化について研究中。

http://yukky.txt-nifty.com/bikeblog/

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