BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
隅本辰哉
-
- バイク
Vespa
後継機種rallyとの比較
車体まわりに目を向けると、パッと見の印象は「一番デカイ」となります。とくにお尻まわりの迫力は群を抜いていて、一番と言っても間違いではないでしょう。じっさいにSSの後継モデルにあたるrally(ラリー)と比較してホイールベースが長く、フェンダーやサイドパネルも大きさが目立っています。
しかしrallyとはレッグシールドが同一で、レッグモールも同じタイプのものが使われています。それとスペアタイヤハンガーの形状がいっしょで、フロントボックスの形状が異なっていたり、サイドパネルはSSのほうが大きいといった相違点もありました。
細かな部分ではフロントフェンダーとサイドパネルのアルミトリム(飾りモール)が、160GSのものよりも簡略化された短いタイプを採用しています。またなによりも特徴的な台形フォルムのヘッドライトがSSを印象づけていました。
ちなみにSSらしさを象徴する台形ヘッドライトですが、米国市場向けでは安全基準の影響でラウンドヘッドライトにコンバートされていました。このラウンドヘッドライトはrallyやSprintにも使用されたシールドビームタイプだったりします。なお米国市場向けの丸目なSSには、3種の異なるテールライトが存在していました。
レアアイテム3
当時の各国で用意されたカタログあれこれになります。写真が同じでも、文字だけが仕向地によって異なっていたりするものがあったりしますので、集めてみるとけっこう楽しめます。
インプレッション
ときどきSSに乗った経験のある方々から「60年代半ばころの生産モデルなのにP200にそこそこついていける。だから長距離があまり苦にならないんだけど、足まわりがちょっとショボイんだよね」なんて話を耳にします。
P200といえば1978年の登場ですから80年代のモデルと言って差し支えないでしょう。......とするなら、この話はかなりの速さということになります。足まわりについては発展途上段階だったと判断できますから、速さだけが突出した印象に感じられますね。
さてさて、じつはオーナーさんのご好意で試乗することが叶いましたので、なかなか機会のないヒストリックモデルのインプレッションもお届けしましょう。
エンジン始動後の車体にまたがって、まず感じたことが「振動はあるけど、200ほど強烈な類ではないなぁ......」です。スポルトの名を冠したパワーユニットだけに、けっこう荒々しさだったりレーシーな雰囲気なんかを想像をしていたワケですよ。あ、でも肩すかしでガッカリしちゃったという話ではありません。
いざ走りだしてみると、いい意味で期待を裏切られましたね。決してピーキーに回っていくエンジンではないんですけど、ピストンバルブ特有のツキの良さとダイレクトなパワー感、そしてルーズなシフト&アクセルワークに対応する懐の深さが大いに魅力的だと感じられました。しっかりと湧き上がるパワーを感じながらツキのいいエンジンを右手で操る楽しさが味わえるので、荒々しさやレーシーな味付けがなくてもキビキビした走りは十分に堪能できますから。
今回は高速域まで試すことが叶いませんでしたけど、力強さを伴いつつ、思ったよりマイルドなパワーの出方であることでほど良く乗りやすいイメージを持ちました。郊外の信号が少ないエリアでの試乗だったこともあり、早めのシフトアップで流すように走らせるのが気持ち良いいなといったところです。力もあるので、3速ホールドでずっとそんな風に気楽に走れる心地良さが魅力だったりします。
刺すような鋭い加速や、ゼロスタートでズバッと出て行くような感覚は弱いんですけど、2stらしさも備えたフィーリングは独特でおもしろいと感じられました。グランスポルトがデビューした当時、前述していますけど1955年に150ccで100km/hを実現しているワケです。それを160ccにスケールアップする際、速さに乗りやすさがプラスされました。そして180ccとなり、スポルトの名を受け継いだスーパースポルトに進化を果たします。ここでピアッジオ社は最高速を5km/h引き上げたと同時に、扱いやすさも上乗せしてきたという印象を受けました。
グランスポルトは市販レーサーと言ってもいいほどのスペックを誇っていましたが、乘りものとして乗りやすさと扱いやすさを上乗せする必要があると判断したピアッジオ社は、だからこそSSでスポルトの系譜を断ち切ったのかもしれません。もちろんこれ以後にもスポーティなモデルは何度か登場しますが、スポルトという名を復活させないのはスポルトの定義を満たしていないということなのでしょう。
【主要諸元】
クラッチ型式湿式多板モデル名 | Vespa180SS |
---|---|
ボディカラー | ブルー、レッド、ホワイト |
型式名 | VSC1 |
製造年 | 1964-68年 |
総生産台数 | 3万5,699台 |
型フレーム形式 | VSC1 |
全長全幅全高 | 1,770mm670mm1,045mm |
軸距 | 1,230mm |
最低地上高 | 220mm |
製造年 | 1964-68年 |
車両重量 | 116kg(乾燥) |
燃料タンク容量 | 9.0L |
燃料消費率 | 40km/L |
最小回転半径 | 1,400mm |
最高速度 | 105km/h |
エンジン型式・種類 | 空冷2ストローク単気筒 |
総排気量 | 181.2cm3(cc) |
内径行程 | 62.0mm60.0mm |
圧縮比 | 7.7:1 |
最高出力 | 7.4kW[10.06PS]/ーーーrpm |
燃料供給装置形式 | Dell'Orto・SI 27/23(キャブレター) |
始動方式 | キック |
点火装置形式 | ポイント式 |
バッテリー | 6V |
2stオイル混合比 | 5% |
変速機形式 | 常時噛合4速ハンドチェンジ式 |
ギヤレシオ | 1速14.47:1/2速10.09:1/3速7.48:1/4速5.71:1 |
ファイナルドライブ | ダイレクトドライブ式 |
タイヤサイズ(F/R) | 3.5010"/3.5010" |
ブレーキ形式(F/R) | φ125mmドラム/φ127mmドラム |
懸架方式(F) | ダンパースプリング一体型シングルユニット |
懸架方式(R) | コイルスプリング付属ダンパーユニット |
レアアイテム4
当時のイギリスの「SCOOTER WORLD」にインプレやカスタム紹介、モッズ仕様・EDDY GRIMSTEADの広告などが掲載され、ほかにもさまざまなショップ広告にSSが多用されていました。
【ディテール】
今回はこれで終了です
さて「ヒストリックモデル#01」はいかがでしたか?
こちらは条件がそろわないとお届けできないため、第2回の予告ができません。
それにオーナーさんのご好意に頼らざるを得ないため、必ずインプレッションまで実現できるという約束もできませんが、それでも魅力あるヒストリックモデルの取材を計画していますので、次回もぜひぜひお楽しみに!
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