BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
隅本辰哉
-
- バイク
Vespa
レストアにチャレンジし始めたみなさんの手元には、そろそろ探しだしたパーツが届いていたりしますか?
「旧車レストア」コーナーでも、まだまだながらちょっとだけ集まり始めたパーツがあるので、今回はその辺りのパーツ紹介&フィッティングなどをご覧いれることにしましょう。それと第3話でもご登場いただいたBENEの安川さんに今回もお話をうかがうことができたので、ちょっぴりマニアックなお話も飛び出しちゃいそうですよ〜
それでは「旧車レストア編」の第5話、スタートです!
ぼちぼち収穫の時期ですね〜
今回はまずですね、現状で集まっているものについての紹介から始めてみようと思いますよ〜! みなさんのお手元にはなにか届いていますかね? ネット注文だったり、海外オークションにチャレンジしたなんて方の場合、注文や入札時の苦労&到着までのドキドキ感まで含めて良い経験になったのではないでしょうか?
じっさいにお店で見て選んで買ったという方だって、そこでのおしゃべりから有意義な情報をGETできたなんて方も多くいらっしゃるでしょう。ネットであれ、直接店員さんと話すのであれ、やっぱりコミュニケーションから得るものは大きいハズなので、今後も積極性を持って挑んでくださいね。結果的にそのままでは使えない(装着不可など)パーツを手にしてしまうことだってあるかもしれませんが、そこはコミュニケーション能力を高めつつ克服していってください。
もちろん現状ではまだこの連載を見ているだけなんて方も多いと思いますけど、そういう方でもいざ始めるいつかのために知識は増やしておいて損はないですから!
さて本題です。現状で手元にそろっているのはスペアタイヤホルダー(写真A1)とタイヤ×3本(写真A2)だったりします。スペアタイヤホルダーのほうはVNBに使える純正アイテムで、大阪のBENEさんにストックパーツがあったためにそれを購入。
タイヤのほうは複数の知人(ボクじゃないです。ムゼオ担当さんの知人のみなさんです)から譲ってもらったもので、こういうところでネットワークが活かされる場合もあるという良い見本でしょう。狙いとして、「当時の雰囲気で再現するために、程度が良く使える中古タイヤ」を探していたので、当時のタイヤ......それも合計で3本もGETできたのは収穫です。前後装着用とスペア用とで、タイヤに関してはカンペキです!
Voice of the pro shop◎パーツ探しの醍醐味
「VNA〜VNBのシリーズって、メーターなしのハンドル上カバーっていうのがあったんよ。......て言うか、メーターがオプション扱いだったから、そういうことを知らないとどっちが正しいかわからんくなるよね。いや、どっちも正解なんですけどね」とは、第3話でもご登場いただいた大阪のベスパ専門店BENEの安川さん。
この話、要は当時の時代背景的なものもあったと思われるんですけど、法的にメーターはなくても良かったのでオプションだったということのようです。なのでメーターを選択すると装着できるように、メーター形状に合わせた取り付け穴の空いたハンドル上カバーも必要になったワケですね。
そして購入時の出費を抑えるためにメーターを不選択とすれば、ハンドル上カバーも穴の空いていないタイプが使われてワケです。
こういった購入時のオプションだったものにスペアタイヤホルダーもあります。スペアタイヤホルダーを不選択にすればタイヤ&ホイールも1本分減らせるので、当時は価格優先で不選択としたオーナーさんもそれなりにいたんだと思われます。なのでスペアタイヤホルダーがない=すぐさま欠品というのは正しい判断ではないということになるようです。
そんなところを雑談を交えながら教えてくださった安川さんですが、取材のついでに興味深いパーツもいくつかお見せいただきましたので紹介しておきましょう。ただし通常の製品紹介はあえてやめにして、安川さん流マニアック解説でいきますよ〜
新旧ハンドチェンジ車が中心。最近ではLML(インド製のレトロスタイルスクーター製造メーカー)に力を入れているが、古いベスパ&ランブレッタまで頼れる数少ないショップのひとつ
【店舗情報】
住所◎大阪市城東区中央1-4-22
TEL◎06-6930-8739
営業◎11:00~19:00
定休◎水曜日
web◎http://www.bene-jp.com/
後部スペアタイヤホルダー
あんまり有名品じゃないんだけれど、社外品のスペアタイヤホルダーってなんかいいじゃないですか。当時のモデルごとのカラーに塗られていたので、VNAだったりVNB2だったりに合わせてチョイスする。そういうところもいい。当時なら欲しいものを選べたワケですけども、現行品ではないから見つけ出したものがたまたま狙っているモデル用でなかったりすると、カラーが違っていてどうしようとかなるやないですか。そういった目利きの醍醐味が求められるところも楽しめる要素かなと。
そしてアクセサリーなんかでも他人とは違うものを選ぶ人にどうですか? って言えますよね。純正オプションのようにレッグシールド内側に装着するタイプとは違う付け方をしているところもおもしろい。ただ穴位置が違うなんてのはザラで、日本的感覚なら「なんで?」とか怒ったりするんちゃいますか。でもそんなところにベスパらしさを感じて安心する。性格的なもんやろうけどね。カチっと出来ていて完成度が高いと、なんかバイク屋はもう必要ないって言われているような気になるじゃないですか。
テールランプ
これは申し訳ないんやけどVNB2用でなく、VNA用のもの。でもストップライトが点くいうところが一番萌える要素ですよね。色もすでに塗ってある。イタリアではブレーキランプがなくても良かった時代でも、輸出仕様となれば仕向地に合わせる必要があったいうことです。言ってみればGショックの輸出仕様といっしょってことなんで、それはそれでマニアがぎょーさんおりますやん。イタリア以外で、その国仕様のベスパの部品を見たときに萌える一品......そんな感覚わかってもらえます? 「アメリカの法律だとブレーキライトいるよね」とか。
そしておもろいのが、バルブソケットの形状違いがあったりするところね。やっぱり仕向地別にバルブの種類も変わるんでしょう。役には立たないウンチクってヤツやね。これは30年も前にアメリカのショップで見つけたんですけど、マジマジ見るとアメリカだからストップライト用のバルブがあるとか、そういった仕様をほんまかいなって見てたんですよね。だけど裏付けでSIEMのカタログ見てみたら、「おー、あるある」ってなる。そういうのがいいですやん。現地仕様っていうのは、その国の法律とかバックボーンとかっていうのを垣間見れるときがあって楽しいかなって感覚やね。しかもそんな興味深いパーツが新品で袋に入ったままなのがいいですやん。確実に当時のパーツだっていうことの証明ですからね。
ヘッドライト
当時もののヘッドライトいうのはライトケース裏側のクリップがバキッと壊れやすい。それとバルブホルダーの端子がカシメてあってもつながらない場合が多いんよね。なのでレンズだけでもいいんですけど、こだわるんなら裏側までちゃんと見ようよいうとこです。それと当時の箱のデザインがまた良い。中もちゃんとしていてていねいですやん。間にもうひとつ異なるデザインがあったかもしれんけど、こっちのはラリー(排気量違いも含めて1968年から70年代後半まで生産された当時のベスパのハイエンドモデル)のころだったと思うんよ。こういった箱のデザインの移り変わりいうのもおもろいし、ライトリムにある「SIEM」の刻印も種類があるので年代違いがわかっておもしろい。
それとヘッドライトにも諸外国仕様があって、だいたいソケットに違いがあるもんなんです。国ごとにバルブのサイズや接点の形状などが異なるので、それに合わせてるんじゃないですかね。そんなバルブソケットにまた萌えるね。要はねじ込み式ですやん。それが金具の部分に変化が見られ、その移り変わりがいい。レンズカットに萌えはる人がおんねんけど、金具のほうはまず見ない。
だいたい接触部が甘くなってくるんやけど、それをもっぺんカシメるとかハンダ付けするとかしてやるんですよ。それでも「こんなに手が込んでんのに、いつの間にかプラスチックになっちゃった」とか、「プラスチックになっても金具のカシメが甘いからやっぱり潰れるよ」とか、そんな風に萌える要素が盛りだくさんなところも良いんじゃないでしょうか。
レンズカットのウンチクより、バルブソケットやね。材質が違うとかさ、プラスチックにも色が茶色と黒があるとかさ、その辺が楽しいですやん。それで茶色のほうがよく割れるとかね。だから黒にしようってなるんやけど、当時は茶色だったなって思いだして頭抱えるとか。
スペアタイヤホルダー
今のはみんなプレスで作っちゃうんで、こういう造形美のがやっぱりいい。レストアしようと思うと意外にないんですよ。するとないからどうしても欲しくなる。だけどリプロでは腹が立つから嫌なんで、やっぱりあって良かったなと。
ものにもよりますけど、リプロってやっつけ感を感じるんですよ。プレスで作ってあるからそこそこの出来栄えだし。どうしても自分としてはそう感じてしまういうこと。だけどこの純正オリジナルはシャキッとしてますやん。角もビシッとしてるし、表面もキメ細やかって印象やね。リプロだとエッジが立ってないというか。
ただオリジナル論者ではないので良いか悪いかの議論は別にして、昔の人に教えてもらったのは「オリジナルに勝るものはなし」ってこと。付け具合も強度も、一番ノーマルが良いですから。これに関してもツマミをひねっての収まり具合が良いとか、角度もよく考えているなとかって部分が非常に萌えるんですよ。
スピードメーター
VNの系統だけメーターが小さかったように記憶してますね。それでこのタイプはなかなか出なかった。なので確保するのがめちゃめちゃ大変なんじゃないかと思いますよね。 裏にスピードメーターバルブもなにもなく、専用品。リプロもいろいろあるけど、付き具合とかはやっぱりオリジナルが完璧やしね。昔......出始めのころのリプロは収まりが悪いとか、角度が違うとか、なんかいろいろあったなぁ。
この小ぶりな四角いメーターはVNA、VNB1、VNB2だけ。それ以後は大きくなってしまう。たしか125cc用が100km/hまでのスケールで、150cc(VNBシリーズなどと同じルックスで150ccエンジンを搭載するモデル)が110km/hまでやね。
あとこのメーターには穴空きのハンドル上カバーも必要。オプションだったせいで、なかなかパーツとして探し難い。だから昔はよく探したものの1つ。
フィッティングとこだわりと
どうでしたか、安川さんのマニアック解説は? 当初から言ってますけど、レストアってある意味で"長期間モチベーションを維持し続けないとやり遂げることがむずかしい修行のようなバイク趣味"だったりするワケです。だからこそ部品を探し当てる背景だったり、仕様違いの部分を掘り下げてみるというところから"より強い興味をおぼえる"とか、楽しい要素を見出していくゲーム感覚も必要なんでしょうね。
それでは、いよいよ最初に紹介したスペアタイヤホルダーのフィッティングと、タイヤに関するこだわりについてです。
まずはスペアタイヤホルダーのフィッティングから。メインフレーム・センターに取り付け用の穴位置があるので、そこへ装着します。装着位置を決め、穴位置に合わせたら固定のためにボルトを入れます。今回は仮止めなので適当な合うボルトで固定です。
本来ボディーとブラケットの間にはガスケットが入るようです。そして装着し終えたスペアタイヤホルダーに、仮に用意した8インチホイールを合わせてみたところです。そしてホルダーにスペアタイヤをセットするところです。最終的にセットしたスペアタイヤを固定しているところになります。
続いてタイヤなんですけど、ちょっとしたこだわりを持って探していたんですよ。そのことは冒頭でも触れていますが、もう1度おさらいしておきましょう。こだわりとは「当時の雰囲気の再現」だったりします。そのために探したのが当時のタイヤなんです。今どきのタイヤでは最新のパターンが雰囲気を壊してしまいますので、やっぱりどうにかしないとって考えていたワケですね。
当時、じっさいにVNB2が履いていたタイヤの1つがこのCEATです。現在はインドに拠点を置くタイヤメーカーですが、当時はメイドインイタリーをうたっていました。そして見えにくい部分なので「そこまで!?」って思われそうですが、チューブのエア注入バルブの角度が違っているところ、そしてそのチューブがタイヤメーカーと同じCEAT製だというところろもこだわりポイントです。タイヤとチューブが同一メーカーというのは今でもある話なんですが、当時のバルブってあまり角度がついていないものだったんです。
ご覧のように浅めの角度で、今ではよく目にするような90度くらい曲げられたものと明らかに違うタイプが使われていたんです。現在のCEATがこのようなバルブ角の浅いチューブを用意しているか未確認ながら、もしも同様にこだわってみたいという場合にはバルブ部分の角度にも注目です。
なおCEATの製品では未確認ですが、コンチネンタル製のチューブには50年代の頃にあったバルブがロングタイプですがバルブ角の浅いタイプも存在するようです。この場合、完全一致とは言えませんけど雰囲気重視というレベルなら選択肢に入れることができるかもしれないですね。 ちなみにスペアタイヤホルダーに装着しているスペアタイヤは仮に用意したもので、CEATの当時のパターンとは違うものですし、ホイールもVNB2用として用意したものとは異なります。 また、今回のレストアはあくまで展示目的であり、資料価値的なことを重視したために古いタイヤを使っています。実用で乗ることが前提の人は、必ず現行のタイヤをチョイスしてください。
レストアに取り組む特権
こうやって1つ1つ届いたパーツをフィッティングして、徐々に完成していくようすを楽しむ。これは自らレストアに取り組んでいる人だけが楽しめる、ある種の特権みたいなものだと言えるかもしれませんね。やはりカタチになっていくのは楽しいものです。
ただし付けてみて悦に入るだけではなく、取り付けてみたところで問題があるようなら、そのことに対処していく必要もあるワケです。今回のスペアタイヤホルダーに関しては純正オプションということで問題なく取り付けが可能でしたが、リプロ品や社外品などではたまに加工しないといけないものもありますので、そのことを頭に入れておいてください。
最終的に車両をキレイに仕上げる段階で、このスペアタイヤホルダーも塗装するなどして仕上げることになるでしょう。 そんなところで第5話は終了ですが、第6話ではじっさいの作業とは別に塗装のための準備やセンタースタンドの加工修正プランなどに触れつつ、さらなる到着パーツの紹介&フィッティングといった展開になる予定です!
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