BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2015.10.01 / Vol.16

    スモールで遊ぶ #04

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

前回は「ヒストリックモデル編」を挟みましたが、今回はまたまた 「スモールで遊ぶ編」をお届けしちゃいます。気になる内容ですが、いよいよオフロードレーサーへと踏み込みますよ〜!
まずはオフロードレーサーがどんなものなのか、そこから見ていくことにしましょう。それでは「スモールで遊ぶ編・第4話」、はじまりまーす!!

Vespa50 ブロックパターンタイヤ

ベスパ乗りのみならず、スクータリストにとってある意味で未知の世界と言えるのがオフロードでしょう。だけどそのオフロードをスクーターで遊んじゃおうというムーブメントが注目を集め始めているんです。
ただし遊ぶとなるとより楽しめるマシンが欲しくなる......というワケで、参加者それぞれが試行錯誤しながら楽しめるマシン作りに励んでいる状況です。だって始まったばかりのムーブメントだから"これでキマリ"なんて定番的なものはありませんからね。
それでも真っ先に思いつくのは、ブロックパターンタイヤとストロークを稼いだサスペンションでしょう。そこをなんとかするだけで、イッパシのオフロードレーサーに見えちゃったりしませんか?

おもしろそうだからやってみるというのはどうですか?

さて冒頭で未知の世界と表現したオフロードですけど、本来なら舗装された一般公道を走るためのスクーターなので、悪路を走るなんて事態は想定されているワケがありませんよね。ましてやオフロードコースなどで積極的にダートランを楽しむなんてあり得ないでしょう。でも「やってみたら楽しいんじゃない?」って始めてしまった人たちがいて、どうやらそれが注目されているようなんです。 ここまでのスモール遊びではロードレーサーを取り上げてきましたが、ここからは遊び方のカテゴリーの一つとしてオフロードレーサーのほうもチェックしていきたいと思います。やはり流行りは無視したりするんじゃなく、やるやらないは二の次にしてどんなものかを知っておかないとダメでしょう。本当におもしろかったら乗り遅れて損しちゃいますからね。

ブロックパターンタイヤ
やはり冒頭で触れていることですが、ゴツゴツのブロックパターンタイヤを履かせたことでワイルド感が相当増してグンとカッコ良く見えますね。チャンバーとの組み合わせでリヤ回りの迫力も格段に倍増してますよね!
PKというモデルのフロントフォーク
PKというモデルのフロントフォークに変更&サスペンションも交換済みのため、ロードレーサー(写真左)と比較してオフロードレーサー(写真右)は車高がずいぶんと変わっているのがわかるんじゃないかと思います。
Vespaリア比較
ノーマル(写真中))に対してサスペンション取付箇所にシム数枚を挟み込んだロードレーサー(写真左)はわずかに車高が上がっています。前後バランスを考えて長ナットを入れたオフロードレーサー(写真右)はさらに車高UPしてます。

◎スモールのバリエーション3◎

べスパカラーバリエーション

第2話から間が空いてしまいましたけど、「スモールのバリエーション3」では125ccモデルについて見ていきましょう。スモールボディにはスタンダードで125ccユニットを搭載するモデルもあって、パワーを必要とするオフロード走行にもしかしたら向いているかもしれません。そんなところも含めてどんなモデルなのか、遊びのベースとしてどうなのかといったところを掘り下げてみましょう。

125プリマベラ

遊びのベースとして50Sが選択されることが多いのは、タマが多いことも理由になっています。だけどもしも所有しているというなら125プリマベラもありでしょう。125モデルのほうにも選択できるだけのパーツは用意されていますから、チューニングやカスタムのベースマシンとして無理なことはありません。むしろ125ccベースだから、キャパシティの大きさが有利な面もありそうです。
ただし古い時代の125版スモールということでレアですから入手は難しいと思ったほうがいいでしょう。あくまで所有していて、そのまま放置しておくのもどうかというところで遊びに転用という感じではないでしょうか。
外観的に他のスモールと見分けるのは難しく、ビギナーにとってはリヤエンブレム(Photo a)を確認するのが近道かも。それと左サイドパネルにボックスを標準装備(Photo b)していて、これはこれで便利なんですが、ボックスがあることでマフラーの取りまわしに制約がでてしまいます。結果的に専用マフラーなら問題ないんですけど、一から作るとなるとマイナス部分となってしまいそうですね。まあ遊び方はレース以外にもあるので、どう使うか次第と言えそうですね!

125プリマベラのリア
125プリマベラのサイド
ET3

ET3というモデルは、簡単に言ってしまうと125プリマベラの進化版です。電装系がポイント式からCDI式へと変更され、エンジンも2ポートから3ポートになってエンジンユニット自体が強化されました。クラッチスプリングもシングルからダブルに変更されるなど、けっこう各所に手が入れられています。
ベースとしてどうかは125プリマベラといっしょです。ボディ構造は同じですから、遊びやすいけれど加工の手間がかかるところもあり、わざわざこれをベースにしなくてもいいのではというところではないでしょうか。仮に所有していて使いみちがなく、単に放置されている状態だったりするなら思い切って遊びのベースにしてしまうのもありだと思います。
ただし125プリマベラ同様、普段使いで便利なボックスがマフラーの自由度をスポイルしてしまいます。逆にメインキー(Photo c)を装備するので、キルスイッチだけのモデル(他のスモールは大半がそう)がエンジン停止までボタンを押し続けるのに対して、キーオフで手を離せるところと盗難抑止に効果的なところがメリットでしょう。 ちなみにリヤエンブレムのET3(Photo d)とは、3ポートになっていることとエレクトリック化を表現しているんです!

ET3のライト付近
ET3のリア

ムゼオ製作のオフロードレーサー

50S オフロードベースマシンフロント
オフロードベースマシンリア

ここからはいつも当連載に協力くださるムゼオ(Museo Vespa Giappone)が製作したオフロードレーサーを例にして、スクーターでオフロードを走るイベントであるスクータークロス参加マシンのポイントを見ていくことにしましょう。
まずオフロードレーサー製作の経緯についてたずねてみました。するとロードレーサーのほうには国内外のチューニングパーツやチューニングメニューが豊富にあって、でもオフロードレーサーとなると国内での情報はほぼゼロからのスタートなので手探り状態というおもしろさがあるんだそうです。それでいざ製作するにあたって、ロードレーサーのセカンドカーにするために用意しておいたベースマシンを使うことにしたそうです。理由として元々ロードレーサーとして走っていた車両ということで手に入れたベースマシンなので、時間的な制約も考慮すると一から作り上げるよりもオフロードレーサーへ転用するほうが手がたいという判断をしたのでしょう。
それでも手探りでの製作なうえ、とりあえずオフロードを走るためにいろいろ考えながら第一段階として製作してみた程度ということです。どうやら、これとこれを組めばいいといった定番的な手法があるワケではないところもおもしろいんだそうですよ。
ムゼオとしても「いきなりお金をかけるのではなく、あるものを使って少しずつ仕上げていく方向で考えています」と、手元の使っていない、あまっているようなパーツでカタチにしてみたということのようです。あとは「走らせることで見える問題点に対処しながら完成に近づけていきたいですね」とのことなので、しだいに完成度が高まっていくのを期待しちゃいましょう。

アクセルまわり
アクセルまわり
ダート走行のスタンディング時に手首の動きを少なくできるメリットからスペシャルパーツ武川製ハイスロを採用。手近にあったパワーレバーも装着し、ちょっぴりレーシーな雰囲気に仕上げています
左レバーまわり
左レバーまわり
クラッチレバーはあえてスタンダードを使用。パワーレバーだと握り込むので、操作する幅が狭くなってスタンディング時に扱い難いと想定。セッティングもちょっと握ればクラッチが切れるようしています
フロントの足回り
フロントの足回り
フロントフォークをPK(PKとは50Sの後継モデルで、ハンドチェンジスモールとしての最終型です)のものに変更。足回りを移植した理由はサスが長くて動きも良いことと、さらにブレーキ制動力も向上するからです
補強パイプ
補強パイプ
ジャンプの着地の衝撃を考慮してネック部分が内側に入らないようにする支え棒として補強パイプを溶接固定。前ヒンジによるシート開閉を可能とするため、シート下の溶接位置は下側にズラしています
シート
シート
ノンスリップ的な表皮のツートーンシートに交換。シートが羽っぽく見えるので、オシリに黒のラインを入れてハチっぽくデザインしたいそうです。ベスパってハチ(厳密にはスズメバチ)の意味ですからね
リヤサスのかさ上げ
リヤサスのかさ上げ
リヤサス取付部に長ナットを使って2.5cmほどかさ上げしているのは、フロント側との車高バランスが目的。同時に高い着座位置でダート走行も意識。今後マウント変更でセッティング予定とのことです

◎スクータークロスhttps://www.facebook.com/ScooterCrossJapan

スクータークロス
みなさんバーベキュー

現状でスモールベスパが遊べるのはスクータークロスというオフロードイベントになります。関東でも関西でも開催されていますが、まだレースというよりオフロードコース走行会的な状態で模擬レース(Photo e)が行われている程度だったりします。
「レースというより泥んこ遊びだと思ってください。みなさんバーベキュー(Photo f)を楽しみに集まってくれているというほうがぴったりかもしれません」と主催者が言うように、レース色はあまりなくてみんなで遊んでいる雰囲気を強く感じました。そしてスモール以外のベスパも含めてスクーター全般が参加できるので、和気あいあいとした雰囲気を楽しみにバーベキューだけでも参加してみることをお勧めします。

エンジン回りもチェックしておきましょう

当然のことですが、車体回りのほかエンジン回りにも手が入っています。オフロードレーサーの心臓部についても見ていくことにしましょう。
エンジンとは言っても中身は開けないと見ることができません。なので仕様についてうかがってみたところ、ベース車として手に入れたときからマロッシ112ccキットを組込済みということです。この仕様はムゼオの考えるオフロードレーサーとして狙い通りということのようですよ。最高速よりも中低速側の加速面で効果を期待したセッティングだということですからね。
具体的には高回転で回すエンジンではなく、低回転域からモリモリのパワーを獲得したいということです。
それからキャブ回りにも手が入れられています。ムゼオがこのベース車を手に入れたときの状態は、キャブレターが外出しだったということです。しかもファンネルタイプだったので、砂対策のためフレーム内に移設しています。さらにジェットセッティングなどをしやすくする目的で、ガソリンタンク脱着作業をラクにするためガソリンコックレ バーをショートタイプに加工してあります。

エンジン回りのサイド
スモールの50Sは本来ショートストロークで回るタイプのエンジンですが、低回転域のパワー重視として、あらかじめ組まれていた112ccキットのままでセッティングを煮詰めていくんだそうです
カウル内部
ジェットセッティングなどでガソリンタンクを外すのに、長いままのコックレバーではメインフレームの穴を通すので素早い脱着が難しい。だから短くすればフレーム穴を通さずに済み、脱着が素早く行えるんです

今回はここまで!

「スモールで遊ぶ編・第4話」は、ついにオフロードレーサーに踏み込んでみました。いかがでしたか? やはり見た目的にはもちろんですが、ロードレーサーとはずいぶんと違うんだなって感じてもらえたんじゃないでしょうか。
それにスクータークロスというイベント自体もなかなか楽しそうな雰囲気ですよね。興味を持たれた方は、ぜひ足を運んでみてくださいね!

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