BBB MAGAZINE
CREDIT
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- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
隅本辰哉
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- バイク
Vespa
ここまでの「スモールで遊ぶ編」でロードレーサーとオフロードレーサーがどんなものなのかを紹介し、実際のマシン製作ノウハウなどにも触れてきました。そこで今回から、参加ライダーたちの生の声を聞いてみうようと思います。 まずはマイマシンを手に入れ、VespaGPを目一杯楽しんでいる藤井さん。でも初めてレースに出た後「二度目はないな」と思ったそうです。その理由とは!?
マシンを作る喜びがあり、コースだからこそ攻めた走りを楽しめ、試行錯誤を繰り返して自らのスキルを高めることができる。そんなロードレースを大好きなベスパで思う存分楽しんでいるのがこちらの面々。 そんなメンツから今回はゼッケン1を付ける藤井さんにお話をうかがってみた!......ところが集合写真を撮り終えた後に気づいたんですが、なんと藤井さんが写っていないという(苦笑)
VespaGP参戦のキッカケとは?
藤井さんにとって、初めてベスパを体験したのが日光サーキットだったのだとか。なんでも「まったく興味はなかった」のに、なぜかレースに出ることになってしまったそうです。その日の藤井さんはジレラ・ランナーでレースに出場していて、「レンタルマシンが空いているからベスパでもレースにでてみない?」と誘われたのがキッカケ。ただし乗ってみた印象は「二度目はないな」と思ったんだとか。
理由をたずねると「レースが始まってから終わるまで、自分が何速で走ってるのかもわからないような状態でした。それに立ち上がりでアクセル開けたらボーって、これギアが1速高いじゃん」......そんな感じで、なにがなんだかわからないまま終わってしまったそうなんです。 とくに"フロントの接地感のなさ"はどうにもなじめず、「どう曲がっていいかわからなかったし、上手く乗りこなせないまま。なので絶対つぎはないと思いましたね」というのが正直な感想だったと。それで「ボクには難しすぎる、ありがとうございました」とレンタルマシンを返却したところ、これでもかというほどダメだしの集中砲火を浴びて「あ、じゃあそこ直してもう一回乗ってみるか」という気分になっちゃったんだそうです。 そしてレースに出ていた友だちが大阪へ引っ越すことになり、「持っていけないからもらってくれないか?」ということでレース用のスモールベスパを運良く譲り受けることになりました。それを自分好みに仕上げ、かれこれ3シーズンくらいレース活動を続けているのだそうです。
◎VespaGP/2015シーズン第4戦
藤井さんがVespaGPにデビューしたのが日光サーキット(http://www.nikko-circuit.jp/)ということですけど、たまたま撮影におじゃましたのが奇遇にも日光サーキットでした。そもそもVespaGPはシーズン中の開催回数から判断するとホームコースをサーキット秋ヶ瀬(http://www.vespagp.com/)としているようですが、WGPのように関東近県のサーキットを転戦するスタイルで行われています。ルールや開催スケジュールなど、参戦を考えるなら必要になる情報はVespaGPのオフィシャルホームページ(http://www.vespagp.com/)で確認できますので、ぜひそちらをご覧ください。
ここではVespaGPならではの、もっとも大きな特徴を押さえておきましょう。それは参加者も観戦者も楽しめるようにハンデ戦としていることです。参加者にとって「遅いからつまらない」とはならず、頑張ればつねに表彰台を狙えるワクワク感があります。速いライダーにはハンデを物ともせずに勝つという、ある意味で"真の強者"になるという栄誉が待っています。観戦者にとってもひんぱんにサイドバイサイドの熾烈なバトルを目撃できるので、意外にもハンデ戦というスタイルによって関わる人たちをみんな楽しませてくれているようです。
本格参戦して感じたおもしろさとは?
◎さて"嵐のようなダメだし"に奮起させられてしまったのか、それがキッカケとなってスモールベスパのレースであるVespaGPにのめり込むようになった藤井さん。そもそも指摘されたというダメだし項目は改善されたのでしょうか?
「藤井さん(以下、藤)」:改善されたと思ってます。 フロントの接地感がなかったのもすぐにわかるようになったし、それがタイムにも現れるようになっていきました。最初はまったくわからなかった"何速で走ってるか"もわかるようになりましたし、乗っていて怖いと思うことがなくなっていったんですよね。極端なウェットコンディションなんかは別ですけど、怖さもなくなって走れるようになったことでますます楽しくなってきてます。
◎どうやらできなかったこと、わからなかったところなどが改善され、同時に乗れるようにもなってきたところで今は楽しい時期となっているようですね。だけど乗れるようになったからこそ感じる大変さや苦労というのがあるのでしょうか?
「藤」:大変だらけなんですよ!まず教えてもらったことをそのようにやってみると改善はするんですけど、でもやっぱりジレラ・ランナーのようにはいかなかったり、国産モデルのようにはいかないところがいっぱいあったりします。そういう意味で独特な乗りものだと感じてます。だけどベスパを乗りこなすにはギアチェンジが欠かせません。ギアがあるからこそおもしろいとも感じています。 たとえば最終コーナーを立ち上がるときにアクセルを開けるのがちょっとでも遅かったりすると、ギアを上げたときに加速していかないんですよ。そこがやっぱりギア付きスクーターのおもしろさですよね。シフトタイミングとアクセルの開け方、コントロールすることのおもしろさや達成感......単なるスクーターとは大きく違うところですし、それこそがおもしろさの極みなんだと感じてます。
◎スペシャルハンデを背負うガッツあるランカーたち
VespaGPが走るのも観るのも"より楽しめる"ようにという理由でハンデ戦となっていることはすでに触れていますが、中でもいっそうヘビーなハンデを背負うのが前年度シリーズランキングの上位ランカーたちです。彼らは敢えて遅れたスタートを切る遅延スタート組として、グリッドも最後尾に位置しています。具体的に何秒遅れてスタートするのかはコースによって変更(ゴールする頃合いで首位争いに追いつくかどうかという、VespaGP事務局による絶妙な遅延タイムが設定)されますが、首位争いに間に合うよう怒涛の猛チャージで魅せてくれるので、彼らの走りもVespaGP観戦の楽しみになっていると言えます。
求めるイメージ通りのマシンを作る
◎ダメ出しへの発奮という流れもあって、VespaGPにどっぷりとハマってしまった感じのする藤井さん。その後は自分専用のロードレーサーを手に入れたそうですが、その辺りのことも聞いてみることにしましょう。友人からゆずってもらったというレース用車両は、レーサーとしてある程度できあがっていたものだったのですか?
藤」:ゆずってもらったときはシリンダーとチャンバーだけ入っているような状態でした。仕様としても街中を走れるレベルだったので、登録もして街乗りにも対応できるようにしてあったんです。ベスパはこのレーサーが1台だけだったから、レースではナンバープレートを外して走るという状況でした。それで普段使いもできるようにしてあったワケですが、最近ではほとんど街中を走ることはありませんね。
◎では、手に入れてから具体的に手を入れたところはどんなところなんでしょう?
「藤」:まずフロントブレーキを強化してもらってます。それから102ccにボアアップ済みだったものを、112ccキットに組み直しています。同時に本来6Vの電装を12Vに強化してあり、ワイヤーをすべて国産のものに変えてもらってあります。このワイヤー類って中がテフロン加工になっているから滑りがよく、アウターもソフトで握りが柔らかくなるので気に入ってます。あとクラッチも変えてもらいましたね。
◎マシン作りの方向性みたいなところもお聞きしてみたいです。なにか具体的にこうしたいとか、こう走りたいというビジョンはおありだったのですか?
「藤」:乗ってみて、自分なりにベスパがわかってきたところで「あまり高回転で上が回るエンジンに仕立てたとしても扱えないぞ」と思ったんです。それで自分は下振りのほうが特性的に好きなんだなと思い、トルク強化を意識して排気量を上げました。ギアもローギアに仕様変更しています。ところが昨シーズンは小さなコースが多かったのでセッティングの方向もマッチしていたように思うんですけど、今シーズンは大きなコースばかりでちょっとキビシイなと感じるシーンが増えていたりします。 そうしたら菊地さん(過去にご紹介していますが、菊地さんとはVespaGPのライダー兼ご意見番的な立ち位置の方です)からフライホイールを試してみてはどうかと言われ、重いタイプのフライホイールへの変更を検討中です。そういうのをいろいろ教えてくれるのでマシンも自分もレベルアップしていけます。そこがまたおもしろいと感じるところなんでしょうね。仲間からのアドバイスが受けられ、それを試してみたらやってみたことの結果がわかる。「こんなハズじゃなかった」とか、「やった、バッチリ大成功!」とか。それでまた次を考えるんです。ときには求めていたところと違うイメージだったってこともあります。やってみたら部分的によかったんだけど下がなくなっていたとか。だからトータルで仕上げていくなんてまだまだですよ。でもそういうところも含めて楽しいしおもしろい。なので、もっともっと走りもマシンも上を目指していきたいです!
◎スモールのバリエーション4
久しぶりとなるスモールのバリエーションですが、モデルバリエーションの紹介としては今回が最終回となります。そこで一風変わったスペシャルモデルとして、50SSにスポットを当てることにします。
ベスパの製造メーカーであるピアッジオは、1946年のブランド始動当初からレースモデルへの取り組みも積極的でした。そうして60年代半ばになって、より手軽にレースを楽しめるようにとリリースされたのがスーパースプリントとネーミングされた90SS/50SSだったんです。 レースモデルというよりもレース用ベースモデルという位置づけだった90SS/50SSは、そのネーミングどおりベスパのスポーティな要素を強調した車両だったと言えます。そういった背景もあってファンも多いマニアックな車両の筆頭と言えるかもしれません。そして主にドイツで売られた輸出用モデルの50SSは、90SSよりもさらに希少なお宝モデルとなります。まあ、素性がレースベースモデルだけに遊びのベースとしてうってつけと言えなくもないですが、希少性が高く入手は難しい1台ですけどね。
今回はここまで!
いかがでしたか? 実際に参戦して楽しんでいる人の生の声だけに、興味があったり参加を考えている人の参考になったのではないでしょうか。最後の最後にベタですが藤井さんに「なにがおもしろくてレースやってますか?」という質問をぶつけてみました。
すると「言ってみれば自分にしかどうにもならない孤独なスポーツなんですよ。しかも扱うのが難しい車両。だから、そこを上手に乗りこなせるようになりたいという思いもあります。乗りこなせるようになればタイムも上がるワケですしね。そして仲間たちとの雰囲気が楽しくてずっと参加し続けているという部分も大きいです」とのことでした。
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