BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2016.03.31 / Vol.22

    ヒストリックモデル #06

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

さて第6回目となるヒストリックモデルですが、今回はベスパ生誕60週年を記念して登場した全世界999台限定というスペシャルなモデルを紹介します。 なんとラージ系人気モデルのGTSをベースに、往年の人気モデルである125......日本での通称フェンダーライトのテイストで仕立てられたドリームモデル。古くからのベスパファンのみならず、旧車にあこがれるユーザーまでをも惹きつけた魅力に迫っていくことにしましょう!

GT60登場の背景

台湾ベスパ
ローマの休日を彷彿!?
限定で復活を果たしたワールドプレミアモデル

ベスパ初の市販モデルは1946年に登場しているので、今年が70周年だったりします。そして今回のヒストリックモデルは今から10年前の2006年に登場したGT60というスペシャルなモデルです。なにがどうスペシャルなのかと言うと、60周年記念モデルであること、世界限定999台だけの生産であること、往年の名車であるフェンダーライトの現代的リメイクモデルであることといったところになります。とくにベスパの名を世界に知らしめた「ローマの休日」仕様とも言えそうなフェンダーライト(この呼び方は日本での通称であり、世界的には通用しません)のリメイク版であることは、まさにドリームモデルとして世界中が歓喜したものです。
そもそも90年代半ば以降のピアッジオ(ベスパの製造メーカー)はベスパのアイデンティティでもあるハンドチェンジスタイルに変え、オートマチックトランスミッションを採用する現代的モデルへの変更を推進していました。これは未来を見据えた戦略として技術とデザインの刷新による大きな変化が感じられた時期でもあり、1995年にデビューしたET4の流れを受ける流麗でモダンなシルエットが多用されていきました。しかしベスパの販売は低迷してしまい、ロベルト・コラニーノ会長はデザイン面からテコ入れする必要を感じたのでしょう。たとえば未来的すぎたET4シリーズをレトロ感のあるLXシリーズへとバトンタッチさせてみたり、上位クラスのGTをリファインしてGTSシリーズへと育て上げていきます。
こうした改革が功を奏するなか、ベスパの誕生から丸60周年という節目の記念モデルとしてGT60コンセプトが発表されました。なんと人気フラッグシップモデルへと成長したGTSにフェンダーライトイメージをかけあわせ、レトロ感と融合させてしまうという大胆な手法で誕生したドリームモデルだったんです。しかもこのコンセプトモデルは世界中の注目を集め、およそ1年ほどの短いスパンで市販化が決定します。それこそがGT60であり、全世界で999台だけという完全受注式数量限定モデルだったんです。もともと走りの質も製品としてのクオリティも高かったGTSがベースだったので、人々は普段使いに耐えられる現代版フェンダーライトとしてこのGT60を歓迎しました。

18/999

当時の輸入販売元だった成川商会では過去の取材に対し「2006年4月ごろにピアッジオからの正式なアナウンスがあって、11月ころの納車というスケジュールだった」と言っていて、当初の予定は日本側の希望台数が通らずにわずか10台のみの割当だったということです。そのため成川商会が手を回して、シンガポール向けの割当分から8台を手配。つまり全世界で999台が販売されたうち、18台だけが日本国内にデリバリーされたことになります。ちなみに車両の正式な広報画像が配られたのも2006年4月だったそうで、GT60の発売がいかに急展開で決まったものだったのかを伺い知れます。
またシリアルナンバー(製造番号)とオーナーの頭文字が刻印されるイニシャルプレートも付属するとアナウンスされましたが、これには各国のディストリビューターが対応。日本では成川商会が用意しています。プレートの詳細情報は6月になってから届いたそうで、成川商会ではその段階から指定通りに刻印できる業者を探し始めたそうです。

台湾ベスパ
台湾ベスパ

Vespa GT60●GT60発売案内と同時にピアッジオの配布した広報画像ですが、メーターバイザーを兼ねるフロントのミニスクリーンがスモーク仕様となっています。実車ではクリア仕様が装着されていました。もう一箇所、実車ではピリオンシート(後部座席)のサイドに「Vespa」という刺繍が入りますが、広報画像の段階では入っていませんでした

台湾ベスパ

イニシャルプレート仕様書●刻印のないブランクプレートが届き、予約が確定したオーナーの頭文字を指定書体で刻印するよう成川商会が手配しました

ベスパ史上初登場のワールドプレミアモデル

12VCDIに強化されている
単なる懐古主義的モデルに非ず
巧みな先進性との融合による名車復活

先にも触れていますが、GTSをベースとしてフェンダーライト独特のレトロ感をかけあわせたNewデザインを採用。過去のフェンダーライトにも相通ずるフェンダーライト、バーハンドル、セパレートタイプの本革製シートなどが雰囲気を盛り上げています。
またホイールなど、実に多くのコンポーネントをクローム処理している点も見逃せません。メッキ装飾による効果もあって、豪華な記念モデル(=ドリームモデル)という位置づけでした。
実際GT60への反響は凄まじいものがあったようで、999台という限定数を手に入れることが叶わなかったファンから殺到した問い合わせが多くあったのか、わずか1年足らずで普及版のGTVというモデルがリリースされていますからね。なお今回メインで紹介する車両が装着している大型スクリーン&トップケースは、当時オプション設定されていたものとなります。

【主要諸元】 Vespa GT60(2006モデル)/owner:Kenzou Hirai

フレーム形式 スチールモノコック
カラーコード グレー725
全長×全幅×全高 1,940mm×770mm×--mm
ホイールベース 1,395mm
シート高 790mm
車両重量 146kg(乾燥)
タンク容量 9.2L
タイヤサイズ(F/R) 120/70-12/130/70-12
ブレーキ形式(FR共) Φ220mmシングルディスク
懸架方式(F) シングルアーム×ツインチャンバーショック&コアキシャルスプリング
懸架方式(R) ヘリカルスプリング×プリロード4段調整&2デュアルエフェクトショック
エンジン型式・種類 水冷4ストローク4バルブOHC単気筒
総排気量 244cm3(cc)
内径×行程 72mm×60mm
最高出力 16.2kW[22.03PS]/8,250rpm
最大トルク 20.2N・m[2.06kgf・m]/6,500rpm
最高速 122km/h
燃料供給装置形式 電子制御インジェクション
始動方式 セルスタート式
点火装置形式 CDI
変速機形式 CVT
エミッション Euro3

※専用カタログからの抜粋

スピードメーター
スペアタイヤ
センターマット
スイッチまわり
バーハンドル化のためにベースのGTSとは異なるスイッチまわりとなっていて、上から順にハイ/ロー切替、ウインカースイッチ、ホーンボタンとなります
メーターまわり
メーターまわりもバーハンドル化の影響を受け、燃料計とインジケーターをビルトインした大型スピードメーターを採用。手前の液晶部は時計表示のみです
バーハンドル化でカバードされていない
バーハンドル化でカバードされていない点が大きな相違点。上側の赤ボタンがキルスイッチ、その下の黒スイッチがセルスタートボタンとなっています
専用イニシャルプレート
すべてのGT60で異なる専用イニシャルプレートをフロントボックス下部に装着。愛車が何番目に作られたのかがわかるというスペシャルな特典です
コンビニフック
フロントボックス上部に使える便利なコンビニフックを装備。その横のスイッチはシートオープンボタンで、いちいちキー操作がいらないので重宝します
フロントインナーパネル
フロントインナーパネルにトランクを装備。メインキーをプッシュしてオープンでき、ちょっとした収納スペースの他、中央上部右には工具も収納しています
フロントロングスクリーン
オーナーの好みで装着されたフロントロングスクリーンは、当時の専用オプションとして設定されていたアイテム。もちろん防風効果はバツグンです
フェンダーライト
なんと言ってもエクステリアのハイライトなのが、このフェンダーライト。マルチリフレクタータイプでレンズカットのないライトボディを採用しています
クロームメッキ化
ベースモデルであるGTSと共通デザインのホイールをクロームメッキ化して別次元の高級感を演出。前後タイヤもGTSと共通サイズとなっています
前後本革のソロシート
前後本革のソロシートはセパレート風ながら、ベース固定式なのでオープン時は一気に開きます。また経年で色あせてますが、本来は黒シートです
「Vespa」の刺繍が入るスペシャル仕様
ピリオンシートの右側面部に「Vespa」の刺繍が入るスペシャル仕様は、後にレギュラー化されたGTVに引き継がれます。ただしGT60が元祖です
リヤボックス
こちらもオーナーの好みで装着されたリヤボックスですが、やはり当時の専用オプション設定されていたものなのでボディカラーと同色仕立てです
バックレスト
カラーだけでなく、バックレストもシートに合わせた黒の本革製。ちなみにカラーコード「グレー725」は、最初のプロトタイプの類似色とのことです
右サイドパネル
右サイドパネルに車名エンブレム「GT60」を装着するのはGTSを踏襲。レギュラーモデルでは後端装着のエンブレムが前端装着な理由は不明です
左サイドパネル
左サイドパネルも「Vespa」のロゴエンブレムを前端装着しています。なお左側にロゴエンブレムを装着するのはGTSなどのレギュラーモデルと共通です

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