BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
隅本辰哉
-
- バイク
Vespa
オーナーズトーク
ここからはGT60紹介のためのスペシャルメニューとして、オーナーズトークを繰り広げていただきます。日本国内に正規デリバリーされた車両が全部で18台、そのうちの3台とそのオーナー3名にお集まりいただきました。これってなにげにスゴいことですよ! だって比率で言えば16.7%ですから、もしも1万台の車両だったら1,670台が集結したってことですからね。それではオーナーズトーク、スタートです!!
※このオーナーズトークは東京・杉並のコネクティングロッドのショールームをお借りして行われたものです。
―皆さん、こんにちは。まず皆さんがGT60のことを耳にした時の印象からお話ください。
辻さん(以下T)■最初はなんとも思わなかったんですけど、還暦祝いという流れで買おうと決めたら完売という話です。でもダメ元で聞いてもらうと追加オーダーの受付が始まるというじゃないですか。そこからですね。GT60を意識したのは。
平井さん(以下H)■僕の場合はなにしろ限定ものに弱いので、案内が届くと間髪入れずに申し込みました。
ムゼオ(以下M)■スクーター......しかも250なのにズバ抜けたプライス設定だったので、かなりの衝撃を受けましたね。
T■最初に気にしなかったというのは、高嶺の花というのもあったんですよ。
H■たしか95万円だったと思うんですけど、申し込んでから「お金どうしようかなぁ」という感じでした。
―なかなか思いきれる金額じゃないですよね。だけど、実際に買うまでの気持ちの高まりはどんな心境の変化があったんでしょう?
H■僕はもう「欲しくて欲しくて」という感じだったんで、ずっと気持ちは高まりつづけてましたね。
それで申し込んでから届くまでに数ヶ月あったんですよ。申し込みはたしか夏。一番最初のFAXが7月15日とか、それくらいでした。それで追加オーダーは9月くらい。そして実際に車両が来たのは11月とか12月でしたよね。
T■12月でしたね。その間は長かったですよ。
阿波踊りが8月で、その後にショップで購入相談をしましたから。「え、買うの?」と言われましたけど、すぐに電話してもらいました。
―実際にGT60が手元に来た時は感慨深いものがあったと思うんですけど、どんな印象だったんでしょう?
T■私はお店に届くという当日に都合をつけて見に行きました。
それで箱を開ける時に立ち会ったのを覚えています。でも、仕事ですぐに戻りましたけどね。気持ち的にはワクワク感いっぱい。スゴく待ちわびていたんですよ。今思うと箱は残しておくべきだったと思いますね。
H■関東には全部開梱してから届くんですよ。なので箱なしでした。
トラックに積まれて来た時は「おおー、来た来た来た!」って感じでしたね。初めて目にした時、革のシートの質感とかに感動しました。「おお、けっこうスゴいなぁ。フェンダーライトのオートマチックってカッコいい!」って。それでこの新しいカタチはもう出ないのかなって思いましたけど、すぐにGTVで発売になっちゃいましたね。1年にも満たなかったかもしれない。
T■私も早いなと思いました。正直「あれ? 約束がちがうやん」って思いましたよ。
H■でもホイールがメッキしてないとか、最初はどこが違うんだろうって見比べてしまいました。
M■自分の場合は前にオーナーさんがいたんで、乗って帰ってくるという話になったんです。だから電車で取りに行ったんですよ。
ヘルメットとバッテリー......バッテリーがないと言われたので、バッテリーも持って行ったんです。着くまでの間はいろいろと妄想じゃないですけど、まあ電車が長く感じました。それで駅まで迎えに来てもらって、置いてあるところまで連れて行ってもらったんです。そこでシャッターが開けられて中にあるのを見た時に「あ、これだ!」って、なんとも言えない色とメッキがキラキラしている感じに「これ、ちょっと乗って帰るの怖いな」と思いました。「道中になにかあったらどうしよう」と。
―GT60を目の前にされた時はいろいろ思うところがあったというお話ですけど、最初に見て感じた質感など、GT60に感じたことは?
T■先ほど革張りのシートが話題になってましたけど、触ってみてゴツゴツした感触だったのであんまりスゴいなとは思わんかったんですよ。
クルマのシートの革張りのほうがシットリしてたんで、そっちと比べたらちょっと首かしげた部分がありましたね。それと座り心地というか、ブレーキをかけるとお尻が前にズルっと。あれで疲れるんですよ。いきなり否定的なことを言ってしまいましたけど、オートマだから無茶苦茶ラクやなというのも思いました。
H■あとクロームメッキがよかったですね。
GTS250がベースになってるじゃないですか。それと見比べると質感はいいなと感じました。グリップが革でバーハンドル、それにホイールなどいろんなところがメッキですし。
―乗りものとしてはどう感じられましたか?
M■緊張というか、気になっちゃって......。
最初だけでなく、それ以降もです。けっきょくシートが革じゃないですか。あんまりお尻が擦れないようにしなきゃとか、雨が降ってきたらどうしようとか、そっちのほうが気になっちゃって。走り自体はGTSと遜色ないので不満もなにもないんですけど、スゴい気になって気疲れしちゃいます。その辺に置いておけないじゃないですか。だからオートマチックという気楽なカテゴリーなのに気軽じゃないっていう。だけどスゴい満足感は得られるっていうところで、まあ不思議な感覚ですよね。
T■私、もっと指を指されるのかと思ってたんですけど、意外と誰も指しませんね。GT60を知らない人が多いんです。
M■ちょっと気になってるのがGT60を乘りものとして買ってる人たちがどれくらいいて、飾りやコレクションとして買った人たちがどれくらいいるのかってところなんです。
この位置づけの車両をどんな思いで買って、その後どう使ってるのかっていうのがスゴく気になってるんですよね。乗ってる人の話はまず聞かない。乗ってる人が出入りしていればGT60がどうだこうだって話が聞こえてきてもおかしくないと思うんですけど、そういうのをまったく聞かないんですよね。だから他の10数台がどうなっているのか気になります。
T■追跡調査とかしてもらいたいですよね
H■当店ではもう1台、お客さまに納めてますね。
その方はお店に飾られていて、そして毎年買い替える人なんです。なので最終的にナンバーを取得して乗って、それで売られてましたね。それとは別に、一度だけ業者オークションのBDSに出品されているのは見かけました。けっきょく手を出せない価格まで上がったので買えなかったんです。
―そうなるとシリアルの何番から何番が日本に来たのかを知りたいところですね。
T■だからこそ、そこは追跡調査しかないですよ。
あとあまり乗ってらっしゃる方がいないようだと、「私のが世界で一番距離を走ってるGT60かな?」なんて冗談を言っていたんですよね。いま1万5000kmを軽く突破してます。
H■ああ、それは乗られてるほうだと思いますね。僕のなんて、まだ1000kmくらいですし。
T■恐らく日本に入った車両のなかでは多いほうでしょう。
もともと普通に乗っていた車両との入れ替えなので、ガンガンに乗ってますから。一番走らせたのは大阪〜仙台だったと思います。片道1000kmくらいですかね。大阪からできるだけ真っ直ぐ行こうと思ったので、2泊しながら下道で行きました。
M■自分は展示目的で手に入れたので、この先はそうそう走らせることもないと思います。
―それぞれ皆さんってベスパクラブの方だったり、ベスパを扱われている方じゃないですか。GT60ってなんで作られたんですかね?
60周年のコンセプトモデルとして、最初はGT60コンセプトというのが発表されています。だけどタイミングって他にも50周年だったり、40周年もあったじゃないですか。なのに60周年にフェンダーライトを復活させている。しかも999台限定で。つまり相当な話題とか、プレミアム感を盛り込んできているじゃないですか。なにが狙いだったとか、なにをしたかったとか......平井さんはイタリアに行かれる機会がありますけど、そういった話って聞いたことないですか?
H■直接はないんですけれども、その当時のいろんな人の話しを聞いていると、その時代ってピアッジオの業績が悪かった時代だったと思うんですよ。それでいろいろな策を考えて、もう一度ベスパのよさを見直そうという方向にシフトしていったんじゃないでしょうか。憶測でしかありませんけど、ベスパの財産って40年、50年と続いている歴史という部分も大きいワケですから。それでGT60が出てGTVが通常のラインナップに加えられ、そこに先進的な技術も盛り込まれていく。たぶんその発想で現行の946(ベスパ初の市販モデルを現代の技術で再構築したとアナウンスされたフラッグシップモデル)も作られたんじゃないかなと思います。GT60の成功があったから946に続いているんだろうと。
T■60が還暦という概念はイタリアにはないでしょうけど、GT60の昔帰りはまったく違うイメージになっている一番良いパターンという風に思ってます。ただの懐古主義じゃなくてね。
M■なにが原因なのかはわからないですけど、GT60からちょっとしかけたい部分があったんだろうなとは思いますよ。
結果としてプリマベーラやスプリントが復活を果たし、他メーカーでも歴代の名車を復活させてるというのは定番化してるじゃないですか。そういう展開のピアッジオ版第1号みたいな印象はあるんですよ。GT60が上手くいったから続いているのかはちょっとわからないんですけど、台数制限や特別感など、もっと言えば原点であるフェンダーライトという形状を新しいものに付けて出してきた。このことはなにかを記念して作ったというよりも、なにかわかりませんけど突破口としての話題性が欲しかったんじゃないのかなという気はします。
―話としてはとても興味深いんですけど、ちょっと憶測話としては展開しすぎてしまった感がありますので方向修正させてください。GT60に関する雑談的なこともお願いします。
H■GT60に乗る時は出発前に、まず天気をチェックします。
「今日は雨降るかなぁ」と。何度か濡れちゃうとあきらめも出てくるんですけど、最初のうちは革シートが雨に塗れても大丈夫かなって気にしてました。だから「今日の天気は曇のち雨か、うーん......早く帰ってこよう」とか。それでも濡らしちゃったら、革ジャンを手入れするミンクオイルで一生懸命手入れしましたね。
T■私は仙台行きで2日くらい雨だったんですけど、途中で雨、帰りはどしゃ降り。なので帰ってからすぐに洗って磨きました。
H■GTVのお客さまですけど、雨でも通勤で乗られている方がいるんですよ。
それで手入れをされていないので革はもうカピカピになってます。濡らして手入れせずに乾燥させてしまうと、どうしてもカピカピになっちゃうんですよね。
―雨以外に気をつけてることってありますか?
M■自転車ですね。駐車した時、前カゴに荷物とか入った自転車が来るとドキドキしちゃいます。
倒れかかってくるかもという不安ですよね。だから隣にあんまり止めてほしくないなと思いますけど、公共の駐車場や駐輪場ではどうしようもないですもんね。
H■僕はそういうところに置けないですよ。
ちょっと離れていてもいいので専用の駐車場だとか、自転車といっしょのところには置かないです。
―なるほど、雨と自転車が大敵なんですね。
まあどちらも傷むことを嫌ってということでしょうから、それだけ大事にされているということなんだと思いますけど。今度はGT60にはこれだけ満足しているよというところと、つぎにプレミアムモデルがあるならこういうのを期待したいというのをお願いしたいです。
T■つぎにこれを期待するっていうのはあんまりないんですよ。と言うのは、今ので十分自分なりには満足......理由付けして買ってますからね。つぎのネタがないんですよ。
H■最初にもお話しましたが、僕は限定ものに弱いんです。
GT60には満足してますけど、出たらその都度買っちゃうんだろうなって思います。実際に946も買ってますけど、やっぱり先進性とレトロの合わせかたがピアッジオは上手いです。そういう方向でいくとどんどん買っちゃいそうで不安が募ります。
M■自分の場合はGT60自体を手に入れたという部分で満足はしてるんですよ。
買う時も後がないという気持ちで買ったんで。ただGT60は買った人の名前が入る車両なので、そこに対してはスゴい悔いが残るし満足できていませんね。不満を残してるんですよ。それとオーナーズキットもあったじゃないですか。それもないので、自分のなかでは非常に残念な気持ちなんです。だからつぎになにかあるなら、そういう悔いは残したくないという気持ちが高まりました。でも、だからと言ってあんまりつぎつぎこられるのも......。
H■ちょいちょいこられると困りますよね。10年に1度くらいにしてもらわないと。
M■そうなんですけど、でもそういうのがあるならがんばりたいと思います。
つぎ出たらいいなって期待してるのは、GS......グランスポルトっていうモデルが出たらいいなって思ってるんですよ。GTSベースかなにかで出たらいいなって思ってますね。
―プレミア車両を所有する満足感や、不安なところなどが聞けて大変興味深い内容だったように思います。みなさん、本日はどうもありがとうございました。
オーナーだけの山盛り特典
GT60のオーナーだけに用意されたスペシャルオーナーズキットがご覧のアイテム。これらを革張りケースや化粧箱に収め、さらに段ボール箱で梱包された後にオーナーの手元へと届けられました。内容物はイニシャル入りシルバープレート、GT60ロゴ入りキーホルダー、GT60ロゴ入りドキュメントウォレット、GT60ロゴ入りボディカバー、GT60オリジナルスケッチ、GT60専用カタログ(以上a)、ベスパ・イタリアンスタイル/GT60エディション(book/b)で、梱包用ダンボールにまで出荷地域とシリアルナンバーがわかるようになっている念の入りよう(c)でした。
今回はこれにて終了!
さて「ヒストリックモデル#06」はいかがでしたか?
新旧をかけ合わせたコンセプトモデルから発展して市販化に移されたGT60ですが、ベスパ初の限定モデルとして全世界から注目を集めたワールドプレミアモデルでもありました。しかもGT60の所有が許された999人になれなかったファンたちからのラブコールによって、その後GTVというレギュラーモデルが誕生するなど、なにかと話題性の多かった現代版フェンダーライトです。 ちなみに冒頭でも触れていますが、フェンダーライトは日本だけの通称であり、世界的にはファロバッソでなければ通じませんのでご注意ください。
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