BBB MAGAZINE

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    2017.03.03 / Vol.33

    旧車レストア #10

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    隅本辰哉

    • 撮影

    隅本辰哉

    • バイク

    Vespa

さて、例によって久しぶりの「旧車レストア編」です。熱心な読者の方ならご理解いただけていると思いますが、レストアって時間観念がどんどんズレていってしまうものなんですよね。そのあたりもおさらいしつつ進めていきますが、今回はちょっぴり進展がありました。塗装に関する打ち合わせです。
今、この一瞬で「ん? 塗装に打ち合わせって必要なの?」と思われた方も多そうですけど、そこは内容をご覧いただくという事で、さっそく「旧車レストア編・第10話」をお届けしましょう!

Vespaレストア

実は「旧車レストア編・第9話」でも言っている事ですが、レストアとは奥が深く、時間もお金も知識も必要となる高尚な趣味の世界なんです。だから無理がないように進めつつ、少しずつキレイになったり、カタチになっていく様を楽しむ感覚で挑んでもらいたいと思っています。

時間観念のズレとは?

集めたパーツ
材質の違いが分かる

少し前の事になりますが冒頭で触れているように「旧車レストア編」のため、塗装に関する打ち合わせが行われました。それと"時間観念がズレる"という事にも触れています。そこで今回、まずはこの"時間観念がズレる"という話題からスタートです。
時間観念のズレと言っても、その事で社会生活に支障をきたすなどの弊害が起きるほどの大事というワケではありません。本来のレストアが復元である事はご理解いただけていると思いますが、どこまでこだわるか、どれほど突き詰めるかを決めるのは自分自身です。その決めた内容によってはマッチングパーツを特定するための勉強をして、いざ探してオーダーし、手元に届くのを待つという流れが不可欠です。そのために当然のごとく時間がどんどん過ぎてしまうものなんです。このことを受け入れて気長に取り組む以外に方法がない事から、時間観念がズレるという表現を使いました。実際の話、この「旧車レストア編」でも目に見えた動きがなかった事で、前回から約1年ものブランクを挟んでしまっているワケです。
もちろんこだわり方、突き詰め方を決めるのは自分ですから、こうした時間経過を嫌って目指すレベルを下げるという選択肢もアリです。その場合、取り組みがレストアであるなら完成時の満足度や達成感が下がってしまう事への理解は必要です。
例えばちょっと古いテイストでまとめたオールドスクール・カスタムだったり、とにかく実用レベルで動く状態にするための修理だったとしたら、勉強も探す努力も差し当たり必要ではなくなりますからグッとリズミカルに作業が進んでいく事でしょう。
でも想像してみてください。知識を得るために勉強して一生懸命必要なパーツを探し、そして漸くカタチにする事が出来た時の喜びを。なんだってそうだと思いますが、苦労して時間をかけた分だけ満足度や達成感は高まるものじゃないですか。それがレストアの楽しみの1つだと思うんです。まあ、レベルを上げすぎて作業が進まなくなり、その結果として心が折れてしまっては元も子もありませんから、やはり自分の出来るレベルで取り組むという事を忘れてはいけませんが......。
マッチングパーツを特定出来るだけの知識は不可欠で、なおかつ手配したものが本当に正しいかを判断出来なければ意味がないワケです。そうして集めたパーツ(写真左)の中には、微妙に形状や色ツヤ、ときには材質などが異なっているケースもあるんですよね(写真右)

塗装に関する打ち合わせだと!?

集めたパーツ
材質の違いが分かる

ここからはやはり冒頭で触れている"塗装に関する打ち合わせ"についてです。もしかしたら「ん? 塗装に打ち合わせって必要なの?」と思われた方もいるんじゃないかと思いますが、レストアのための塗装って特殊なものとなるケースが多いんですよ。それこそ現行モデルのキズ補修ということなら、キズ痕を目立たないように補修してからメーカーの指定色で塗り、周辺をぼかすなどして元のボディ色と馴染ませれば完了です。場合によってはボディ色が経年でメーカー指定色と大きく異なって見える事もあるので、そういうケースでは調色して色の差を出来るだけなくしてから塗るということになります。あくまでざっくりではありますが、現行モデルなどの高年式車ならばこのような流れでやれるため、特に打ち合わせも必要なかったりするでしょう。
ところがこの企画の協力者であるムゼオ(Museo Vespa Giappone)としては、「旧車レストア編」が目指すのは自然な雰囲気の仕上がりだとしています。具体的には塗装も磨かず塗肌をそのまま残したいとしていて、こういう塗装は業者から嫌がられやすいんです。飛散したミストによって塗肌が変わってしまうのをポリッシュで均すほうがキレイに仕上がるんですが、そこをムゼオではポリッシュせずに波打った塗肌のままにしたいと希望していくのです。つまりそうした細かなリクエストをしっかり伝え、その内容をきちっと理解してもらわないと思うような仕上がりが得られないというワケなのです。
塗装の表面作りのこだわりによって、当時の自然な雰囲気を再現する事が出来ます。重要なのは塗肌の雰囲気とツヤ。蛍光灯の写り込んだ部分に見られる"なみなみ"とした塗装表面(=塗肌)など、年式やモデルで異なる仕上がり具合まで再現するにはこだわりと共にどうなっているのか知らなければリクエストすることが出来ません

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