BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
いざ韓国へ! そしてレンタル開始
仕事を終え、一度自宅に戻ってからバイクにスーツケースを積み込んで空港へ。空港では、予約していたモバイルWIFIを受け取りつつチェックインを済ませます。今回は荷物も少なかったので、ヘルメットも含めてすべて機内持ち込み出来るようにパッキングしてきました。
海外ツーリングと言うと贅沢に聞こえてしまうかもしれませんが、普段の旅行や連泊ツーリングの延長と思うと実は大した事がなかったりします。何よりも、今まで以上の非日常的な時間を過ごせるのが魅力です。愛車を現地に持っていく事ができなくても、レンタルする事で普段と同じ車種に現地で乗る事が出来たり、ほかのバイクでもその土地の空気を感じながら走るだけで新鮮な気持ちにさせてくれます。
運転免許を取得して、初めて公道を走るときに「今、自分は教習本や教習所で習った事が正しくできているか? 警察に止められないか?」なんて思いながら走り出した事はないでしょうか?
海外ツーリングも回数が増えると慣れてしまったりしますが、いつも初めての土地を走るときは、周りの交通状況を観察しつつ緊張しながら走り出します。それって最初の時の新鮮な気持ちと同じもののハズです。今回もそんな期待を持ちながら空港からホテルへ向かい、荷物を預け、YuMinさんに手配していただいたレンタル店まで電車で向かいます。レンタル店は、ソウル中心部から漢江(ハンガン)という大きな川を越えたところの松坡区(ソンパグ)というエリアにあります。
さて今回のレンタル手続きでお世話になったYuMinさんですが、YuMinさんと知り合うきっかけになったのはベスパだったりします。そしてYuMinさんがベスパを知るきっかけになったのが、1990年代の日本で発刊されたクラシックスクーターと若者の日常を描いたコミックだそう。今では1巻から9巻まで、すべて揃えているとも。さらに日本に留学をしていた時期もあり、日本語がとても上手な方なんです。
そんなYuMinさんですが、実はお子さんも生まれて現在はベスパを手放されてしまったそうです。それでも今回協力してもらえたのは、過去に日本人から親切な対応を受けた経験があるからなんだとか。それはYuMinさん自身が東京を訪れ道に迷った際、通りがかりの人が一駅分もの距離を案内してくれた体験からなんだそうです。そうした人の温かい対応があって今回協力してくださる気になられたようで、私としてもとても感謝しております。
待ち合わせの地下鉄出口でしばらく待っていると、YuMinさんが自動車で迎えに来てくれました。ソウル市内に到着したころは曇り空で雨は降っておらず、出だしは好調と思ったのも束の間で、約束の時間になるにつれて雨がパラパラ。せめてバイクを借りるときは降らないでいてくれればという期待も裏切られ、どんどん雨脚は強まっていきました。車に乗り込み、自己紹介もそこそこにベスパを手配していただいたレンタル店へと向かいます。
今回手配していただいたのはレンタル専門店ではなく、レンタルもやりつつベスパを扱う販売店で、Vespa松坡店(ソンパ)というお店です。現在は正式なディーラー契約が終了しているため、それまでの場所から移転してしまっていますが、もともとYuMinさんがお世話になっていたお店だそうです。
程なくして「ここです」と言われ、とある建物の前で車が止まりました。建物の前にベスパが並んでいてそれっぽい店舗ですが、表に看板は見当たらずオフィスはビルの地下。なんとも不思議な光景でしたが、案内されるがままに地下のオフィスへ向かいます。そこで店主さんと挨拶を交わし、レンタル手続きを開始します。YuMinさんに必要な事を通訳していただきながら、用意した国際免許証をコピーし、レンタル代金を支払って契約完了です。通常なら日本のレンタルバイクぐらいの料金が発生するそうですが、今回はYuMinさんの紹介という事もあって3日間で1日分くらいの料金にサービスしてもらえました。
これで晴れてベスパをレンタルできるので、さっそく巌さんと車両を確認します。お互いが普段所有するベスパとはエンジン形式や排気量が異なりますが、操作などは一切問題ありません。2台ともロングスクリーンとトップケースが取り付けられ、ヘルメットや荷物の収納もバッチリで、雨風をしのげるツーリング仕様です。
ちなみにロングスクリーンは、ここ韓国で目にする多くのベスパに取り付けられています。ロングスクリーン装着率が高い理由として寒さを想像しましたが、どうやら定番アイテムとして普及しているという事のようです。日本だとロングスクリーンの装着率はあまり高いとは言えない印象ですが、ベスパにはメッキのバンパーやキャリアなどを取り付ける方は多いかと思います。その感覚に近いものがあるようです。
ところで地下オフィスから地上に出てみると、外は先ほどにもまして土砂降り。レインウェアを着て出発するには心が折れそうなくらい激しい降りなので、近くのカフェで様子を見る事に。ここでYuMinさんと韓国と日本それぞれのベスパ事情、いま韓国で話題な事や流行っている事などを聞きながら雨が弱まるのを待ちました。40分もすると雨は弱まり、いよいよ出発の準備に取りかかります。天気もしっかりレインウェアを着こまなくても平気だと判断できるくらいまで弱まりました。
2台借りたうちの1台は最初からスマートフォンを手元でチェックできるマウント付きでしたが、もう1台はついていなかったため日本から持参したマウントを取り付けます。そしてお決まりの記念写真を出発前に撮り「いざ出発です!」と言いたいところですが、初めての土地なので次に向かう目的地の道順を巌さんとともに再度確認し、今度こそYuMinさんにお礼を言って本当に出発です。
韓国の天気予報
聞く話によると韓国での天気予報は当てにならないらしいとのウワサが。出発前に日本で現地の天気予報をいくつか見ていると、どこも雨という予報でした。中には雷雨という予報もあって、「雷雨? そんなにひどい天気なの?」と困惑。日本ではまだ梅雨が明けきれていなころだったので、「韓国も梅雨時なのか? 日本で近年頻発しているゲリラ豪雨の事なのか? 東南アジアでよく発生しているスコールなのか?」と、現地でのようすを想像するばかりで全然解決に至りませんでした。
結果的に私たちが訪れた際は、夕方から夜にかけて少し雨が降りましたが、おおむね曇り空または晴れ間を見せていました。もしかすると天気が悪い予報というのは、あえて悪い方向に振っているのかもしれません。おかげで1日中ひどい天気というわけでもなく、降ったりやんだり晴れ間を見せたりと、様々な表情のある気候の中でツーリングを楽しむ事が出来ました。
明日の予行練習......いよいよ走り出す
今回利用したレンタルベスパは満タン出発ではなかったので、まずはガソリンスタンドを探すところから始まりました。次の目的地に向かいつつ、見つけたガソリンスタンドに入ろうという作戦で走り始めます。とにかく韓国の道路は道幅が広く、日本の名古屋を走っているような感覚です。
そして初めのうちは走行車線の一番右側(韓国は右側通行なので)を走っていたんですが、いきなり渋滞に阻まれてあまり進む事が出来なくなりました。私たちはその先の交差点を直進したかったので、1つ左側のよく流れている車線に移って進む事に。するとワケもなく走れ、さっきまで自分たちがいた車線は右折の自動車が多く待機していたので全く進む事が出来なかったと分かりました。日本では左折するのにここまで長い列にはならないだろうと思うのですが、ここではざっと日本の3倍くらいはありそうな長さになっていました。
そんな風にちょっとしたコツ(?)を探りながら、上手く流れに乗ってガソリンスタンドを探していきます。韓国ではLPガスのスタンドが多いので、ガソリンスタンドと間違えないようにしたいところ。そして、しばらくして本命のガソリンスタンドを見つける事が出来ました。今回入ったガソリンスタンドはセルフ式。人がいるガソリンスタンドであれば係の人に「만땅(マンタン←日本と同じ意味なので分かりやすいですね!)」と伝えてカードで支払えばとてもスマートですが、ここはセルフ式なのでタッチパネルに記載されているハングル語を解読しながら自分たちで給油をしなくてはなりません。
まず初めの画面に出てきている2つのボタンがガソリンなのか軽油なのか、それとも現金支払いなのかカード支払いなのかすらわからないので、ここでスマートフォンのアプリを利用します。翻訳アプリで手書き入力する方法もありますが、今回は翻訳したい文字をカメラで写してアプリに翻訳をさせていきます。自分の知っている言語で読み取っていくのに比べれば少々煩わしかったり時間がかかったりしますが、どのような事が表示されているのかアプリを通して分かるだけでもなんだか嬉しくなります。そして無事に給油を済ませたところで、この日の目的地である韓国のベスパディーラーへ向かいます。
ソウル市内に何か所かあるディーラーの中で、気になるお店をリサーチ。近年では各国ともディーラーを同じデザインで統一していますが、韓国ではお店のカラーや特徴のあるディーラーがいくつかあるので目星をつけておきました。
ディーラーへ向かうため、スマートフォンの地図アプリに住所を入力し目的地を表示させます。ここではルート検索とナビが使えないので、GPSで表示させた現在位置を確認しながら自分たちでルートを見つけて目的地を目指します。それでも紙の地図とは違って目的地の検索と現在位置が表示されるので、それだけでもとても便利に使う事が出来ます。
ソウルの中心部から近郊は、自然の地形にそのまま真っすぐで広い道を通したような感じのため、アップダウンも手伝って見通しの良さが何とも印象的です。日本だと一番歩道側がバスの優先車線になっていたりしますが、こちらでは主要な大通りの道の真ん中がバス専用車線になっています。そのようなところでは、とにかく左折が出来ません。韓国の大通りでは、左折できる場所が限られている事が多いのです。左折ができる箇所であっても、先ほどの右折の話のように曲がる箇所の大分手前のほうから自動車が列をなしている事もあります。なので、その車線に入りそびれてしまう事もしばしば。
大通りの交差点にもかかわらず左折ができない場所が多いため、初めのうちはそこをやり過ごし次に出てきた左折が可能な場所で左折をしていました。この土地ではUターンの場所が多く設けられているため、Uターンしてから右折して本来の行きたかった場所に行くのがスマートなようです。その曲がるための動作以外は、バイクを借りた場所からディーラーまで難しい道順もなかったので程なくして到着する事が出来ました。
韓国のベスパディーラー
他国でディーラーを訪れる際の見どころは、やはり自国での未入荷モデルを見られる事でしょう。それにwebサイトやSNSでしか見た事がないようなカラーリングに出会える事もあります。ほかにもその国独自だったりショップオリジナルのアパレル、グッズ、アクセサリーなどが販売されているケースも多くあり、それらを物色して気に入ったものをお土産として購入するのも楽しかったります。
イタリア発のベスパの場合、行く先々でそのような地域性をディーラーで感じられるのもおもしろいところです。なによりそんな外国人フリークでもお店の方の対応はとても親切で、カード決済にて気軽に買い物を楽しむ事が出来ます。初めに「日本から訪れた旅行者で、自分の国でもベスパが好きで乗っています。お店の写真を撮っても良いですか?」と、丁寧に尋ねると断られるケースはまずありません。お店の人もそんな外国人に対して気さくに話しかけてくるケースが多いので、ぜひディーラーを訪れた際は話をしてみてください。そのようなところから、その国のバイク事情を聞く事も出来ます。
今回訪れたのはVespa江南店(カンナム)。こちらでは事前にリサーチをしていた皮のキーケースを買って帰りました。ベスパを引き立たせてくれそうなアクセサリーも売っているので、他とはちょっと差をつけたオシャレに一役買ってくれるかもしれません。
お店自体も日本ではなかなか見られない作り込みだったり、アクセサリー類のディスプレイを見る事が出来ます。店内に並ぶ車両も日本未入荷の仕様やカラーリングなどがあり、それだけでも楽しむ事が出来ました。
明日に備えてゆっくり休む事にします
ディーラーでの用事を済ませたころには、すっかり夕刻を回っていました。すでに天気もレインウェアの必要がないくらいにまで回復しており、この日は一時的な雨を繰り返しているような一日でした。ずっと雨マークの雷雨予報というのは、この国ではこの事を指しているようです。
この日は早めにホテルへ戻って夕飯を食べ、明日に備えてゆっくり休む事にします。韓国での第一日目はとにかく自動車の交通量が多く、なぜか自動車の流れがとても悪かった印象です。ホテルへ戻る道中は、とにかく渋滞にはまっておりました。是非はともかく、バイクと言えばスリ抜けで早く移動する事が出来たりします。周りの雰囲気を見ていると、この国でもスリ抜けしているバイクをよく目にします。
しかし私たちは慣れない土地という事もあって、安全運転を心がけていました。普段であれば流れの悪い渋滞はストレスしかありませんが、非日常的な異国でのツーリングだとそんな渋滞すら体験の一つとして楽しむ事が出来ます。
ソウルの中心部へ戻る道中は、どうしても漢江(ハンガン)という大きな川を越える必要があります。川を越えるために多くの自動車が橋に集中してしまうため、ラッシュ時にはかなりの渋滞となってしまうようです。それに加えてソウル中心部も自然の地形と大きな道路の作りが重なってなかなか左折できず、うまい具合にホテル前まで到着するのもちょっと一苦労でしたね。
今回はここまで!
今回からスタートした「ワールドワイドにベスパでRUN」ですが、その第1回目は韓国編からスタートしました。いかがでしたか?
これから土田さんが体験してきた"ベスパで世界を走る"話題がいろいろと見られそうで、どうにもワクワクしちゃいますね!
次回は韓国編の続き、第2日目のようすから始まる後編をお届け予定です。ほかにもまだまだアジア圏や欧州圏のレポートが登場予定ですのでお楽しみに!!
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