BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
Taiwan Vespa Scooter Club
台湾にもさまざまなベスパのコミュニティが存在し、その1つにTaiwan Vespa Scooter Clubがあります。以前からインターネットを通して気にはしていたのですが、今回はTakeshiさんの仲間にもお会いする事が出来ました。4ストロークのオートマチックのベスパに乗られている方が多く、誠品敦南店前の広場へ集まって来ました。クラブの代表でもある陳さんはET8(ET8は台湾でのET4で、4は縁起が良くないとされている事から8に変えて販売されていました)で駆け付け、私にベスパのフロント部分に取り付ける“クラブバナー”をプレゼントしてくれました。
私が台湾に到着したこの日は既に日付も変わり、昨晩から動き続けてきた事で体力的に限界です。短い時間での別れはとても残念でしたが、集まってくれた人達と記念写真を撮りこの日はお開きです。私のために駆けつけてくれた事を、とても嬉しく思いました。
それからメンバーの中にはいわゆる“朝練”をしているグループもあり、いつも決まった峠道に集まって走りを楽しんでいるようです。しかも峠を走って楽しむだけではなく、一眼レフカメラ+望遠レンズを使って撮影会も行っているとの事。インターネット上にアップされる写真は、どれも流し撮りで速くカッコ良い写真ばかりです。それに彼らは新しい物にとても敏感です。最新のマフラーやサスペンション等が発売されると自身の車両に取り付け、スポーティなドレスアップパーツ等が発売されれば積極的に装着。見事に峠道を走っていてカッコ良いと感じさせる仕様に仕立てています。
もちろん走りを意識しているので、身に付けているモノにも気を使っています。特にヘルメットはAraiやSHOEIのジェットタイプだったり、AGV等のフルフェイスを多く着用しています。TakeshiさんもSHOEIのジェットヘルメットを愛用していて、なんでも日本製品に信頼を寄せているんだそうです。
また彼らの中にはより大きなスクーターや大型のオートバイへという流れがあり、GT200やGTV250等からGTS300やYAMAHA・TMAXに変えたりする人もいるようです。
目的の一つ“偉士牌”バッジ
台湾のベスパ専門店の老舗の一つに台湾偉士車房と言うお店があります。ここはVESPA CLUB OF TAIWANの会長である楊さんのお店。このお店を訪問した理由は、“偉士牌”バッジの付いたベスパを確実に見られると思っていたから。それに“偉士牌”バッジを手に入れるという目的もあります。日本に入った台湾製ベスパの多くは“偉士牌”バッジがなく、台湾本国まで行かないとまず見る事が出来なかったんです。
そんなワケで表通りから外れた通り沿いにあるそのお店まで、Takeshiさんに連れて行ってもらいました。決して広いとは言えない間口、店頭にはベスパではない普通のスクーターが並んでいました。しかし通りを挟んだお店の向かいには半分シートがかかった状態の現役を終えたベスパが並べてあったので、そこが目当てのお店なんだと理解出来ます。店内が広いというワケでもありませんが、置いてある車両の7割は現行オートマチックベスパです。飾られているクラシックベスパは50年代半ばのフェンダーライトか、綺麗にレストアされたクラシックベスパ。しかし、このお店では残念ながら漢字表記の“偉士牌”が見当たりませんでした。
楊さんとは、片言の英語と身振り手振りで会話もしました。私が日本から来て、日本ではどんなベスパに乗っていて、どんなお店でお世話になっているかなど。楊さんも、知っている限りの日本の事を話してくれました。話の合間合間、ショーケースに飾られた装飾品類を見ながら“偉士牌”のバッチを探します。ふと“偉士牌”と書かれた部品の袋を発見出来たので、そのロゴを指差しながら説明したら奥の部屋へ案内されました。
表側のスペースから一つ裏が整備をするためのスペースのようですが、どう整備するのかと言うほど狭い通路程度のスペースです。さらに奥はストックパーツのスペースで、所狭しと積み上げられた部品と、その上側には台湾で見られるタイプのバンパー類がぶら下がっていました。そのまた奥にある横開きのシャッターが開くと、そこにはGTSがギリギリ入る大きさのエレベーターがあります。そこを通過したさらに奥の部屋で漸く“偉士牌”バッジが付いて当時のままのオーラを放つ60年代後半のベスパ、ET8などのボディを見ることが出来ました。
次に小さなエレベーターで地下へ案内され、真っ暗な地下室に明かりが点いた時、そこには不思議な空間が広がっていました。上のフロアから想像出来ないほど天井が高く広い空間です。明かりが点いたと言っても天井から蛍光灯で明るく照らされているのではなく、数個の作業用スポットで照らされているだけ。なので、奥のほうは薄暗い感じです。このフロアには、かつて台湾で活躍していた数々のクラシックベスパが保管されていました。隙間無く車両が保管されているので、細かく見えるのは手前のみ。奥の方へは到底進むことが出来ず、なんとなくどんな車両があるのかを確認出来る程度。日本では馴染みのないハンドルやウインカーの付け方をした車両、企業のプロモーションで使われたベスパ等も保管されていました。
このディープな空間に踏み入れられた事、全く予期せぬ展開にただただ興奮の連続です。恐らく、今見る事が出来る手前の車両だけでも翌日まで見入ってしまいそうな勢いでしたが、楊さんもTakeshiさんもそろそろという雰囲気があったので、お礼を言ってここまで。再びあの狭いエレベーターで上に上がって行き、一番初めの部屋、店頭へ。
店頭のカウンターには、“偉士牌”バッジが2つありました。どうやら私達が地下を見学している間に奥さんが用意してくれていて、「どちらが良いか?」と聞かれました。実は日本を出発する前に“偉士牌”バッジをお土産に4つくらい買えたら良いな~と思っていましたが、市内を見ても想像以上に少ない偉士牌。そしてこの老舗のお店ですら表に偉士牌を並べていないワケで、本当に数が少ないのだと悟りました。なので、出来れば両方とも言いたかったところですが、60年代後半の偉士牌に付いていた少しラメの入っているタイプを選びました。
台湾に来て漸く自分へのお土産、記念品を入手する事が出来ました。Takeshiさんの案内と楊さんの配慮もあり、台湾まで足を伸ばした甲斐もありました。帰国後に分かったのですが、偉士牌が活躍していた全盛期は私が生まれるよりも前。そしてどちらかと言うと台湾製のベスパではなく、ヨーロッパで生産されたベスパのスタイルが好まれていた事を少し寂しく思いました。
1)Vespa Club Taiwanのバナー/2)Vespaオフィシャルのキーホルダー/3)2009年に台北で行われたVespaDayのバッジ/4)阿順偉士専修坊のショップステッカー/5)TAIPEI mod styleのバッジ類/6)インスタントカメラでの記念写真/7)Taiwan Vespa Scooter Clubのステッカー/8)偉士車房にて交渉の末入手した“偉士牌”のエンブレム/9)Vespa Club of Taiwanのシート/10)私がGT系のベスパ乗りという事で頂いたワッペン/11)台湾の空港で見つけたスクーターがモチーフのポストカード
台日コミュニケーション
今回の台北でお世話になったTakeshiさんのベスパについても記しておきます。TakeshiさんのGT200はマフラー変更だけかと思いきや、足回り、点火、吸気まで手が入っているとの事。また灯火類やメーターパネルのバックライトがLEDに変更され、イメージはガラリと変わった印象です。希望ではGTS250IEのデジタルパネルを取り付けたいようですが、台湾にGTS250IEは輸入されなかったので難しいようです。それに部品を海外から取り寄せるのも困難との事。
私の帰国間際、カフェで片言の日本語、会話本、スマートフォンの翻訳機、紙とペンを駆使してお互いのベスパについて意見交換する事が出来ました。それぞれのベスパはインターネットを通じてチェック済みのため、お互い今後どんな事をやりたいのか、今までどんな事をやってきたのかといった話題で盛り上がりました。他にもスクーター事情、部品の良し悪しについて等の意見交換をする事が出来ました。
住んでいる国や言語が違えど、ベスパを通じてここまで交流を深める事が出来たのはとてもすばらしい事だと感じました。またぜひ私は台湾へ遊びに行きたいですし、ぜひ日本へ遊びに来て欲しいと伝え台湾を後にしました。
今回はここまで!
今回の台湾/台北編・第2弾はいかがでしたか? なかなかマニアックではありますが、だからこそディープな台北ナイトツアーだったんだろうという感じですよね。
実は土田さんの初台湾旅行は、そのまま台南へも足を延ばしたそうです。なので、次回は台湾/台南編・第1弾をお届けする予定です。お楽しみに!
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