BBB MAGAZINE

  • 大人のたしなみとしてベスパに接してみよう!

    2019.03.21 / vol.56

    ワールドワイドにベスパでRUN #8 レンタルで楽しむフランス旅/前編

CREDIT

寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
早いもので8回目となる「ワールドワイドにベスパでRUN」ですが、今回から旅の目的地としてあこがれる人も多いフランス編に突入です。実はヨーロッパ初体験ながら、大胆にもレンタルベスパでツーリングしてしまおうと考えた土田さん。前編ではレンタルに関する部分を中心に、旅がスタートするところまでをご覧いただきましょう!

フランスでベスパを借りてみよう!

レンタルしたベスパGTS125
レンタルしたベスパGTS125は当然ユーロナンバープレート車
フランスを示す"F"、パリ登録を示す"75"の表示あり

海外でベスパ(バイク)をレンタルする難しさや苦労、それに実際に走る上で気をつけなければいけないのがどんな事なのか......等、土田さんが自らの体験をレポートしてくれる「ワールドワイドにベスパでRUN」の第8弾。今回はフランスでのベスパのレンタル契約から、実際に車両を借り出してツーリングをスタートさせるあたりまでのレポートです!
(以下は土田さんによるレポートになります)
※記事中の情報や写真は2014年当時のものとなりますのでご注意下さい

夏期休暇を利用してフランスを旅行しました。フランス旅行と言えばパリで凱旋門やエッフェル塔に登り、シャンゼリゼ通りを歩き、ルーブル美術館で有名な美術品を鑑賞。そして有名ブランド品をショッピングし、テラスでランチを楽しむというのが一般的なスタイルかもしれません。しかし今回は、どうせならフランスでベスパツーリングが出来ないかと考えました。......と言うのも、知り合いから「自分がフランスに滞在中であれば遊びにおいで」というお誘いを受けたからです。知人の滞在場所はパリから南へ140km程の村。そして「そこまでベスパで来たら?」という、ちょっとそそられてしまう提案も頂きました。

そうなるとベスパを借りられるレンタル店を見つけなければなりません。そこでこの魅力的なお誘いを頂いた知人からベスパを貸してくれるレンタル店を紹介して頂き、自分でもユーロスクーターを借りられるレンタル店を見つけ、さらに何人かの協力者達からもレンタル店に関する情報を集める事が出来ました。

その中で目星を付けたのが5軒。2軒はスクーターを貸すお店、1軒はクラシックベスパを貸すお店、残り2件がモダンベスパを貸すお店です。ただ自分の希望としては現地でもベスパに乗りたいと考えていたので、まずはベスパを貸すお店に連絡をしてみました。
実はこのタイミングで別の知人を介して旅行代理店勤務でバイク乗りという人に相談させてもらったんですが、「フランスで外国人にオートバイを快く貸すお店はない」という渋い返答でした。それでも「フランスで借りるなら、イタリアかスペインでオートバイを借りてフランスに行った方が良い」というアドバイスももらいました。なんとも先行き不安なスタートです。

ところでベスパが借りられそうなお店は3軒見つけてありますが、クラシックベスパを貸すお店で用意しているのはスモールフレームの125ccとの事。しかし1日当たりのレンタル料金が割高なため候補から外す事にしました。残る2軒のいっぽうは、以前にネット上の知らない誰かのブログで見た事があったお店のようでした。そのブログに書かれていた内容によると現地の人の協力を得ながら直接交渉をした末に、どうにか貸してもらう事が出来たという経緯が書いてあました。そんなお店だったりするので、eメールで問い合わせる外国人等は相手にしていないのかも知れません。

そしてもういっぽうですが、店舗を持たずに指定したホテルまでベスパを届けるというシステムの"lef tbank scooters"というところ。こことは英語でのやり取りが可能で、レスポンス良くメールでの問い合わせに答えてくれました。基本的に50ccと125ccのモダンベスパでのレンタルや、ツアー対応が中心業務のようです。ちなみに今回はこことレンタル契約をする事が出来たのですが、予約を前にしたeメールでの問い合わせで「私は日本人ですが、フランスでどうしてもベスパに乗りたいと思っています。海外ではアメリカと台湾での経験があるから貸してもらえないだろうか?」と念を押して、漸く承諾を得る事が出来ました。なおフランスでは125cc以下なら二輪免許の必要がない事もあってこのクラスの車両が揃っていますし、行動範囲とレンタル料金を考えるとかなり実用的なクラスだったりします。

◎パリの街角で目にしたベスパ&スクーター

悪戯され放置されている中間くらいの年式のベスパ
現行ベスパは比較的綺麗で、古いベスパは大事にされ、中間くらいの年式のベスパは悪戯され放置されているのをよく見かけました
ピアッジオの3輪スクーター
街中ではスクーターの中でもピアッジオの3輪スクーターが多い印象です。中でもウインカーが特徴的なLTというタイプを多く目にしました
つや消し系のベスパ
フランスでの流行色なのかは分かりませんが、明るい色よりもダーク系だったり、つや消し系のボディカラーばかりが目につきました
8月だけど肌寒そうにバイクを運転している人
フランス旅行のタイミングは8月でしたが、この時期のパリの朝夕は大型のスクリーンにレッグカバーがあっても良いような肌寒い気候です
クラシックベスパも市民の足として使われている様子
都市部では圧倒的にオートマチックの現行ベスパばかり目にしますが、クラシックベスパも市民の足として使われる姿を時折目にします
街角に放置され続けているベスパ
現地で実際に目にした光景ですが、街角には放置され続けているようなベスパもあってベスパに乗る自分としては少し複雑な心境です
街中にさり気なく駐車されているベスパS
街中にさり気なく駐車されていただけのベスパSですが、パリで見かける乗り物はいつどこにあってもオシャレでカッコ良く見えてしまいます
街角で見かけたクラシックベスパ
街角で見かけたクラシックベスパ。意識して見ているせいでベスパばかり目につきますが、実際には日本製のスクーターも良く見ます

用意されたベスパがオーダーと違う!?

土田さんとフランス人の知人とのツーショット
日本の、とあるカフェで知り合ったフランス人
レンタル契約時に大変お世話になったAnthonyさん

さてレンタル契約を交わす事にした"lef tbank scooters"で借りれる125ccのベスパは3種類あり、スポーティーなイメージの赤いベスパS、クラシックなイメージのベスパLXV、ボディが大きくタンデムするのにお勧めなGTSがラインナップされています。そこで私の選択ですが、GTSは日本で乗っていて、赤いSは台湾で借りて乗った経験があるので、今回はLXVをお願いすることにしました。ちなみにここでは英語が出来て、クレジットカードと国際免許があればレンタル可能という条件です。
レンタル料金は80ユーロ/日が基本ですが、4日以上の契約だと70ユーロ/日に割引されます。この料金の内容は距離無制限で保険込みとなり、ヘルメット、グローブ、レインウェア、丈夫な鍵2つが付属します。ただ今回の私の場合はオートバイに乗る事を前提にしていたので、ヘルメット、グローブ、ライディングウェアは日本から持参しました。

レンタル当日を迎えるにあたっては、英語が出来れば貸してくれるというお店ではありますが、実は私はそれほど英語を喋る事が出来ません。カタコトでは難しいと思い、以前日本で知り合ったフランス人のAnthonyさんに協力してもらう事にしました。
実際、契約のほとんどの場面で四苦八苦してしまい、彼の協力なしでは無事にベスパを借り出すところまで行き着けなかったかもしれません。

それと無事に車両を借りる事は出来たのですが、希望していたクラシカルなスタイルのLXVではなく、日本でも乗っているGTSでした。希望とは違う物がやってくる......なんともヨーロッパを感じさせるいい加減さですが、私としてはそれでもよしとしました。むしろクレームを付けて契約そのものを拒否されてしまうと、この旅行の目的がすべて台無しとなってしまうので、そのような事態だけは避けたかったというのが大きかったのです。

加えて日本を出発する前の仲間との会話で、「現地の治安を考えたら旅行者が乗る綺麗な車両ではなく、現地に馴染んでいそうなヤレた車両のほうが狙われ難いかもね」等と話したりもしていました。まさかそのせいではないでしょうが、用意されたベスパは結構ボディが傷んでいる車両でした(笑)。最低でも3回は転倒していそうな程ボディが凹んでいて、傷だらけでキャリアのボルトは緩み、一部部品は欠損。落書きされたシートにはカバーが被せられ、別の意味で期待していたものがやって来たという感じです。おかげで「これなら気兼ねなく、5日間このベスパと共にフランスを走り回れるかも」と感じられました。
なおナンバープレートの75という数字がフランスの首都であるパリでの登録を意味していて、なんだかちょっと嬉しくもあります。それにこれは後から感じた事ですが、1日に多いときで350kmを移動する事もあったので、その距離やスピードを考えれば大柄で安定感のあるGTSで良かったなとも思いました。

◎レンタルベスパ(レンタルバイク)の事

シートに落書きされているベスパ
シートには純正シートカバー(シート裏から引っ張り出して使います)がかけられていたのでめくってみると、悪戯で落書きがされていました
レンタルベスパで付属してきたヘルメット
今回利用したレンタルベスパにはヘルメットとグローブ、レインウェア、それにやたらゴツい鍵×2個が付属品として用意されていました
フランスの任意保険証となるステッカー
これが任意保険の証となるステッカーです。なお保険付きのレンタルバイクでも、カバーされる内容と期限等をよく確認すべきでしょう
ミシュラン製の地図
地図はタイヤブランドで馴染み深いミシュラン製を自分で用意しました。慣れると開きやすくて色使いも良く、とても見やすい地図です

あこがれのフランスで走るための注意事項

フランスでレンタルしたWi-Fiサービス
フランス全土をカバーするWi-Fiレンタルサービスを利用
旅行中に入手できる情報量を考えたら安いかもしれない

私の場合、これまでに数少ないながらも一応海外でのツーリング経験があります。とは言え、ヨーロッパは今回が始めて。それに一人で移動する事が多いと分かっていたので、出発前に最低限必要な交通ルールを教わりました。
特にヨーロッパでは良く利用する事になる、ラウンドアバウトと呼ばれるロータリー式の交差点。この交差点の進入方法、進入する際はどちらが優先か、ラウンドアバウトから出る時はどのタイミングでウインカーを出して次に入ってくる車に知らせるか。優先という看板、進入禁止という看板。信号機のある交差点での停止位置、スリ抜けする際は道路のどの位置で行うかなど、日本ではあまり馴染みの無いルールばかり。

また、速度超過や進入禁止等は厳しくカメラで取締りを行っている事も不安を募ります。今までは現地の方に付いて行けば問題ないツーリングばかりでしたが、今回は大半が一人での移動です。些細な事で現地警察のお世話にはなりたくないですし、事故を起こしてしまうのも面倒なので、いつも以上に自分の中では緊張感がありました。
それに借りるのは現行のモダンベスパですが、車両トラブルがないとは限りません。ある程度の工具とスペア部品、そして応急処置用の小物を日本から用意して、出先で作業を行えるレベルのパンク修理とベルト交換の方法は練習をしてから行きました。幸い故障的なトラブルはありませんでしたが、ビニールテープやタイラップは使ったので持って行って良かったです。

ここまでは今回の旅のキモとなるレンタルベスパに関する話題でしたが、ここからは旅のレポートをお届けしていく事にします。
シャルルドゴール空港に降り立ち、エールフランスのシャトルバスで凱旋門のところに降りました。バスを降りた私の目の前には、写真でしか見た事がなかった大きな凱旋門です。ところが、気持ちはなんだか落ち着いていました。なんだか目の前の凱旋門に対して、なにか憧れを目の前にしているというドキドキ感がなかったのです。
それよりも凱旋門広場には、キリがないくらいに進入しては出て行くユーロスクーターやベスパがいて、引っ切りなしに目の前を横切って行きます。そしてそれらがそこらかしこに路上駐車されていて、そんな光景を見る度に興奮していました。

でも重たい旅行カバン等を抱えて動きが鈍いので、ホテルにチェックインを済ませてからパリの街を散策しに出かけます。その日は時間の許す限り歩き回って写真を撮っていました。それは食事をする事を忘れるほど(笑)。
翌日は、地下鉄を利用して蚤の市へ。しかし蚤の市は開催されていたのですが、曜日と時間帯が悪かったらしく思っていたものを見て回る事が出来ませんでした。そのがっかりした気分も手伝って、既に足はクタクタ。それで少し早めですが、ベスパを借りるために移動です。実はその日の午後からベスパを借りる事になっていたので、早く借りて動き回れたらと思いながら時間まで待つ事にしました......(続く)。

◎走るために知っておく事

フランスの道路表示板 速度表示 レーダーを警告
道路表示板には速度表示してくれるものから、レーダーを警告するもの等があり、一般道も高速道路も日本より法定速度の上限は高めでした
フランスの道路表示板 ロータリー
日本のように信号が設置された交差点は少なく、多くはロータリー式です。道路表示板のフランス語を読み取るのも慣れなくて一苦労でした
フランスの高速チケット
こちらが高速チケット。実は乗り始めた頃には既にETCが普及していて、入り口でチケットを受け取り出口で支払うシステムに少しドキドキでした
フランスの高速料金所
料金所には支払い方法毎のレーン(現金払い、電子料金収受式、クレジットカード)があり、一番空いているレーンに入るとクレジットカードが使えず困りました
フランスの雨に濡れた石畳とベスパ
今回は雨の心配は無用でしたが、出発前に濡れた石畳は滑るので気をつけるよう言われました。それでも地元の人はアクセルを開けている印象です
フランスの無人ガソリンスタンド
走ればどうしても必要になるガソリン給油ですが、無人ガソリンスタンドの殆どはクレジットカードでの支払いが可能なのでスムーズに給油可能でした

今回はここまで!

レンタル自転車施設
街中にあるVelib(ヴェリブ)というレンタル自転車施設
パリ市街地だけの移動なら使い勝手の良さそうなアイテムだ

今回のレンタルで楽しむフランス旅/前編はいかがでしたか?勝手の分からない見知らぬ土地であっても飛び込んで行ってしまうのは土田さんならではと言えそうですが、やはり海外ツーリングのヒントとなりそうな事が随所に垣間見れる気がします。
さて、次回はいよいよ実際のツーリングレポートになる予定ですので、どうぞお楽しみに!

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