BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
旅の移動手段として、ベスパをレンタルして走ってみようと決めた土田さん。今回は、そのフランス旅行の後編です。果たして、初の欧州旅行にしてレンタルベスパという組み合わせで一体どんな旅を経験したのでしょう!? それでは早速ご覧ください!
走った途端に難易度の高さを実感
いよいよベスパのレンタル手続きに挑む土田さん。そしてそのままベスパに乗って、慣れないフランスを走るという貴重な体験をレポートしてくれました。もう、とにかくリアルな体験談として注目です!
(以下は土田さんによるレポートになります)
※記事中の情報や写真は2014年当時のものとなりますのでご注意下さい
レンタル開始の30分前にホテルまで戻り、その数十分後には今回のレンタル手続きでお世話になるAnthonyさんとも合流。久しぶりだったのでお互いに顔が分かるかドキドキでしたが、問題なく再会出来ました。そして目の前の通りを走るスクーターに目をやりつつ、世間話を交わしてレンタルベスパの到着を待ちます。
そうこうしているとブルーのGTSが登場。「希望の車種とは違う」と思いながらも、無事に遅れる事なくレンタルベスパが来た事に一安心。そしてそのまま契約書を出され、契約に関する簡単な説明を受けてサインという流れ。
本来なら車両自体の説明も受けますが、日本でも普段乗っているGTSなので排気量以外は割愛。「いついつ取りに来るから宜しく!」と、とても簡単な受け渡しの場面でした。ちなみに支払いは事前にPayPalでデポジットを支払っておき、現地で現金かカードで支払えばOKでした。
さて手続きも無事終える事が出来たので、Anthonyさんに日本からのお土産を手渡していざ出発です。日本を出発してからだと既に20時間以上が経過しているにも関わらず、いよいよ出発という気持ちが湧き上がってきます。
Anthonyさんからは「フランスの道路は日本と違って危ないから気をつけて。特にそこの凱旋門のところ。本当に気をつけて」と何度も声をかけてもらい、一方通行である事、日本とは違う右側通行である事などを改めて確認してから走り出します。
走り出してすぐ、まずは目的のお店に向かうために凱旋門を通過します。ここに来て「やっとフランスに来たんだ」と実感し、なんだかゾクゾクしていました。その気持ちのまま凱旋門の周りで記念写真を撮り、交通の流れに乗りながら凱旋門の大きなラウンドアバウトも抜けてシャンゼリゼ通りへと入って行きます。周りのオートバイや車の動きに注意しつつ、時折右側に車両を寄せてナビを確認しながらパリ市内にある目的のお店を目指して行きました。
中心部を出発して地方に向かうには、まずパリ市内を囲んでいる外環状道路を抜けて行かなくてはなりません。慣れているなら外環状道路を使って目的の国道へ出れば良いのでとても便利なのですが、外環状道路上にある目的の出口まで間違わずに辿り着ける自信が無かったため、一般道から外環状道路を越えて目的の国道に出ようと考えました。
ところがナビに従って走っていたら、なんと目の前は工事中。それで迂回路へ逃げるも、そのまま外環状道路へと繋がっていた事から、結局避けていた外環状道路に入ってしまいました。
外環状道路は何車線もあり、スピードも速く、高速道路のような雰囲気です。......と言うか今自分が外環状道路を走っているのか、それとも高速道路を走っているのかが分からないまま走るしかないという状況です。
とにかく次の出口らしきところを目指すも周りの自動車の速度が速く、125ccのベスパでは100km/h出すのがやっと。それに表示板などのフランス語は、アルファベットを読み取るだけで精一杯。とりあえず外環状道路から出られるように走り、何とか一般道に出る事が出来ました。
結果的に、外環状道路を少し走っただけなのに行きたい場所からだいぶずれてしまいました。なので、ここから先はスムーズに目的地の知り合い宅を目指すため、スマートフォンの音声ナビを使うことに作戦変更です。
空港で手配したレンタルWi-Fiを使い、スマートフォンのナビアプリを頼リます。日本にいるときと同じように使え、音声案内も日本語というアプリです。ただしスマートフォンを車体に固定する術を用意していなかったため、画面を見ながら扱う事が出来ません。そのため音声だけが頼りです。
ところが案内通りに走って「コレで安心」と思ったのも束の間、こちらでは当たり前のラウンドアバウト手前で思いがけない事態の発生です。なんと音声案内がこの先右折か左折かと言う指示ではなく、方位で示して来るというまったくもって予測不能の展開です。
確かにラウンドアバウトだと曲がると言うより、進入してどちらの方位に出て行くかといった表現の方が適切な気もします。そうなると常に自分がどの方位に向けて走っているかを把握しておかないと、音声を便りには使えないんだという事が分かりました。
その事に気が付きはしたものの、結局スマートフォンのGPSで現在地を見つけ出し、地図上で自分の位置を確認。その上で目的地までのルートを地図で見つけ出すと言うのが一番早く確実な方法でした。
それでもフランスに来て土地勘も無いワケです。表示板の次の場所まで何キロと書かれていても、目的地までの区間にどんな地名があるのかを全く理解していないため、ただただ不安に思いながら大きな町の看板を目にするまで走るのみでした。
結局最短で向かえるハズの国道からはアクセス出来ず、遠回りをしながらやっと目的の国道に。その時は、もう日が沈み始めている19時ごろ。目的地まではまだ数十キロあり、サマータイムであっても太陽が沈みかけだいぶ心細くなってきました。
気持ち的には小学生が夏休みに子どもだけで自転車で遠くに出かける感じとでも言うか、おじいちゃんの家まで遊びに行くような......そんな気持ちかなと思いながら、でも私は20代も半ばを過ぎてオートバイなのにそんな経験をしているのがなんとも面白かったです(笑)。
また日本ではあまり体験する事が無いような壮大な景観には圧倒されました。一面に広がる牧草地帯と広い空、それこそ電線もガードレールも無い道路が印象的です。目の前の光景に、思わず「すごい、すごい、すごい!」と声を出してしまったほど。今自分がここにいるのが不思議な気分でした。
絶好のロケーションを満喫する喜び!
予定していた時間から2時間も押してしまいましたが、どうにか知り合いの滞在する村の近くまで到達。すぐそばを通る国道に入る事が出来たので、後は目的地の村、ヴェロン(Veron)の名前が表示板に出てくるまで走るのみです。地図で見ると、その手前に大きな町があるようです。
日も暮れる中、何処を見ても新鮮な風景や町並みが次から次へと現れては流れ去っていきます。もう少しゆったりとしたペースで移動していきたい反面、日没に焦りを感じつつ先を急ぎました。町の手前に出てきた道路標識には国道がAとBに分岐していると示されています。もうこれ以上道を間違えて時間をロスしたくなかったので、とりあえずAの方へ行く事に。
Aの方へ進んでから気が付いたのですが、Aは町の中心部に通じる国道。オマケに町の中心を突っ切る事が出来ずに迂回する必要があります。Bに進んでいればバイパスのような国道で街を迂回するため、速度を落とす事なくその先まで一気に走って行けるという違いがありました。
漸く目指していた村、ヴェロン(Veron)に到着。さっそく知人宅(=滞在先)へと向かうため、スマートフォンのナビに住所を入れてみます。それで分かるだろうと思っていたのに、だいたいの場所しか示さず分からずじまい。そこであまり使いたくなかったのですが、国際電話を使って村の中心にある教会まで迎えをお願いしました。実は滞在先から教会は数メートルという近さ。村の中心に教会があるので、それが目印になっていてとても分かりやすいと感じました。
とにかくやっとの思いで到着出来、知人の顔を見られてとても安堵しました。夕食は既に始まっており、遅れて到着した私に地元のロゼワインが差し出され皆さんと乾杯しました。日本を出発して以来、気を抜きたくなかったという理由でアルコールをずっと我慢していました。パリに到着した日も実は飲みたかったのですが、ホテルに戻った時間も遅く、翌朝も早く、午後からはスクーターでの移動という予定だったので控えていたのです。もちろん大人なんですが、そんなところでも小学生のような夏休みが始まっていたというか(笑)。
毎日朝ごはんを食べ終えた後は、地図を広げて知人にアドバイスをもらいます。こちらでは一般的なミシュランのマップでその日走るルートを確認し、走る道と通りかかる大きな町の名前をメモしてベスパのハンドルに貼り付けておきます。そうしてから滞在している村を出発。まずガソリンを入れて目的の町を目指します。
町ではベスパで軽く流し、気になるところを見つければ端に寄せて止めます。道中も気になるものがあれば端に寄せて止めるようにしました。もしも行き過ぎてしまったら、Uターンをして戻ります。そして一方通行なら押して通ります。
もしも不安になれば、地図でまた確認をして行きたい方向のルートナンバーを探して進むだけ。村の中は大凡速度も制限されているので、人々の暮らしの風景を眺めながら抜けて行きました。
お土産が増えればベスパのシート下かトップケースにしまえるので、色々なところを見て回る移動手段として考えるとスクーターは本当に便利だと感じました。大きい排気量のオートバイであれば移動のアベレージが上がり、シフトチェンジしながら走るという楽しさもより一層味わえるとは思います。ですが小回りを効かせようと思うと、やはりスクーターの方が身軽だと改めて感じました。
初めのうちは分かりやすい国道を使って移動をしていましたが、次第に国道から外れた道の方が面白いと分かり、なんとなくの方角だけで走ってみる事に方針変更です。
牧草地帯や森林地帯を走った後は必ずどこかの小さな村があり、どの村でも感じたのが中心部にだいたい教会があるという事。
それにパリ市内は綺麗な建物であったり大きな建物が多いですが、私が見てきた村の建物は二階建ての一軒家が多く、石造りでその上から土が塗られ、ところどころ剥がれていたりしました。
また石の塀があったり、柵があって花が植えられているなど、日差しが強ければそれらに反射して町や村は明るい印象となります。それこそ眩しくてサングラスが手放せないくらい。
それから今でこそ舗装路になっていますが、ところどころ剥がれたアスファルトの下に石畳が顔を見せています。路地裏に入れば昔からの石畳が残っていて、ハンドルが暴れるほど走り難かったです。凹凸もそうですが、長い年月で磨かれた石畳の表面は雨に濡れると滑るので、そんなところにも走り難さを感じます。
このような道路がまだまだ残っているからこそ足回りの柔らかいベスパ、高い操安性のハイホイールスクーターやフロント2輪タイプのスクーターが支持されるワケで、石畳に路面電車のレールが加わりもすればそうしたスクーターが欲しくなるのも当然だと実際に走ってみて分かりました。
また行きたい! 次はベスパでヨーロッパを周遊!?
最終日。レンタルベスパを楽しめるのも今日までです。返却は初日に借りたパリのホテルなので、ここまでの移動を考えると延長依頼も考える必要がありそうです。もしかするとそれでも遅れる可能性がある事から、帰路では高速道路を利用する事にします。
フランスの高速道路は125ccでも利用出来るのですが、速度表示は110km/hや130km/h。そうなると流れに乗れるかという点で不安になりますが、意外と周囲のクルマはゆとりを持って追い越してくれるのであまり怖いという感覚はありません。
高速道路の入り口で自動発券機から通行券を受け取り出発。ここからは"Paris"という文字の方向へ進んで行きます。前日からの寝不足やランチによる満腹感も手伝って、眠気に襲われながらひたすら走ります。
ペースを上げればガソリンの減りも早く、海外では初めてサービスエリアへ寄る事に。慣れない土地なのでガソリンに関しては無理をしないようにと思っていたのですが、実は高速走行前にガソリンスタンドに入るタイミングが無く、途中ペースを落としてどうにか給油まで持ちこたえたという状況を経験したばかり。
その時は村の中にある売店がガソリンも売ってますといった類のところで、給油出来た事に安堵しましたが、残量が600mLしかなかった事実に驚きました。もしもその売店が閉まっていたり、ガソリンを切らしていたらと思うとどうにもならなかったワケです。そんなこともあり、高速道路上でのトラブルは避けたかったのです(笑)。
さて、サービスエリアに入ると真っ先に給油です。しかし防犯カメラで見られていると分かっているのですが、支払方法が分からず。ガソリンを入れるところにはそれらしき物も無く、目の前のお金が払えそうなカウンターがある建物はシャッターが閉まっています。
とても困っているところ、オートバイに乗った人がやってきたので聞いてみる事に。隣のレーンの自動車に給油している人よりも、なぜかオートバイに乗っている人の方が聞きやすかった心理(汗)。
聞いてみたところ、数百メートル先にある売店やレストランが入っている建物で支払えるとの事。「そんな離れたところでの支払いなんて分からない!」と思いながら、時間も無いので急いで向かいます。
売店の商品を一つ一つ見て行きたい気持ちを抑えつつ、興味のあるマスコット的グッズが無いかだけをチェックして直ぐに出発。ちょうど日も沈み出して冷えてきたので、ここであるだけの防寒着も身に着けました。パリのホテルまではまだまだ100km近くあります。
とにかく走って行くと、陽が落ちる寸前でようやく料金所が現れました。数あるレーンの中でどれに入るか迷いつつ、一か八かで他のクルマが並んでいない空いているレーンに入ったところ、そこは無人でクレジットカード払いのみのレーンでした。
当然、料金所は支払いが完了したら目の前のバーが開く仕組みです。通行券を機械に通して、クレジットカードを差し込みます。しかし読み取れないのか、クレジットカードを受け付けてもらえません。何度やってみてもダメ。
それで説明書きをよく見てみると、私のクレジットカードが使えないレーンだったのです。通行券を戻すボタンも無く、次にやれることは係りの人とやり取りが出来る赤いボタンを押すのみ。
言葉が分からないのにこのボタンを押すのは勇気が要りましたが、押すしかないので押します。まずフランス語で話しかけられ理解できず。次に英語で話しかけられるも、達者ではないためイライラされて怒鳴られてしまいました。それでも理解できたのは、今いるところから右か左のレーンに行けという事です。
しかしレーン進入後なので、数メートル下がってから数十メートル右か左のレーンに移動をしなくてはなりません。日本の感覚だと「高速道路上でそんな事をしていいのか?」と悩みますが、意を決して他の車が多く入ってくるレーンに割り込みました。
そこでは先ほど私がイライラさせた係員から支払方法を聞かれたので、今度は現金で支払うと伝えてこの局面を乗り切りました。そんなワケで、クレジットカードですんなり通過するつもりの料金所だったのに30分くらい足止めされてしまい、すっかり日が暮れてしまいました。
その後、そのまま乗り入れられる外環状道路に左回りで入れば直ぐに凱旋門近くの出口に出られるハズでしたが、その分岐点に気付かず右方向へ入るという大失態。そのためひたすら遠回りをしながらルーブル美術館周辺まで来てしまい、地図で確認しながらシャンゼリゼ通りへと向かい、そのまま凱旋門を目指しました。
車のヘッドライトに照らされながら混雑したパリ市内を走り抜け、シャンゼリゼ通りの先に見える凱旋門が見えた時には無事に戻ってきた気持ちで一杯。本気で泣きそうでした。
それでも数日間と言う短い期間ながらベスパでのフランス旅行が終わってしまう寂しさがあり、その気持ちは複雑でした。
そしてせっかくこの土地の事情も分かってきたのだから、また行きたいという気持ちが芽生え、いつかヨーロッパをベスパで周遊してみたいとまで思うようになっていました。
今回はここまで!
レンタルで楽しむフランス旅/後編をお届けしました。前回の前編と合わせて、土田さんの奮闘ぶりや感動した事などがダイレクトに伝わってきたんじゃないでしょうか?
前回も触れていますが、土田さんの体験談には海外ツーリングのヒントとなりそうな事が沢山ある様な気がします。そんなところも刺激的だったりしますよね!
それでは次回の「ワールドワイドにベスパでRUN」も、どうぞお楽しみに!!
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