BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
今回の「ワールドワイドにベスパでRUN」は、土田さんの欧州旅・第2弾。モデナからフィレンツェへと移動して、レンタルベスパでポンテデーラを目指します。そしてまたフィレンツェと戻り、現地ベスパクラブとの食事会を予定しているとの事。一体どんな旅を楽しまれたのか気になりますね!
フィレンツェ目指してイタリア電車を初体験!?
さて今回は前回に引き続き「EU trip2015・第2弾」として、土田さんによるレポートをお届けします。前回は現地でのツーリングレポートを中心にプライベートミュージアム訪問など、なかなか盛りだくさんな内容でしたが、今回もたっぷりな内容で寄稿していただいてます。それではレポートをじっくりご覧ください!(以下は土田さんによるレポートになります)
※記事中の情報や写真は2015年当時のものとなりますのでご注意下さい
一夜明け、この日はフィレンツェに向かいます。フィレンツェに着いたらレンタルショップでベスパを借りて目的地であるポンテデーラを目指しますが、フィレンツェまでは列車での移動です。そのため昨晩のホテルでは下調べを頑張りました。実はイタリアの列車は初めて体験するので、スマートフォンを駆使してあれこれ調べておく必要があったのです。まあ、もっと早い段階で下調べをするとスマートかもしれませんが、このように現地で色々調べられるというのは便利な時代である事を実感します。
そして調べてみた結果、イタリアでの列車の乗り方は日本と大きく違っている事が分かりました。しかも違反するとその場で罰金もあるという事なので、調べておいて良かったです。やはり正確な情報を事前に入手する事は、慣れない土地を旅するのにとても重要な事だと再認識しました。
ホテルをチェックアウトした後は、モデナの駅まで徒歩移動です。明け方まで土砂降りだったので、スーツケースを引いての移動に少し心配もあったのですが、タイミングよく晴れてくれて本当に良かったです。駅に到着したところでボローニャまでの切符を購入。購入した切符には乗車日時の記載がないので、駅構内に設置されている自動検札機で日付などを打刻します。そして、しばらくしてやれた緑色の列車が到着しました。こういう慣れない土地での初めての列車は本当に緊張します。目的地へ向かう列車は定刻通りに来るのか、言語がわからないので間違いなく行きたい方向の列車に乗れるのか、列車内で盗難などのトラブルに巻き込まれないか、検札のため車掌が車内を回ってきたときに問題なく確認が完了できるかなどなど。本当に緊張する材料ばかりです。それに外観が薄汚れていたりすると、それだけで気持ちも下がります。
ボローニャまでは少々時間がかかるようですが、列車の座席は満席。それでも運良く、扉近くの折りたたみベンチのある場所に席を確保する事が出来ました。変に混み合っているところでスリに遭っても嫌だなと思っていたのですが、その扉近くの空間では軍人さん2人との相席でした。軍人さん......良かったのか、安心していいのか複雑な気持ちでした。暫くして終点のボローニャ駅に近づいた頃、黒人の男女がこの空間に現れました。一人はそのまま先頭車両の方向へ移動。そこへ車掌さんがやって来て、言葉は分からなくても仕草から車掌さんは切符の確認のために回って来たのだとすぐに分かりました。私は朝が早かったせいで眠くなってうとうとしていたところだったんですが、切符の提示を求められすぐに打刻済みの切符を見せました。しかし先ほどやって来たばかりの黒人女性は、車掌さんが「切符を見せなさい」と言っても見せない様子。目の前で次第に口論となり、ついには無賃乗車を認め、先頭車両の方へと連れて行かれてしまいました。私はただただ唖然とするのみでした。ボローニャの駅に到着し、ホームに降りると、警官が待機していたようで先ほどの二人組はその場で取り押さえられ事情聴取が行われているようでした。`
ベスパを借りて、いざポンテデーラへGo!
ボローニャからはユーロスターイタリアという新幹線のような列車で移動します。そちらは前夜のホテルでスマートフォンから予約をしたので、出発の時間を待つのみです。とりあえずボローニャの駅で次に乗らなくてはいけない列車の目処が立ったので、駅の外へ出てみる事にしました。主要都市の駅の向かいにはお土産屋さんが多く入った建物があるので、朝ごはんとお土産を見て回る事にします。
乗り物ではベスパとフィアットが"顔"とも言える国なので、それらをモチーフにした置物、マグネット、ステッカー、ミニカー、Tシャツなど、数多くのものが並んでいました。私も写真を撮りながら、気に入ったものを幾つか購入。そろそろ時間も迫って来たところで、フィレンツェ行きのユーロスターイタリアが到着するホームへと向かいました。
フィレンツェには日本で計画していた時刻より早く到着する事が出来ました。このフィレンツェでは、レンタルバイク屋さんでベスパを借りるという予定があります。予約していた時刻よりも2時間ほど早く到着するというのが分かっていたので、ボローニャ駅の時のように駅構内のお土産屋さんでベスパなどをモチーフにしたお土産を探しながら時間を潰し、1時間前倒しでレンタルバイク屋さんへと向かいました。
今回利用したレンタルバイクショップは、モデナのFabioさんに紹介してもらったTuscany Scooter Rentalというところです。駅からは徒歩10分ほどと、とてもアクセスのいい場所にあります。鍵を受け取った後、レンタル開始までの手続きや説明は英語でのやり取りです。借りたバイクの操作方法から始まり、返却時にはガソリンを満タンにする必要があるので最寄りガソリンスタンドの地図をもらったり。それから進入禁止エリアを示した地図ももらい、イタリアの交通ルールなどまで一通り説明をしてもらいました。私はそれほど英語が出来るワケではなく不安でドキドキでしたが、特に問題もなく無事に借りる事が出来ました。
さて自分の荷物をバイクに積み込んだら、今夜の宿があるポンテデーラに向けて出発です。フィレンツェからポンテデーラまでは約60km。今回レンタルした125ccのベスパでも数時間で到着出来る予定です。ただ走り出すその前に、日本から持ってきたミラー部分に固定出来るスマートフォン用のマウントホルダーを取り付けます。これによってスマートフォンを常に目に入る位置でナビとして操作出来るようになります。それと日本から用意したポケットWi-Fiルーターもイタリア国内で問題なく使えるので、必要に応じてインターネットの検索機能と併用しながら使います。
フィレンツェからポンテデーラに向かう道程は、分かりやすい国道が延びているのでその道路を利用します。フィレンツェの町を出て山を越えて行くと、トスカーナ地方のイメージでよく見られるいくつもの丘をなした景色が広がります。この日はとても天気が良く、ブドウ畑やオリーブ園などが広がる丘を視界に入れながら走る事が出来ました。ところがポンテデーラに到着する頃、なんとWi-Fiの調子が悪くなり電波を拾わなくなってしまいました。ナビを頼って宿まで辿り着こうと考えていたので、その計画がすべて崩れてしまったワケです。どうにかポンテデーラには到達出来ましたが、安堵感が半分、宿泊施設を探すための通信が出来ないという焦りも半分。しかも降り出した雨が次第に強くなってきたので、雨宿りをしながら策を練る事にします。
念のため必要箇所は手帳に書き記しているので、それを頼りにポンテデーラの街行く人に宿の場所を尋ねます。1人目。宿泊施設名を言ったり見せたりしても分からないとの事。2人目。何かイタリア語で「この道を進んで......」というような事を言っているようですが理解出来ず。3人目。サンドイッチの買出しに来ている警官に聞いてみましたが、分からないというような仕草。4人目。宿の名前は分からないながら「通りの名前が一本向こうの大きい通りだから、その通り沿いにあるハズ」と説明され、その事は理解出来たので探してみる事に。しかし住宅が立ち並ぶこの通りにそれらしき建物も看板も見付ける事が出来ず、前から歩いて来る初老の方に聞いてみようとしたところ「こっちだ! ほらおいで、入りなさい」と門を開けられました。なんとここが予約していた宿のようですが「ここはStanza Bellaria?」と聞いてみても、聞いているのか聞いていないのか「とにかくバイクも中に入れて入りなさい、ようこそ!」と。すると家の中から奥さんも現れ、とても歓迎されている様子。その流れにこちらは驚きながらも、案内されるがまま2階へと上がります。
日没前のピサ観光で斜塔と海を初体験!
ところで宿泊施設を事前に探して予約をする際、私はBooking.comをよく利用します。今回は宿泊の翌日に予定している博物館からの距離が最も近くて、しかも安価に宿泊する事の出来るこのStanza Bellariaを利用する事にしました。この宿は目立った看板も無いゲストハウススタイルで、どうやら建物の2階部分を宿泊所として貸しているようです。2階には数部屋あって、各部屋それぞれがホテルの一室のように宿泊者に提供されるというものでした。
強いイタリア訛りのある英語をがんばって聞いてみると、どうやら2階部分に電気が来ていない様子です。なんとか外の光で部屋を灯しているとの事ですが、一体夜はどうするのか? そしてさまざまな連絡が必要になりそうだというのに、ここにはWi-Fiもないとの事。日本から持ってきたWi-Fiの調子が悪く、完全に電気に頼った旅行をしている自分にとってこれ以上ないほどの痛手でした。
何はともあれ細かい事を考えても仕方がないのと、一時的な雨も上がったので、明るいうちにピサへ向かう事にしました。先ほど走ってきた国道に戻り、西へ西へと進みます。ピサは大きな街なので、道路標識に方向が書いてあるから向かうのは容易です。そしてピサに入ってからは中心地を目指して走ります。すると中心地の方向や斜塔の方向が記載されている標識を見つける事が出来るので、それを頼りに進みました。
そうこうしていると、そろそろ夕食の時間です。昨日Ilarioさんに教えてもらったお店を探してみましたが、見付ける事が出来ません。そこで観光客向けと思われる、フリーWi-Fiを提供しているイタリアンレストランを利用。なので久しぶりに通信できる安堵感がありました。完全に頼り切っている証拠です(笑)。
ところで食事をしながらポケットWi-Fiをいじっていたら、なんと復活。おかげでこのレストランでおなかも満たされ疲れも取れ、先行きの不安要素も取り除かれたので、体力的にも気持ち的にも安心出来ました(笑)。
夕食後はレストランを出て斜塔へ。斜塔前の広場では、テレビでよく見るような光景が多くみられます。人々が塔を倒れないように支えているような構図で写真を撮るというアレです(笑)。そして道にはさまざまなお土産の露店があり、路上で自撮り棒を観光客相手に販売する黒人の姿も多く見る事が出来ました。
この斜塔前の広場は観光だけではなく、人々の憩いの場でもある事をこの場所に来て知りました。大きなシャボン玉を作ってそれを追いかける子ども達や散歩する人々などがいて、広場にはサンドイッチ屋さんなどもあります。そのサンドイッチ屋さんに資材を運ぶ手段として、50ccのアペのバンが使われていました。アペとはベスパ製造メーカーであるピアッジオが生産する3輪カーゴトラックで、こちらでは日本の軽トラックのように人々の生活に密接な道具なんだと改めて実感しました。
日没まではまだ時間があるため、もう少し足を伸ばして海まで行ってみる事にしました。イタリアの海はもちろん初めてです。どのような海なのか想像し、期待しながら向かいました。ピサの斜塔から一番近いマリーナ・ディ・ピサに到着。想像していた砂浜ではなく、こぶし大の白い石が敷き詰められた浜でした。海沿いには商店やホテルが立ち並んでいましたが、騒がしいほどの賑わいはないのでそれほど人が集まる観光地ではないのかもしれません。なので海に面したこの場所での滞在も良いなと思いました。
朝市を楽しんでからいよいよ博物館に突入!
陽が完全に沈んだところで、ポンテデーラの宿泊地へ戻ります。しかしバイクのガソリンは残りわずか。ガソリンスタンドを見つけ次第給油したいところですが、日本と違って次のスタンドまでの間隔が広いためガス欠しないか緊張します。走っているとガソリンスタンドを発見。給油のために入りますが、使い方がイマイチ分かりません。無人のセルフ店のため店員に入れてもらう事も出来ません。そこにいた別のお客さんに助けてもらおうかとも考えましたが、向かい側にいるのは黒いマセラティに乗る笑顔が素敵なお兄さん。一緒にいた女性とやや喧嘩気味だった事もあって、なんだか声をかけ難い空気です。しかし困ったそぶりの日本人に気を利かせてくれて、残りの余った分を入れて良いよとノズルを差し出してくれました。少し驚きましたが、その行為に甘えて給油を始めたところで「またね!」とマセラティのお兄さんは先に出発。無事給油を終え、宿に戻る事が出来ました。
宿泊しているStanza Bellariaは食事が付かないため、翌朝は近くのカフェに行きました。相変わらずイタリア語を喋れませんが、要領とそぶりを覚えればクロワッサンとコーヒーくらいは口にする事が出来ます。食事を終えたら、駅へと向かいます。そして駅の裏手にある駐車場にバイクを止めてから駅の表側へ。駅正面にはテントが並べられ、ハムやチーズ、野菜、雑貨などを売る朝市が行われてました。それらを見学しつつ、ポンテデーラ駅のホームへ向かいます。このホームからはピアッジオのマークが入った給水塔を見る事が出来るので、ピアッジオ好きにはたまらない撮影スポットになってます。もちろん私も写真を撮りました。
一度宿泊施設に戻ってチェックアウト。荷物を預かってもらい、いよいよポンテデーラ駅の裏手にあるPiaggio MUSEO(博物館)へ行きます。開館までは若干早めの到着だったので、門をくぐってすぐ左手にあるピアッジオが昔作った戦闘機を見学。そしてその後ろにある立ち乗りのゴンドラも見学します。
開館時間になり、正面にある博物館のマスコットにもなっている列車を見ながら中に入って行きます。今でこそピアッジオはベスパを始めとするスクーターで有名なメーカーですが、自動車部門、航空機部門もあり、その昔は船や列車も作っていた工業メーカーです。館内に入るとスクーターが展示されているフロアがありますが、その前に資料が展示されているフロアを見学します。そこはピアッジオの歴史、ベスパの歴史が資料と共に展示されています。
他の見学者がいないうちに、写真を取りながら館内を一通り見て回ります。それからお土産コーナーにいる係りの方にベスパワールドクラブのMarco Manzoliさんをお願いし、自分がベスパクラブ東京のメンバーである事を伝えつつ昨日Irarioさんに書いてもらったメモを見せます。
残念ながらMarcoさんはバカンス中だったため、代理の方が館内を案内してくれました。既に一回りして予備知識があるとはいえ、各コーナーを端から丁寧に説明してもらうとより理解が深まります。何よりとても丁寧に案内してもらえた事が嬉しかったです。最後に気になる車両(個人的には50年代や60年代のアペ、そして50年代のセイジョルニやコルサを始めとするスペシャルマシン)を時間ギリギリまで細かくチェックし、今回お会いできなかったMarco Manzoliさん、Ciuseppe Cauさんに次回会える事を期待してポンテデーラを後にしました。
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