BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
前回の最後で予告した通り、今回は台北でのツーリングレポートを土田さんより寄稿いただきました。なかなか海外でのツーリングは経験し難いものだと思いますので、台湾でどのような景観を楽しめたのか、食のほうだって気になってしまいますよね。それでは満足台湾ツーリングの第2弾、いよいよスタートです!
いよいよ台北をツーリング! ベスパ仲間達との再会も!!
さて今回は、いよいよ土田さん達が参加した台湾のベスパ仲間達とのツーリングレポートです。どうやらGT200を借り出して、同行の井上さんとのタンデムで台北のツーリングスポットを駆け抜けたようです。それではレポートの第2弾、早速行ってみましょう!(以下は土田さんによるレポートになります)
※記事中の情報や写真は2015年当時のものとなりますのでご注意下さい
初日は台南から台北まで移動して、それぞれのエリアで再会を楽しんだりお店を見たり。特に台北では21時にチェックインしてから夕食を楽しみ、ベスパの部品専門店と友達が始めたお店を訪ねる事も出来ました。そんな風に可能な限り詰め込んだスケジュールで、台湾での1日目を充実の内容で駆け抜けてからの就寝。
そして朝。ホテルで朝食を済ませた後、待ち合わせ時間にホテルのロビーへ向かいました。既にJasonさんとLewisさんが迎えに来てくれていて、私とJasonさんはヘルメットを持って徒歩5分のところにある彼の住むマンションの地下へ。すると地下駐車場には彼のベスパが置かれていて、GT200の鍵を手渡してくれました。この日一日、台湾を動き回るのに使わせてもらいます。GT200は乗り心地もさる事ながら、二人乗りをしても十分なパワーと操作性を備えているので、台湾の交通状況下でも彼らのペースに着いて行く事が出来るでしょう。
さてJasonさんとベスパでホテルに戻り、井上さんとLewisさんも一緒に彼らの仲間達との集合地点を目指します。まだ台湾に慣れていない事もあり、井上さんは市内の移動中はパッセンジャーシートです。写真を撮る事も好きらしく、街で見かける日本では見られない光景や看板などを撮っていました。この日の工程は台湾の北東方面、多くの猫が住んでいる猴硐(ホウトン)こと猴硐猫村(ホウトン マオツゥン)、アニメ映画でもおなじみの九份(ジョーフェン)、漁港があり台湾の築地と例えられる基隆(キールン)......という大まかなコースが伝えられました。当初は台湾の温泉をリクエストをしようと考えていましたが、彼らの用意したコースも台湾ならではのポイントが多く押さえられているとイメージ出来ました。とは言え移動距離もかなりあるな~と思いながら、少し楽しくなってきました。
スクーターも多い町中を抜け、開けた大きな道路を走って行くと、やがて木々の多い道路に。台北周辺はそのような雰囲気の道路が多く、混雑する中心部を抜ければあっという間に高い建物が減って山道となって行きます。東京に住んでいると広大な関東平野が広がっているので、なかなかすぐに台北のようなツーリングスポットにはアクセスする事が出来ません。彼らはそうしたスポットが身近な場所に生まれ育っています。山道を走り、やがて人々が多く集まっている白色に緑と青の配色の看板に"全家"と書かれているコンビニに到着しました。
全家は日本でもお馴染みのコンビニで、見ればすぐに思い出されます。そんな日本でも馴染み深い物にめぐり合うと、どこか安心感を覚えます(笑)。そのまた隣にはこちらも日本でおなじみの7-11が。競合どころの話ではなく、隣り合わせの接近戦です(笑)。このコンビは、多くの趣味人達の待ち合わせスポットになっていました。自転車でこれからツーリングに出かける人達、大排気量のオートバイグループ、派手なカスタムが施されたスクーター達、そしてイタリアのベスパで集まる我々。
ベスパの仲間が到着するまでの間に、集まっている他のオートバイなどを見て回る事に。一番目に止まったのが台湾メーカーのスクーターに施された派手なラッピングです。エナジードリンクや有名キャラクターのラッピングが施され、なによりも目に止まります。どのスクーターも抜けの良い、それでいてノーマルのような地味なマフラーを付け、足元にはハイグリップタイヤを履いています。そして派手なグラフィックのフルフェイスを多くチョイスしていて、それらを見ていると「これから走りに行きます!」という感じが漂ってきます。
ところが出発前にスクーターへ乗り込んだ彼らを見ていると、お国柄かまだまだ蒸し暑いという土地柄か、パジャマのような服を着ていたり、半袖半ズボンにスニーカーという姿もチラホラ見受けられました。そして自転車のグループ、大型バイクのグループも出発するころにはベスパの仲間達も集まったようです。
Takeshiさんを始め、久しぶり再会する方々と挨拶を交わして片言ながら近況を報告。時にはスマートフォンを見せて「コレは?」と、インターネット上で聞くタイミングを逃してしまっていた事などを聞いてみたり。お土産を渡したり、クラブのステッカーなどのグッズ交換をしたり。ここに集まった乗り物にも興味がありますが、実はそっちのけでそうした交流会の時間のほうが多かったです。彼らが乗って来たベスパはクラシックベスパを始め、オートマチックベスパと多種多様の車種が集まりました。カスタムされたベスパの中で一目置いたのは、水冷化ベスパ。元々空冷エンジンのスモールフレームベスパを水冷化までさせた物は日本でもなかなか見る機会が無く、綺麗に仕上がっているのでとても関心しました。
現在台湾で試験的に始まっている電気スクーターですが、各所にバッテリーのステーションが用意されていて、バッテリーが無くなったらステーションにあるバッテリーと入れ替えるため、車体への充電が必要無く、いつでも気軽に出かける事が出来るというものです。そのバッテリーは車体のシート下に2本収納されています。1本あたりはとても重たいものですが、走り始めは非常に滑らかで、アクセルを開けていくと力強さと速さも感じられるほど。起動は手元のキーホルダーのようなものでON/OFFし、バッテリーのゲージも表示されるので、もうバイクそのものが身近なスマートフォントのようにも感じられました(笑)。井上さんも勧められ試乗していましたが、出足も滑らかなセッティング+坂道でも力強い走り、それにより台湾の交通事情でも流れに乗って行けるので、電気スクーターに馴染みの少ない日本人でもなに不自由なく扱える様子でした。
全員の集合が完了したようで、いよいよ出発です。ここからは井上さんに運転をバトンタッチ。台北の中心部からは既に外れているので、"スクーターの混雑"はありません。日本と同じように飛ばしたい時は飛ばす彼らですが、開けた山道では他の車(観光バス、自転車のグループなど)に配慮して飛ばす事なく流れに乗って行きました。そのため初めて台湾で運転する井上さんも「これなら」と初海外ツーリングを楽しんでいる様子。
山道は空気も綺麗で天気も良く、前を走るTakeshiさんの彼女さんがこちらにカメラを向けて写真を撮ったり、こちらも前を譲ってもらってTakeshiさん達を写真に収めたりと、台湾でのマスツーリングの道中も和気藹々としていました。
まず訪れたのは十份(ジューフン)。私たちはオートバイで訪れていたので駐車場に止め、基隆河(キールン ガ)の向こう側にある駅まで吊橋で渡ります。この地はかつて炭鉱によって栄えていたそうで、吊橋の柱に当時の様子を伝える彫刻が施されています。今回は体験しませんでしたが、当時使われていたトロッコに乗り換えて炭鉱を見学する事も可能になっています。
バイクで山道を走り、十份に近づくにつれ見えてくるのが空に数多く浮かぶ気球(?)のような物。広告の気球(?)と思わせる物体ですが、実は気球状のランタンに筆で願い事を書いて空に飛ばすというものだったりします。元々は旧暦で、一年の最初の満月の時に行っていた行事"溪天燈節"がいつでも体験出来るようになったのだそうです。
この十份はとにかく商店と線路の距離が近く、柵の無い所もあり、ここを通る電車も旧型なので日本ではないアジアに来たと感じる事が出来ます。そして線路上から飛ばすランタンは誰でも体験する事が出来るので、お金を払って思い思いの願い事を書き飛ばしている光景を多く目にしました。
バイクに乗っている時は風に当たっているのでそうでもありませんが、歩いているとさすがに暑いので彼らから"花生捲+冰淇淋"を勧められました。これはピーナッツ巻きのアイスクリームで、ピーナッツのかたまりから削りだした物をアイスクリームとパクチーでクレープのように巻いた物。台湾旅行のお馴染みメニューの一つでもあるこのスイーツは、バニラアイスとピーナッツまでは味を想像出来ますが、そこにパクチーが入った時点で最早異国を訪れた味です(笑)。私はパクチーは苦手ではありませんが、この組み合わせは少し苦手でした(笑)。それでも食べていくうちに慣れて美味しくなるんだろうなと思いながら、その味を何度も確かめつつ食べていました。
十份は観光地となっているので、お土産屋さんも数多く立ち並んでいます。私はお土産屋さんをチェックするのも好きなので、色々とお店を回りながら見て行きます。今回、私が台湾を訪れる約一ヶ月前に台風が上陸し、多大な被害をもたらしました。その際に台風で飛んだ看板がぶつかった事で傾いてしまった、その姿が可愛らしいと話題になった赤と緑の並んだポストがあります。台湾のお土産屋さんでは台湾のサンダルをモチーフにしたグッズやマグネットをよく見ますが、このポストをモチーフとしたマグネットを見かけたときはなによりも行動が早いと思い、思わず買ってしまいそうになりました(笑)。
台北の美味しい&絶景スポットを巡ってベスパが走る!
再びバイクを走らせ猴硐猫村を目指します。......とその前にもう一つ、台湾ならではのスイーツ"冰品(ビンピン)"カキ氷をいただきます。台湾のカキ氷はさまざまなトッピングが楽しめるスタイル。お店に並んでいるフルーツやシロップを自分好みにチョイスしていく事が可能になっていて、その量も多いんです。さすが南国の台湾で作り出される事はあるなと思いました。
今回立ち寄ったのは雙溪(シュアンシー)駅近くのお店。お店ではお子さんが照れながらお手伝いをしていて、注文して出てきたのはマンゴーとピーナッツなどがトッピングされたもの。私達が注文したのはトッピングの上からさらにカキ氷が降り積もったものなので、中からトッピングをかき出して食べていきます。店先に並べられたテーブルに私達グループは陣取って、時折他のトッピングと交換したりして楽しみました。やはり台湾で食べるマンゴーは、とてもみずみずしく甘くて本当に美味しいです。
そして向かった先は猴硐猫村。ここは猫を保護し、猫達が生活の中心となっている村なので、猫好きにはたまらない有名な所です。井上さんは大の猫好きという事もあり、今回のコースに一部取り入れていただいたようです。
鉄道の玄関口は猴硐駅なので台北から電車でも訪れる事は可能ですが、バイクや自動車で訪れるとまず目に入るのが標識です。猫出没注意と表記されている看板には猫......飛び降りて出てくる猫が描かれていて、この辺りの猫の多さを本当に感じさせられます。
それもあって台湾でお馴染みのパイナップルケーキは猫の顔の形になっていたり、猫のおもちゃが売られていたり。何よりも、まず線路の反対側へ向かう通路の階段でくつろいでいる猫、お土産屋さんで猫のぬいぐるみの棚の横で一緒になって寝ている猫、カウンターの上で寝ている猫、観光客に写真を撮るのに取り囲まれても動じない猫、お土産の上で寝ている猫......本当に人慣れしていて猫が生活の中心となっている村でした。とは言え、ここにいる猫は野良猫ではなく、去勢を行い一匹一匹管理されている、まさに住人。その猫達によって多くの観光客を訪れさせ、猫自身が自分達の生活を成り立たせているとさえ思えてしまうほどの台湾のスポットでした。
その後一度九份を通過して不厭亭(ビュエン ティン)という展望台へ。高い尾根沿いに作られた道で、到達した展望台から見える景色は、台湾の山深さを感じさせます。遠くには海も見え、海岸からの高低差もあり、季節や時間帯によってさまざまな表情を見せてくれる地元の人にも人気のスポットなのです。
今回は雲が多く、そうした景色を見る事は出来ませんでした。そもそも公共交通機関ではなかなか辿り着くのが難しい場所なので、やって来られたのはバイクの強みでもあります。もしも次回またこの場所まで来る事が出来るのなら、季節や時間帯で異なる台湾の幻想的な景色に巡り会えたらと思うようにもなってきました。
このように台湾にも要所要所に観光スポットがあるので、バイクでの移動はフットワークが軽く、一日の満足度満腹度も格別です。それに彼らの案内があるからこそ自分達ではなかなか知り得ないところまで知る事が出来たり、より理解が深まったりするのもとてもありがたい事だと思います。
今回、最後は台湾の観光スポットとして有名な九份を訪れたところで時間切れ。残念ながら、漁港の町でもある基隆まで足を伸ばす事は出来ませんでした。しかし、どのスポットもそうですが一度目の訪問で発見や感じる事があっても、もう一度訪れ足を伸ばしたくなるのが台湾の魅力だと思います。
また、食べ物も短期旅行ではとても食べきれないほどの美味しいものや気になるものが次々と現れ、やはりそちらもまた行きたいという気持ちにさせられます。何よりこのようにベスパの仲間を通じて台湾を訪れると、訪れるたびに新しい仲間との接点が生まれて新たなコミュニケーションの輪が広がります。それらすべてを含め、台湾をリピートしたくなる要因が多くあるのです。
陽も沈んだ頃には台北市内まで戻って来ましたが、今回のツーリングは道中流れ解散というスタイルだったので、ホスト役のJasonさん&Lewisさん、その他数名になっていました。
時間調整のために立ち寄ったタイのようなスタイルのジュース屋さんで休憩をした際、そこでも話は弾みます。仲間の中にいたシャオジュエンさんが今回乗ってきたのは、日本でも人気のホンダ・グロム。ベスパではありませんが、彼もれっきとしたベスパ乗りで、グロムは最近のお気に入りの様子。日本でも人気の乗り物だけに、台湾でも好んで乗られている姿を見るのは嬉しい事です。
ホンダという事もあり彼のグロムには日本でもお馴染みのユルキャラ、くまもんのステッカーが貼られています。それに彼は日本のロックバンドも好きで良く聞いているとの事。ヘルメットに貼られたステッカーで趣向が垣間見え、日本がとても好きだという事が良くわかります。
ところで、昨夜お会いしたショーアンさんはお店の業務が忙しく夕方から合流。小龍包のお店で再集合をし、大きなテーブルを囲みながら台北最後の夕飯を彼らと共にしました。
今回夕飯に訪れたお店は、台北駅から徒歩30分ほどのアクセスが良い立地にある盛園絲瓜小籠湯包(シュンユエンスーグアシャオロンタンバオ)というお店。台湾を訪れると夜市で食事を済ませたり、ガイドブックに載っている外国人でも安心して(?)入る事の出来るお店に行きがちですが、このお店は台湾の人達も食堂のような感覚で入るお店のため何よりも値段が良心的。それにテーブルから厨房の様子をガラス越しに見られるので、職人さん達が次から次へと小龍包の具財を皮へ乗せ包み込む手の動きを直に見る事が出来ます。
その光景は正に圧巻です。そうして出来上がった小龍包は、8個入りで約500円。味もとても美味しく、ボリュームもあります。一人やカップルで訪れてもう一品、汁物などを食べたらお腹がいっぱいになってしまうほどの量。なので今回のように大勢で訪れ、皆で取り分けて食事をするほうが色々な台湾料理を楽しめるので良いなと感じました。
そしてこの日最後に、リクエストをしていた豆花(トンファ)を食べました。豆花は豆乳で作るプリンのような食感のもの。カップに大きく崩された豆花が入れられ、果物やシロップで味付けが施されたとてもヘルシーなスイーツとして人気です。
今回は滞在していたホテル近くの"芋師傅(ユーシンフー)"というお店で食べる事が出来ました。このお店は多くのメニューがあり、一杯150円前後なので気軽にオーダー出来ます。スイーツメニュー以外にも里芋、蓮の実、大麦、白草など、健康的な食材がトッピングされたスープメニューもあるので、旅行で小腹が空いたらちょっと立ち寄ってお腹を満たす事も可能です。
台湾は暑いのでついつい冷たいメニューを頼みがちですが、温かいスープもお勧め。この日は一日中食べ歩いているため、お腹もかなり満腹。しかし最後の豆花は別腹(?)。味もしつこくなく、食感も良いため、ぺロッと食べる事が出来ました。豆花は日本の味噌汁のように地域、家庭でさまざまな味や食感があるそうです。なので人それぞれに好みもあると思うので、台湾を訪れたら是非色々なお店で自分好みの豆花を見つけてみても良いように思います。
翌朝、JasonさんとLewisさんがホテルまで迎えに来て台北の駅まで送ってくれました。次は初日にも利用した新幹線を使って台南を目指しますが、最後の最後までホストを務めていただいた二人にはとても感謝しています。
自分の生活の都合上、彼らが日本に来てもその日程すべてを案内するのは難しいかと思います。それでも可能な範囲で案内しますし、彼らもそういう気持ちで案内してくれたのだと思っています。そのような付き合い方が出来るのも、これまで彼らとの交流を積み重ねてきた結果だと感じています。
私達が台湾やその他の国を訪れる事は簡単で、彼らが日本を訪れ各地を観光するのも容易です。しかし、このように何かを通じて知り合って交流を深め、その国の風習や文化までも肌身で感じたり知る事が出来るのは、趣味に留まらずにベスパで繋がれたからだと思っています。そういう意味で彼らには本当に感謝しています。
今回はここまで!
土田さんによる台北ツーリングレポートはいかがでしたか? 台北のツーリングスポットを巡りつつ美味しいものもたらふくいただいたようで、二人にとっては大満足の旅となったようですね。
さて、2回に渡る台北編は今回で終了となり、次回はいよいよ台南へと向かうようです。台南編も、どうぞご期待ください!
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