BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
さて、いよいよ今回から土田さん達の旅レポが始まります。前回の冒頭で触れている通り、レンタルベスパでフィレンツェからベスパの生産されるポンテデーラを目指すという行程。それを現土田夫人の井上さんと共に、タンデムで駆け抜けています。今回はそのタンデムツーリングの様子をお届けします!
Day1ポンテデーラを目指してのんびりツーリング
前回はレポート本編に先がけて、海外レンタルバイクのQ&A編をお届けしました。そして今回からは、いよいよレンタルバイクによるツーリングがスタートです。この旅の主要目的地は2つあるそうで、初日の訪問先はヴィラ・レ・ブラーケ。一体どんなところなのでしょう?
それではツーリングレポートの第1弾、じっくりお楽しみください!(以下は土田さんによるレポートになります)
※記事中の情報や写真は2016年当時のものとなりますのでご注意下さい
今回イタリアを訪れるにあたり、限られたスケジュールでどこを周ろうかと悩みました。昨年末に知り合ったVespa Club
Miranoのメンバーのところにも遊びに行ってみたいですし、イタリアと言えばローマの休日で有名なローマを訪れてみたいという気持ちもあります。
でも今回は井上さんと一緒のイタリアですから、彼女のヴィラ・レ・ブラーケを訪れたいという希望に沿う事にしました。フィレンツェであれば街の中心部に建つサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂だったり、アルノ川を挟んだ丘の上のミケランジェロ広場があります。それにフィレンツェから程よい距離にはベスパの工場があるポンテデーラがあって、さらにもう少しだけ足を伸ばすと斜塔で有名なピサへも行けます。
また、このツーリングを行った2016年初頭にはVespa
Club
Valderaのメンバーと少しやり取りをしていたため、タイミングが合えば食事してみたいという考えもありました。なので今回の旅はフィレンツェを拠点とし、レンタルしたスクーターで各所を回って行く事にしました。
フィレンツェ入りはレンタル開始の前日。そのままホテルにチェックインする計画です。空港からはバスを利用してフィレンツェ駅まで移動。ホテルは南側にあるアルノ川に近いところで、駅からの距離、レンタルショップとの距離、それと価格で決めました。
観光の中心部からは少々離れてしまいますが、元々スクーターをレンタルする前提でスケジュールを組んでいるため各所への移動は問題ありません。むしろ、イタリアの人々と同じ時間の流れを満喫できるかも知れない......なんて想像をしてみたりもします(笑)。
明けてレンタル当日です。前日より借りていた別のオートバイを返却しつつ、改めて違う車種をレンタルします。前日まで借りていたのは50ccのモペッドと言うオートバイ。街の中をチョコチョコ移動するのには楽しく便利でした。
そして、この日から借りるのはベスパ・PX125Eという車両。昨年はオートマチックの現行ベスパを借りましたが、今年よりビンテージスクーターというレンタルカテゴリーが追加され、クラシックベスパも加わっていました。旅の快適さやコストに重きをおくのなら割安なオートマチックベスパを選択するという手もありますが、イタリアでの体験や楽しさをプラスαするために、敢えて今回はクラシックベスパを選びました。
旅に出る前、イタリア旅行の経験が豊富な方にフィレンツェからピサに向かう道中のお勧めポイントを聞いてみました。すると少し道は外れますが、サンジニャーノという街には古い建物が残っていてとても良いところなんだそうです。
他にも色々なお勧めスポットを教わったので、出発前に車種を変更する事も考えました。より移動をラクにするため250ccのベスパというのもありかなと。
でもバカンスシーズンだからか、排気量の大きなベスパの予約は埋まっていました。それに、より多くあちこち観て周るのも良いですが、125ccのクラシックベスパでのんびり景色を楽しみながら移動するのも気分的にマッチしそうな気がしたので、そのまま変更なしで行く事にしました。
レンタルする際にはパスポートと国際免許証、日本での運転免許証、予約に利用したクレジットカードを提示して手続きを進めていきます。そして書類の手続きを終えたところで街のルールの説明を受けます。と言うのも観光地でもあるため、街並み保護を目的に進入禁止エリア(ZLTゾーン)が設定されているんです。 このZLTゾーンと呼ばれるエリアは、そこに通じる道路の入り口に標識があり、誤って見落としてしまうとカメラでナンバープレートが撮影され、後から持ち主に罰金の請求が来てしまうというものです。レンタルバイクの場合は恐らく後日クレジットカードより罰金の引き落としがあるので要注意です。 今回利用したレンタル店では、ZLTゾーンを事細かく示したイラストマップで説明してもらえとても親切です。また返却時はガソリン満タン返しなので、近隣のガソリンスタンドへのアクセス方法が記載されたイラストマップも渡されます。 そして、いよいよ出発前の動作説明。これは事前予約の段階で「自分も日本で同じベスパを持っていて普段から乗っている」と備考欄に書いていたためか、割愛でした(笑)。もちろん初心者の方であれば、スイッチ操作一つ一つまで事細かく丁寧に説明をしてもらえます。
無事にバイクを借りる事が出来たので、早速荷物を積み込みます。今回レンタルしたベスパ・PX125Eにはリアキャリアが付いているので、そこへ一泊分の荷物を詰めた防水バックを積みます。そして私の私物が大きく多いため、その荷物はレッグシールドに背負わせるようにして積みました。
今回のツーリングはフィレンツェのホテルでチェックインして大きな荷物をホテルに預かってもらい、一泊分の荷物だけを持ってポンテデーラにあるMuseo
Piaggioの近くの宿に一泊。そして再び戻ってくるという、一泊二日のスケジュール。
もともとバイクでの移動を前提とした旅行なので、比較的荷物もコンパクトでバイク移動に適したものをあらかじめチョイスしています。
始めに訪れたのは、フィレンツェの中心部からバイクで30分ほど行ったところにあるヴィラ・レ・ブラーケ。途中で買い物をしたりしながら進んで行きましたが、軽くてコンパクトなスクーターは乗り降りから駐車まであまり気を使わずにとても便利です。
丘の上にあるヴィラ・レ・ブラーケは14世紀から残る歴史的な建物で、その歳月の中で様々な貴族たちに愛された場所だそうです。ここへのアクセスは中心地からバスかタクシーのようなのですが、今回はスクーターでナビを頼りに辿り着きました。景色を楽しみながら向かう丘の上......そこに立つその建物は本当に立派なものです。手入れの行き届いた広い庭も印象的ですし、門から建物へのアプローチは綺麗な並木が象徴的です。そしてイタリア式庭園(ルネッサンス式)や野外劇場等もあり、外のエリアだけでも観るための時間が足りません。
さらに施設の方のご好意で、建物内部も案内して頂きました。アーチ状の天井が広がる建物は声がとても響き渡るので、教会にいるような雰囲気です。当時から残るストーブ(ヒーター)はとても大きな作りですが、電気もガスも通わない時代にこの広い空間を火で暖めるために考え出されたんだろうと想像をします。
施設の方はとても親切で、各所丁寧な説明をして頂けたのでまだまだゆっくりしたいところですが、この日はピサまで行きたいので先を急ぐ事にします。連日思っていたより日差しが強く、ここでも水を買い込んで行きました。日本とは違って立ち寄りたい時にコンビニが無く、欲しい時に自動販売機も無いため、買えるタイミングで水を確保しておきます。日差しが強い中でバイクに乗っていると、気が付かないうちに脱水症状に見舞われ体力も消耗してしまうためです。
ヴィラ・レ・ブラーケを後にして、まずはポンテデーラで予約した宿(B&B)へ向かいまずはチェックインを済ませます。ルートはナビにお任せ。でも125ccを借りているので高速道路は利用できないため、高速道路と有料道路を通らないルートを検索します。
海外で使用出来るナビの場合だと通りの名前から検索する事が多く、なかなか行きたい場所までのルート検索が出来ません。なので普段から使い慣れているスマートフォンにある地図アプリでルート検索をしました。
地図アプリであれば日本語中心で操作出来るのと、住所が分からなければいきなり施設名で検索する事も可能です。それにもし住所も施設名もあやふやな場合、インターネット検索でヒットしたものをそのまま地図に落とし込んでルート検索出来るので大変便利です。
今回は一般道でのルート検索なので、最短ルートは街と街を結ぶ主要道路です。最短なので移動するにはラクですが、今回は二番目の候補として挙がったルートで行く事にしました。オリーブや葡萄畑の丘を越えて行くルートなので、のんびり景色を楽しむ事が出来そうな田舎道といったところでしょうか。
昨年は第一候補に挙がっていたルートで移動しましたが、今回選択したルートだと車の往来はあまり無く、道幅もセンターラインがあまりないエリアばかりとなります。それに主要道路の方は極力最短でアップダウンが少ない場所に道路を通していますが、今回のルートは思いっきり丘を越えていくため、アップダウンあり、程よいカーブもあります。実際、市街地を離れてからの移動は、他の車に気を使う事もなく、日本では普段見る事が出来ない景色を楽しみながらとても走りやすいものでした。
1時間ほど経過。炎天下の中をノンストップで走り続けたので、そろそろ休憩するタイミングを探します。周りにファーストフード店やカフェも無いので、通りがかりに見つけた東屋で休憩する事に。
今回借りたスクーターは現行のスクーターと比べ、振動も多く操作も重かったため幾分疲れてきました。持ってきたバナナをかじりながら水分補給します。ベンチに横になり、自動車の音も無く鳥や風の音が耳に入るだけの時間です。
30分ほど休憩。残り三分の一ほどで到着するポンテデーラを目指します。このペースであれば宿にチェックインした後、ピサの斜塔を見る事も問題無さそうです。そして予定通り、夜にはVespa
Club Valderaのメンバーと夕食を共に出来るくらいの順調な流れでした。
再び出発。しばらく走って行くと、丘を越えて行くエリアも終わって平らな土地をひたすら走って行きます。
走っていて「動力の伝わり方がおかしいかも?」と思ったところ、後ろに乗っていた井上さんも「変な音がする」と言っています。
「なんだろう?」と思っていたら、アクセルを開けても前に走らなくなっていきました。安全な場所にベスパを止めます。当初はクラッチが壊れたのかなと思ったのですが、見てみたところ後ろ側の軸の部分のトラブルでした。
部品が完全にダメになっているので、この先どうするかを二人で色々と考えます。ポンテデーラまで残り11km。バイクで走れば直ぐなのですが、歩くとなると結構な距離だったりします。
途中心配してくれた町の人もいましたけど、運良く自動車工場の人の協力が得られ、修理に必要な部品を40分で調達する事が出来ました。そしてトラブル発覚から約3時間後には、ツーリングを再開させる事が出来ました。
イタリア人なら誰もが知っているベスパ。その部品が僅か40分で入手できるなんて、「さすがベスパの生産されている土地、イタリアだな」と感じられました。またベスパと言う乗り物の大部分が特殊な技術を必要としていないため、町の自動車修理工場であっても修理する事が出来たのだなとも思いました。
炎天下の中でトラブルが発生し、加えて言葉が通じない土地だったという事もあって二人ともヘトヘトです。どうにか辿り着いたポンテデーラで予約していた宿へのチェックインを済ませます。そんなこんなで貴重な体験をしてしまった私達二人はイタリアのランドマークであるピサの斜塔行きを取り止め、宿でシャワーを浴びて少し休む事にしました。
ポンテデーラの町は駅の正面側に町の機能が集中していて、線路を挟んだ裏手直ぐにPiaggioの工場敷地、そして田畑が広がっています。今回が2回目となるポンテデーラへの滞在ですが、利用している宿はゲストハウス"Stanze
Bellaria"です。ちょうど大きな一軒屋の2階が宿泊部分になっていて部屋が複数あり、共用のキッチンが備えられています。
この宿はとても気さくで親切な老夫婦が営んでいて、イタリア訛りの英語で対応してくれます。夕食時の外出や、ちょっとした買い物にはやはり町の表側の宿の方が便利でしょう。だけどバイクで出かけて夕食はピサで済ませ、翌日はMuseo
Piaggioに行くというスケジュールであれば、敷地内にオートバイも入れさせてもらえたりしてとても利用しやすい宿です。
朝になれば病院と面した通りに並ぶカフェが開いているので、朝食をそこで済ませる事も出来ます。宿・朝食スポット・MuseoPiaggioと、歩くのにはちょっと距離があると思ってもスクーターでさっと行く事が出来るので、やはりそんな時も移動にスクーターがあると重宝します。
Vespa Club Valderaのメンバーとの夕食の約束時間もそろそろなので、宿を出発します。夜8時でもまだ空が明るいイタリアですが、そろそろ日が沈もうとしています。町を出ると街灯もない田畑を抜ける道となり、そこをナビの指示に従ってひたすら走ります。夕食は指定された"Pizzeria Ristorante LE GIARE"というお店。昨年はピサの斜塔周辺に多く集まる飲食店の一つで夕食を済ませましたが、今回もピサの斜塔から程近いところにあるピッツァのお店です。
昼間はバイクが止まったせいでタイムロスするという苦い経験をしていますので、次にガス欠等で止まってしまうのは避けたいところ。そこで見かけたガソリンスタンドで給油してからレストランへと向かう事にします。日本のように慣れた土地であれば「あそこに行けばスタンドがある」となりますが、この土地では「そろそろガソリンを入れたいな」と思った時にスタンドがあるという訳にはいかない事の方が多いのです。それもあって感覚的に「半分くらいガソリンを使ったかな?」と思い出したら、早め早めの給油がお勧め。何故ならガソリンの残量計もあまりあてにしていないので(笑)。
暫く走っていると、再び街灯のある通りが出てきて次の町に入りました。ナビはその先の左側にあるお店と示しています。走っていると表にベスパが止まっているのが見え、直ぐにそこだと分かりました。
しかし中央分離帯があるため、そのまま道路を横切るようにしてお店に入るという事が出来ません。なので、その先のラウンドアバウトでUターンするように回ってお店へ向かいます。日本の交差点とは違い、ラウンドアバウトはカーブを曲がる感覚で交差点を曲がったりUターンする事が出来ます。慣れると本当に使いやすく走りやすいです。
指定されたお店には時間ぴったりに到着出来ました。初対面ながらこうして会えた事にホッとし、早速飲み物を頼んで乾杯です。今回はVespa Club
ValderaのメンバーであるLucianoさんが私とメッセージのやり取りを行い、その流れでこうしてお会いする事が出来ました。Lucianoさんは大変日本に興味を持っていて、いつか日本を訪問してみたいという夢があるそうです。それもあって、まずはこうしてVespa
Club Tokyoと交流のきっかけを持ったようです。
他にLucianoさんの息子さんも来ていて、まだ学生という事ですが親子揃ってベスパ乗り。その息子さんはなんと14歳からベスパに乗り始めているそうで、親子こうしてベスパに乗って楽しんでいる様子を見ていると本当に楽しそうだなと感じました。他のメンバーの方や会長さんも平日にも関わらず私達のために駆け付けて頂き、イタリアでは定番のピッツァとパスタを食べながらベスパの話に花が咲きました。
お腹が空いていたというのもあるとは思いますが、日本のイタリアンレストランで食べる料理よりも美味しく感じられましたし、昨年ピサの観光エリアで食べたパスタよりも断然美味しかったです。どことなく自然な美味しさが引き立っているという印象。さすがは地元です。現地ベスパクラブのメンバーにセッティングしてもらうレストランは、ハズレる事が無いので旅行を楽しむ上でもベスパクラブは重宝します。
夜も更けてきました。私達は明日も旅行ですが、彼らは仕事があるためお開きに。Lucianoさん親子は方向が同じだからと、私達の事を宿まで送ってくれて本当に嬉しかったです。レストランに行く時はナビを見つつ時間を気にして走っていたせいか、宿からレストランまでやたらと距離がある印象でした。それが帰りは、彼らと共に走れる嬉しさか、安心感か、宿までの時間があっという間でした。翌朝は荷物をまとめて宿をチェックアウトします。
今回はここまで!
どうにかアクシデントを乗り越えてツーリングを続行出来た土田さん達ですが、本当に何よりでした。それでも慣れない土地で、精神的にも大変だったろう事は容易に想像が付きます。結果的に凡そ3時間程度でリカバリー出来たという事ですが、良くも悪くも普通では考えられない体験をしてしまったお二人でした。
それもあって計画段階では盛り込まれていた、ピサの斜塔と海については実現出来なくてなってしまったとの事。お二人にとっては残念な気お気持ちが強いと思われますが、大事に至らなくて何よりだったと思います。
さて、初日のツーリングレポートはいかがでしたか? 皆さんもお気づきだと思いますが、やはり旅のアクシデントは思い出や笑い話として記憶に残り続けますよね。そういう意味で、お二人にはより鮮明で楽しい旅になったんじゃないでしょうか。
次回はこの流れで2日目のレポートとなりますので、どうぞご期待ください!
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