BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
今回からは2017年に土田さん自身が体験して来たASIA VESPA
DAYSについて寄稿して頂ける事になりました。インドネシアで開催された同イベントに、およそ1週間の旅程で参加して来たという事ですが、一体どんなイベントだったのか? 早速スタートです!
自国生産&独自路線のカスタム文化で気になっていたインドネシア
〜アジア地域最大のベスパミーティング〜
イベント名:ASIA VESPA DAYS 2017
場所:ジョグジャカルタ(Yogyakarta)・プランバナン寺院群(Prambanan Temple)
開催期間:2017年9月15日~16日
渡航期間:2017年9月11日~17日
インドネシアに旅立つ土田さんが計画した行動スケジュールを見てみると、首都ジャカルタで現地スクータークラブと合流。その後に2日間程ジャカルタ市内を観光して、オートバイ通りも散策。それから約2日間の行程で、イベント開催地であるジョグジャカルタ・プランバナン寺院群までのロードトリップを敢行。なんと550km(!)を移動してイベントに参加するんだそうで、イベント終了後はジョグジャカルタから機上の人となり帰国するとの事。それでは土田さんによる詳細なレポートをお届けしていきます!(以下は土田さんから頂いたレポートになります)
※記事中の情報や写真は2017年当時のものとなりますのでご注意下さい
◎はじめに
ベスパワールドクラブ(Vespa World Club)公式イベントの一つにベスパワールドデイズ(Vespa World
Days)があります。このイベントは、その名の通り世界規模で開催されるベスパの祭典です。
毎年6月にヨーロッパを中心とした各国のベスパクラブのメンバーが数千人規模で集まるのですが、各国持ち回りで開催しているため、毎年開催場所や地域が異なり、数日間に渡って開催されるという特徴があります。
そして2017年にはアジア地域のメンバーが集まるアジアベスパデイズ(ASIA VESPA DAYS)を、ベスパクラブインドネシア(Vespa Club
Indonesia)が主催となり、世界遺産になっているインドネシア・ジョグジャカルタのプランバナン寺院にて開催されました。
今回は首都ジャカルタからアジアベスパデイズの開催地であるジョグジャカルタまでの道程、約550kmを現地のスクータークラブ"ドゥクン・ベスパ(DUKUN
VESPA)"に同行させて頂きました。
そこでの数日間、インドネシアという国のオートバイ事情、現地のスクータークラブやベスパクラブのチームワークと友情、インドネシアでベスパを楽しんでいる姿と環境を見る事が出来ました。今回は、そのような事も踏まえて現地での様子をお伝えしたいと思います。
ベスパクラブインドネシアは現在のアジア地域の中でとても活発的なクラブであり、同じ年(2017年)にドイツのツェレ(Celle)で開催されたベスパワールドデイズにも参加しています。
2020年には、それまでヨーロッパ地域のみで開催されていたベスパワールドデイズをインドネシアのバリ島にて開催しようと準備が進められているそうです。アジア地域を代表してワールドデイズを開催する程のエネルギーはどこから来るのか、現地を訪れるまで疑問の一つでしたが、実際に訪れてみて納得する事が出来ました。
◎インドネシアとベスパ
インドネシアの首都ジャカルタを訪れると、発展した建物や自動車を見る事が出来ます。そして街並みの中には昔ながらの3輪タクシーや70年代のベスパが見られ、裏通りやエリアによっては六角形マークのPiaggio看板がかかった商店を目にする事も出来ます。
私のツーリングのテーマでもある"ベスパが生産された国"ですが、今回訪れたインドネシアでもベスパが生産されていた時期がありました。インドネシアではイタリアからの輸入販売のほか、70年代に入ってノックダウン生産が始まり、以降2000年頃までイタリアと同スペックのベスパも生産されていました。後にイベント会場でも実感しますが、この土地でもベスパが生産されていただけあり、今でもとても多くのクラシックベスパを目にする事が出来ました。
また、インドネシアでは独自路線にカスタムされたベスパのスタイルがあります。通称"エクストリームベスパ(Extreme
Vespa)"と呼ばれ、クラシックベスパをベースとしており、そのどれもが手作り。車高・座面を極限まで低くし、全長を長くするのがスタンダード(?)なスタイル。
発展(?)していくと車幅も広くなったり、数多くのタイヤが付いたり、骨組みが組まれた家のようなものまで。さらには丸太をメインフレームとして、ベスパのフロントフォークとエンジンを取り付けたものまで......と、直訳通り"極端なベスパ"が存在するのもこのインドネシアなのです。
◎私とインドネシアとのつながり
そういう事もあり、常々インドネシアは私にとってどうしても実際に訪れ、現地のオーナーさん達と交流を深めてみたいと思ってる国の一つでした。 しかし、こちらからインドネシアに興味を示しても、現地の方がこちらに興味を示してくれない限り交流は上手くいきません。SNSを通じてインドネシアのベスパオーナーさんを探すのも、そう簡単にはいきませんでした。
機会を伺いつつ月日が流れたある日、就労目的で来日していたインドネシアの方がベスパクラブ東京へコンタクトを取ってきたのです。私もベスパクラブを通じて連絡を取り、実際に会う事になりました。そして、この事がきっかけとなりインドネシアと私の距離は一気に縮まりました。
その際にお会いしたのはレザ(Reza)さん。2017年1月にベスパクラブでツーリングを企画し、横須賀で一緒に食事するという交流会を開催する事になりました。レザさんはひら仮名であれば日本語を読む事が出来、日常会話もだいぶよく分かっている様子。なので、いろいろなインドネシアの話を聞く事が出来ました。ただ......この頃はまだアジアベスパデイズが開催されるとは知らなかったので、今後のためというところで何かのきっかけ作りの時間でもありました。
この日、レザさんと知り合う事で大変多くのインドネシア人が日本に働きに来ているという事を知りました。コンビニや飲食店だけではなく、特に印象深かったのが街中でよく見かけ、私たち日本人が買って乗っている自動車も、実は日本に働きに来ているインドネシアの方々によって組み立て・生産されているという事。
もちろん普段であればそんな事を考えたりもしないですし、買う人がどのような環境で組み立てられているかまであまり考えないと思います。しかし、レザさんのような人達に日本の製造業が支えられている部分もあるのだと実感しました。
レザさんは一年間の予定で日本に滞在し、横須賀市にある自動車工場で働いています。彼はインドネシアでもこの会社の社員との事。ご家族をインドネシアに残して来日したそうで、レザさん本人は今季初めて日本の冬を経験。寒い気候に加えて、雪も初めて経験したそうです。
半年後にレザさんと入れ替わりでインドネシアからやって来る方も、実はベスパオーナーさんとの事。巡り巡ってベスパに乗っているんだとか。このようにベスパに接した生活を送っている方が多いのもインドネシアならではかと。どうやら国民車と言っていいのでは? と思える程、ベスパはインドネシアに浸透した乗り物のようです。
そしてもう一人。岐阜県に住んでいるリアン(Riyan)さんもベスパクラブ東京へ連絡を入れていたという事もあり、少し前から私もコンタクトを取っていました。岐阜と東京では距離もあるので、直接会う事は出来ていませんでしたが、実はリアンさんのお父さんであるマルズキ(Marzuki)さんも根っからのベスパ好き。リアンさんが日本で暮らしているという事もあり、日本のベスパオーナーさんに興味があったそうです。
私がアジアベスパデイズに参加するためインドネシア行きを決めたところで、インドネシアの事をいろいろ聞きたくリアンさんにも連絡を取りました。出発数週間前にも彼と話を進め「マルズキさんも同じイベントに行くから一緒に行こう」という話になり、あれよあれよと同行させていただける事が決まりました。
当初私は飛行機と公共交通を利用して自力でイベント会場へ行き、イベントの雰囲気だけでも楽しんで来ようかなと思っていました。しかしリアンさんとマルズキさんからのお誘いがあった事で、現地ベスパオーナーさん達と一緒に行動出来るというチャンスが得られました。当然ながら交流を深める事が出来るのと、より深くインドネシアの様子を見られるという期待も持てるので、このお誘いは本当に思いがけない事でした。
マルズキさん達と一緒に移動するジャカルタからジョグジャカルタまでの道程は片道約550㎞。この道程は休暇を利用したベスパ旅行のつもりが、緊張感が増すロードトリップ&冒険へと変わっていきました。
◎いざインドネシアへ
まずはインドネシアの基本情報から。赤道直下に位置し、約1万3,466の島々で構成されています。そして東西に非常に長く連なっていて、端から端までは実に5,110kmもあるそうです。そのうちの大きい島に首都ジャカルタがあり、ジャワ島と呼ばれています。
そんなインドネシアは東京から直線距離にして、首都ジャカルタまで南へ約5,800km。直行便でも約8時間近くかかり、東京からアメリカの西海岸まで行けそうな距離です。私は日本から飛行機を使ってインドネシアへ向かいましたが、ジャワ島に住んでいるオーナーさんをはじめ、隣接するスマトラ島や近隣の島々からの参加もありました。
さて、インドネシアにはオートバイが使える高速道路もないため、長距離トラックやバスが行き交う幹線道路や悪路を数日間かけて会場へと向かいます。私以外にも海外からの参加はあり、中国、ベトナム、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ニュージーランド等の周辺諸国からも参加がありました。そして旅の途中で立ち寄るというスタイルながら、イタリアから自分のベスパで自走して参加するイタリアのベスパクラブメンバーもいました。
アジアベスパデイズはそれ程の規模感で、ベスパオーナーさん達が会場のあるジョグジャカルタ・プランバナン寺院群を目指します。
今回はここまで!
プロローグ的な内容となった今回ですが、いかがでしたか? アジアベスパデイズの概要に始まり、インドネシアのベスパ事情、それとインドネシアとの接点が出来たところからイベント参加に同行する事になった背景といったところに触れられています。
ちなみに本文中やキャプション内に登場する「タマン ミニ インドネシア
インダー」というのは、インドネシアの多様な民族と文化を再現したテーマパークの事。首都ジャカルタ南東部にあり、100ヘクタール超の広大な敷地で展開しています。
実はマルズキさんが、この「タマン ミニ インドネシア インダー」で働いているんだそうです。しかもマルズキさん自身が手がけたエクストリームベスパも「タマン ミニ インドネシア
インダー」にあるというので、まずはお邪魔するという流れで決まったんだとか。その辺り、詳しくは次回のレポートで触れてくださるようですよ。
さて、それではイベントレポートの本編となりそうな次回をお楽しみに!
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