BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
前回からスタートしたAVD2017レポートですが、今回からはいよいよ本編とでも言うべき内容へと突入していく模様です。さて、インドネシアを舞台に土田さんは一体どんな旅を楽しんで来られたのか? さっそくチェックしてみる事にしましょう!
2017年9月12日、インドネシアに到着
〜アジア地域最大のベスパミーティング〜
イベント名:ASIA VESPA DAYS 2017
場所:ジョグジャカルタ(Yogyakarta)・プランバナン寺院群(Prambanan Temple)
開催期間:2017年9月15日~16日
渡航期間:2017年9月11日~17日
プロローグ的な内容に終始してしまった前回から一転、今回は旅の模様をたっぷりと届けてくれるという土田さん。ただしフツウの旅レポとはちょっぴりテイストを変え、旅の行程の中でポイントやシチュエーション毎のレポートとしてまとめてくれました。
まずは9月12日の出来事から。この日はインドネシアに到着した初日であり、事前の計画では首都であるジャカルタで現地スクータークラブと合流。更に翌日にかけて市内観光やオートバイ通りの散策等に時間を費やすというもの。それでは土田さんによるAVD2017レポートをお届けしていきます!
※以下は土田さんから頂いたレポートになります)※記事中の情報や写真は2017年当時のものとなりますのでご注意下さい
◎空港でレザさんと合流。マルズキさんのところへ
インドネシアへ向かう一般的な方法は飛行機を利用する事です。私の場合も飛行機を利用し、ジャカルタ・スカルノ・ハッタ国際空港に到着。日本もまだまだ蒸し暑い時期ですが、ジャカルタの日差しは更に強く、もっと蒸していました。
自分では旅慣れているつもりですが、レザさんはインドネシアの言葉も分からない私の事を心配して空港まで迎えに来てくれました。おかげで空港からバスまたはタクシー、それに電車等を乗り継ぐ事もなく、今回のロードトリップでお世話になるマルズキさんが働くタマン
ミニ インドネシア インダー(Taman MiniIndonesia Indah)というテーマパークまで真っ直ぐに行く事が出来ました。
このテーマパークは、東京ドーム21個分の広さに相当(?)する広大な敷地にインドネシアが凝縮されているんだそうです。「それってどういうこと?」と思われる方もいると思いますが、一万数千の島々で構成されているインドネシアは、それぞれの島、それぞれの地域毎に生活様式や文化があり、それらをこのテーマパーク一つで見学出来るというものです。なのでジャカルタに居ながらにしてスマトラ島の建物を見る事が出来たり、バリ島のリゾートだって楽しめて(?)しまうのです。
敷地中央には大きな池があり、いくつもの島が浮かんでいるのが見られます。池の上にはロープウエイもあり、ロープウエイからはその池に浮かぶ縮小版インドネシアを俯瞰から眺める事が出来るようになっています。
ところでマルズキさんは、このテーマパークで設備関係の仕事をしている技術者であり、ドゥクン・ベスパというスクータークラブのリーダーを務めています。住む家はタマン ミニ
インドネシア インダーからオートバイで数分のところにあり、家の前の通りを挟んだところに彼のガレージもあります。
ガレージといってもインドネシアらしいワルン(WARUNG:ワルンとはインドネシア語で小さな売店や食堂等という意味があり、東南アジアらしさが見える簡易的な売店とも想像できます)のような作りだったりします。というのも1988年~2000年頃までの約12年間は、この場所でベスパのサービスショップをやられていたんだそうです。そのため今でも通りに面したところにベスパが並べられ、カウンターだったと思われる店内レイアウトの名残も見られます。現在はドゥクン・ベスパというグループを通して、この場所で仲間達とのベスパライフを楽しんでいるようです。
◎マルズキさんのエクストリームベスパ
さて、インドネシアには「エクストリームベスパ」と呼ばれる独特のカスタムスタイルがあるという事に、前回ちょっぴりだけど触れました。実はマルズキさんも、その様なエクストリームベスパを作っていました。昔はベスパのサービスショップをやっていたり、現在は施設での技術職に就いているというのも関係してか、マルズキさんの製作したエクストリームベスパは素材的にも構造的にもしっかりしている印象です。
ボディは鉄板で作られ、迷彩カラーで仕上げられている小さな軍用偵察車スタイルです。車体の右側にベスパのエンジンが配置され、左側はタイヤが前後に2つ並んでいます。そしてフロントにはベスパのフロントフォークを利用して作られたダブルタイヤ。既製のドレスアップやカスタムパーツを組み合わせるといった手法ではなく、イメージを形にするため無い物は作り、有る物は工夫するという、多くのアイディアが詰まった1台となっていました。
複数名が乗車出来る程しっかりした車両だったため、マルズキさんのところへ集まった仲間達とこの特製エクストリームベスパに乗り込んで、テーマパークをのんびりドライブする時間はとても楽しい一時でした。ちなみに仲間達とはAVD2017のイベント会場へ向かう為、マルズキさんのところを中継/合流ポイントとして集結した他グループのメンバーだったりします。
ここでマルズキさんのエクストリームベスパをもう少し見てみたいと思います。エクストリームベスパというのは製作者の腕前、それからセンスやアイディアによって様々な形が存在します。
マニュアルシフトを採用するクラシックベスパをベースとしているので、本来であればハンドルの左側がクラッチとギアシフト、右足でリアブレーキの操作を行います。ところがマルズキさんのエクストリームベスパは自動車のような雰囲気に構成されていて、ハンドルは舵取り機能のみになっています。そのハンドルには鉄のパイプが使われ、十字状に交わるところには彼のクラブのマークやマスコットがあしらわれ、それらがエンブレムの役割を果たしています。
その他の操作系は右足でアクセルとブレーキ、左足でクラッチを操作します。加えて運転席の左側にはシフトノブが伸びているので、左手でギアチェンジする構造です。なおギアチェンジを伝達するリンク部分にはベスパのシフト・セレクト部品(ギアコントロールサポート)が流用されていて、さすがベスパに使われている部品や有る物をよく理解した上で工夫と流用が施されているなと感心しました。
また車体左側には前後にタイヤが並んでいて、そのホイールリムはクラシックベスパのリムを使用。ただしハブになる部分はマルズキさんの手作り。ハブとなれば綺麗に回転させる必要のある個所ですが、それも上手に処理されていました。しかも前後に並んだタイヤをシーソー状に動かす事で路面に合わせた動きを実現させている等、自身のイメージ通りに工夫して形にしてしまう行動力と実行力はさすがと恐れ入りました。
◎インドネシアのトイレ事情
約半年前に横須賀でお会いしたレザさんとは、彼の仕事の都合により初日の数時間のみの再会でした。それもあってジャカルタでの滞在はマルズキさんの友人宅に泊めて頂く事に。彼の家にはイベントに参加する他のグループもお邪魔していて、後日私達と同じように会場のジョグジャカルタを目指します。
今回の宿泊はジャカルタ中心部のホテルに滞在するのではなく、インドネシアの一般的な家にお邪魔させて頂きました。これにより、まず初めに日本との生活習慣の違いを発見したのはトイレ事情。それはインドネシアでの滞在に戸惑いを覚えた"ベスト3"に入るほどでした。
イスラム教の教えや生活習慣を一つ一つ紐解いていくには私自身もさらに勉強が必要となるため割愛させて頂きますが、例えどこへ行ったとしても生きていくために必要になるのは食事と排泄だったりしますよね。よく「不浄の左手。食事や握手は必ず右手」そんな話を耳にした事があると思います。
短期の滞在とはいえ、食べる事と排泄する事を止めるわけにはいきませんし、私のこれまでの人生の中でトイレに困った事はほとんどありませんでした。あったとすれば、臭いのキツい汲み取り式のトイレ位です。
渡航前「インドネシアは土地柄トイレの後はトイレットペーパーでふき取るのではなく、自分の手で洗うと思うよ」と友人から聞いていました。このインドネシアでの滞在とは別にインドを旅した方の本を読んでトイレ一つするのも大変だなと思っていましたが、まさしく本で読んだ出来事をここで体験する事となりました。
ただ出発の直前にはトイレ事情の事等すっかり抜けていて、そのようなトイレはせいぜい地方に残っているトイレ位だろうと思っていました。実際到着したジャカルタの空港でもトイレットペーパーを使う水洗式でしたし。なので、この旅の先行きは明るかったハズでした......。
ところが地元の人の生活様式に入ってしまうと、そうはいきませんでした。利用した空港と最終日に利用したホテルを除いて、行く先々でインドネシアでのトイレ事情に遭遇していきました。
インドネシアのトイレは一見すると日本の和式便器に近く、そこで用を足します。日本の物と大きく違うのは足を置く部分まで陶器で作られ、足を乗せる面の高さから便器の底までの深さが日本の和式に比べて少し浅い印象だという点です。場所によっては個室に水回りをひとまとめとし、体を洗うシャワーとトイレを一緒に設置しているところもありました。
個室には水道の蛇口があり、その下には水を貯めるための大きな水瓶やポリ容器等があります。付随して小さい桶(風呂桶や手桶)があり、トイレに入ったらまず手桶を使って水瓶から水をすくいます。このタイプのトイレの場合、しゃがむ際はドアの方を向いて用を足すそうです。そして水を入れた手桶を手の届く所に用意しておき、用を足します。
トイレットペーパーはまずないので、用を足し終わったら左手で手桶に貯めた水をすくい洗います。それと蛇口をひねってトイレの水が流れるシステムではないため、最後は手桶を使って水を流します。そんな事もあり、足元は常に水浸し状態です。屋内等では靴のままトイレに入る事が出来ないので、靴下も脱いで入ります。人によっては水で洗う際に濡れてしまうのを避ける為、ズボンとパンツを脱いで用を足すそうです。
そもそも用を足した後に自分の手で洗うという習慣がないので、その一連の動作が難しい以前に抵抗すらありました。初日の夜にはどうやっても自分自身が水で濡れると思われたので、シャワーに入る際に服を全部脱いでからやってみましたがやはり難しいと感じました。それで健康にはよくありませんが、用を足しやすいトイレに出会うまでトイレを我慢しがちな生活になっていました。
イスラム教のコーランの一説に基づく清める事を大切にする習慣・清潔さによって生まれる習慣ではありますが、自分の手を使って洗ったり、トイレ周りが常に水で濡れていたりする状況は、私にとってなかなか慣れるものではありませんでした。
◎インドネシアでの水事情
トイレ事情を紹介した続きで、水事情についても振り返りたいと思います。まず、なんと言っても恐ろしい程に蛇口から出る水が不味いという点に驚かされました。歯磨きの際に口をすすぐだけでも嗚咽する位です。
旅先で水に気を付けるのは基本中の基本です。なので飲み水はお店で売られているミネラルウォーターを利用していました。ただシャワーを浴びたり、歯磨きで口をすすいだりする位ならと、現地の蛇口から出る水をそのまま利用する機会は多いです。それもあってジャカルタで滞在させてもらった一般宅で歯を磨いた後、口をすすぐのにその家の蛇口から出る水を利用しました。
しかし水がとても不味く、思わず嗚咽しながら吐き出してしまいました。臭いとかではなく、単純にとても不味かった記憶です。東京に住んでいて水がそこまで不味いというのも想像がし難いですが、こんなにも不味いのは本当に驚きでした。
過去にベトナムを訪れた際、地元の人が利用するようなレストランで氷入りのビールを飲んだ時に「せっかくのビールなのに残念な味がするな」と感じた事があり、その時にホテルで口をすすいだ時も同様の残念感があったと記憶していますが、今回はその味を上回っていました。
どうにかこうにか口をすずぎ終え、次はシャワーです。私がお世話になった方の家では浴槽というものは無く、トイレとシャワーが一緒になっているスタイルでした。出てくるのもお湯ではなく常温の水だったので、蒸し暑いインドネシアとはいえシャワーとして利用するには少々冷たい温度でした。
シャワー室にはトイレも併設されており、トイレ用の水瓶として大きなポリ容器が置いてありました。シャワーを浴びていてそのポリ容器に貯められた水が白く濁っているのが気になり、水も貴重な土地かと思いますが入れ替えてみる事に。水道の蛇口をひねり再びポリ容器にたまった水を見てみると先ほどと変わらない濁りで、この国は本当に蛇口から出る水(一度屋根のタンクに貯められた水かもしれませんけど......)が日本と全く違うのだと身を持って経験しました。
人々の様子を見ると、料理やコーヒーを淹れるのに使う水はウォーターサーバーに設置されたタンクの水を使うようです。そのタンク自体はコンビニの店先に山積みされて売られたりしている物で、現地の人達も口に入れる物には蛇口から出る水を使わず、タンクに入った水を使って生活していると分かりました。この事に関連して、日本から持参した味噌汁が不味かった出来事にも直面。
今回、インドネシアでどれだけ日本の味が恋しくなるか分からないので、インスタント味噌汁を持参して行きました。インスタント味噌汁は日本でも口にする機会があるものの、インドネシアで口にしたインスタント味噌汁の味は日本から持参したにも関わらず全然違う味でした。
万が一ホームシックになったとして、日本の味が恋しくなり過ぎて地元の食事を受け付けなくなったりしないようにと持って行った味噌汁でしたが、その必要はありませんでした。何故なら、インドネシアに到着して最初の料理を口にした時点で食事に困る事はないと確信しましたから。
そのため滞在中お世話になった方々に、日本の味としてこのインスタント味噌汁を振舞う事にしました。インドネシアの爽やかな朝......そんな朝に飲む日本の味である味噌汁を飲んでもらおうと。これはさぞかし美味しいだろうなと思い、カップにお湯を注ぎ飲んでみると「おいしくない? あれ?」となり、「日本でも有名なメーカーが作るインスタントの味噌汁ってこんな味?」と持ってきた私自身も疑問に思う味でした。これは恐らくウォーターサーバーに設置されたタンクの水なら飲めるとはいえ、日本人の口に慣れた味の水とは違うという事を実感する出来事でした。
◎インドネシアのテーブル事情
そして、最後は食事方法です。インドネシアの料理そのものは私の口に合うものが多く苦労しませんでしたが、食べ方についてはとても苦労をしました。インドネシアでは手で食べる習慣があります。私にとって道具を使わずに自分の手で食べるという事が、簡単なようでなかなか上手に出来なかったのです。
国民の約80パーセント以上がイスラム教を信仰_しているインドネシアは、食事を手で食べる風習があります。とは言っても、レストラン等で店員さんに言えばスプーンやフォークを出してくれるお店もあります。
しかし「郷に入っては郷に従え」です。普段の生活では手で食事をするという機会等ありませんが、私は極力周りの方々と同じ食事方法を実践していました。普段であれば箸やスプーン&フォークといった道具を使ってある意味器用に食べていますが、道具を使わず本来自分に備わっている指で食べるというのがこんなにも難しい事とは思ってもいませんでした。
インドネシアもお米を使った料理が多いのですが、このお米を皿の上で右手の親指、人差し指、中指の3本を使い、お米同士を上手くまとめて口に運ぶという動作がなんともぎこちなく難しいのです。油を使って炒めていたり、日本のお米のようにモチモチしていない事から上手くまとまらなかったりするというのもあると思います。それに本来人間として備わっているものが退化してしまっているようにも感じました。
また出来立ての料理等は、熱くて手に持つ事が出来ないもどかしさもありました。指を使って食事をするので、大半のレストランには水道(流水)と石鹸が用意されています。なので食事をする前はもちろん、フライドチキン等を食べた後の手に着いた油も洗い流す事が出来ます。
しかしツーリング中は弁当が用意されたりしたため、必ずレストランに入れるというワケでもなく、水道が必ず近くにあるとも限りません。メンバーの中には気にしない人もいれば、無水でも手が洗えて除菌効果のある物を携帯する綺麗好きの人もいました。
私は最終日から帰国後一週間、トイレにこもるような生活になっていたので、手洗いだけで解決するものでもありませんが、再びインドネシアに行く事があるならもう少し衛生面に気を使った方が良いと勉強になりました。
今回はここまで!
さて、AVD2017レポートの第2弾はいかがでしたか? インドネシアに到着した初日からして、かなりディープな話題ばかりだったように思います。でも臨場感溢れる細かい描写でインドネシアの生活様式がよく分かる内容だったんじゃないでしょうか。
それに時間をやり繰りして空港まで迎えに来てくれたというレザさんや、現地で初めて会うにも関わらずロードトリップに同行させてくれたマルズキさん等、インドネシアへの旅でもやはり土田さんならではのネットワークが上手く機能しているんだと感じられますよね。
今回の旅レポ、これから更にディープになっていきそうな予感がします。なので、ますます目が離せない展開を期待したいと思います。皆さんも次回をお楽しみに!
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