BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
隅本辰哉
-
- 撮影
土田和寛
-
- バイク
Vespa
寄稿者:Vespa Club TOKYO・土田和寛 代表
第5回目となるAVD2017レポートです。これまでジャカルタ市街地周辺に居た土田さんですが、ついに「ASIA VESPA DAYS
2017」の会場に向けて移動を開始。ただツーリングレポートではなく、道中のシーン毎に感じた土田さん自身の私感を中心にレポートしてくれた様です。それでは今回のレポート、早速チェックしていきましょう!!
2017年9月14日、ロードトリップの始まり
~アジア地域最大のベスパミーティング~
~アジア地域最大のベスパミーティング~
イベント名:ASIA VESPA DAYS 2017
場所:ジョグジャカルタ(Yogyakarta)
・プランバナン寺院群(Prambanan Temple)
開催期間:2017年9月15日~16日
渡航期間:2017年9月11日~17日
ここまで駆け足ながらインドネシアのカルチャーに触れつつ、「タマン ミニ インドネシアインダー」やバイクストリート(バイク街)での観光を体験してきた土田さん。いよいよジョグジャカルタに向けてロードトリップが始まっていくようです。......という事でAVD2017レポート第5弾、早速スタートです!(以下は土田さんから頂いたレポートになります)※記事中の情報や写真は2017年当時のものとなりますのでご注意下さい
◎一日の始まり、出発前はお祈りをする
2日間滞在したジャカルタでしたが、それだけでも他の国とは違うお国柄が見えてきて、なんだか既におなか一杯です。でもここからは今回のメインイベントとなる、ジョグジャカルタ・プランバナン寺院群に向けたロードトリップが始まります。
ジャカルタからジョグジャカルタまでは片道約550km。その間、高速道路やバイパスルートがあるワケでもなく時間短縮する事は出来ません。ただひたすらに一般道を走り、地道に会場を目指して行く以外の方法がないのです。
道中は淡々と走って行く時間の流れなので、マルズキさん達と移動していく中で印象深かった出来事をいくつかまとめてご紹介していこうと思います。私にとってもプランバナン寺院群にて開催されたアジアベスパデイズよりも、この道中で体験した事の方がメインイベントだったと言っても過言ではありませんでした。
さて今回ご一緒させて頂いたドゥクン・ベスパ(DUKUN VESPA)は、一日の始まりとツーリングの出発前に必ずミーティングを行い、グループ全体でのお祈りを欠かしませんでした。どうやら日本と比べてこの土地では、バイクで集まった時であっても宗教の事を切り離したりはしないようです。
出発前のミーティングではこの日のスケジュールとルートの確認、それに道中の注意事項などが説明されます。それから両手を合わせて数分間目を閉じ、一日の安全を祈るという流れです。お祈りの後は円陣を組み、チームリーダー・マルズキさんの掛け声と共に皆が声を出し、各々ヘルメットを被ってエンジン始動後に出発します。
この朝のお祈りは、グループとしての動きだけに限った話ではありませんでした。実は今回のインドネシアでは最終日の夜にジョグジャカルタのホテルに滞在したのですが、そこで同室となったゲリー(Gerry)さんも翌朝のホテル出発前に経の題目を唱え、「ほら、お前もやるんだよ」と言われて私もそれに倣いました。
出発前のミーティングとは別に個々でお祈りをし、チームでもお祈りと円陣を組んで掛け声を発してから出発。バイクの集まりであっても、このような形でお互いの意識を合わせる事が出来るからこそ、この後に見えてきたチームワークや団結力が生まれるのだろうという感じがしました。
◎移動中のチームワーク、そのための役割分担
ところで、グループツーリングやマスツーリングをする際に最も重要なのがチームワークであると思っています。例えばツーリングに混ぜてもらった時にお互いをフォローし合って統制の取れた集団であるなら、普段からしっかりとチームワークが良くまとまりのある集団なのだと感じられる事でしょう。
今回ご一緒させていただいたマルズキさん率いるドゥクン・ベスパも、そうしたチームワークの良さが感じられる素晴らしいグループだと思いました。そのチームワークの元になっていたのがグループ内で役割を持つメンバー達だったので、そんなキーマン達を紹介していきたいと思います。
主だった役割の分担として、先導/ナビゲート/会計/調達、メカニック/サポート、リーダー/責任者というものがあり、それぞれ重要な役割であるのは間違いありません。加えて今回に限っての話になりますが、私の世話役を担当してくれたメンバーが居た事でかなり助けてもらえたというのもあります。
まずは常にグループの先頭を走り先導/ナビゲート/会計/調達(メンバーの食事など)を担当しつつ、グループの面倒を見てくれたボニー(Boenny)さんとラハルジョ(Raharjo)さんカップル。2トーンに塗り分けられたベスパに乗ってジャカルタからジョグジャカルタまでの往復約1000㎞以上の道程をナビゲートしていました。
常に先頭を走りながら路面や道路の状況などを、足や手を使って後方に伝えてずっと仲間達を牽引していた事も凄いのですが、この仲良しカップルにはもう一つの役割がありました。それは道中必ずしも全員がレストランや食堂に入れるワケでは無い事から、出発前に仲間達から参加費を集金し、必要に応じて軽食や弁当の調達、レストランや食堂での会計までをも引き受けていた事です。
そして後方付近で2人分の荷物、工具&スペアパーツを満載しているのがイマン(Iman)さんとウキ(Uq)さん。メカニック/サポート役を担っていた二人で、イマンさんはメンバーの車両が調子悪くなった際に一通り面倒を見てくれる頼もしい方。もちろん参加している誰しもバイクを修理したりいじったり出来ますが、彼の手にかかれば大抵の事がその場で解決していたので本当に頼りになる存在でした。またウキさんは長旅の運転で疲れた時の交代要員として、イマンさんの後ろに同乗していました。この二人は私と年齢が近いという事もあり、会話も弾むメンバーでした。
続いては今回の私の世話役を務めてもらったゲリー(Gerry)さん。この旅で私のホスト役をしてくれたのはマルズキさんでしたが、ツーリングの道中に私を同乗させてくれ、言葉の面でも何かと助けてもらったのはゲリーさんだったりします。今回はクラシックベスパが揃う一団の中に、敢えてモダンベスパのスプリントで参加。理由は「今回の長旅に備え、こちらのベスパをチョイスした」との事。彼自身、カスタムしたクラシックベスパを持っているのに......です。
そんな彼の本業はガイドという職業だそうです。それもあってインドネシアの自然豊かな土地などを案内しているのだとか。そのためハイドレーション(ザックの中などに飲料用の水筒を備えていてチューブで口に水を運ぶもの)や、現地のアウトドアギアで身を固めた頼もしいメンバーでした。今回の彼にとっては突発的だったと思いますが、本職がガイドという事もあって日本から来た私の事をいろいろと案内してくれ、サポートまでしてもらえたので本当に助かりました。
最後に紹介するのはリーダー/責任者であるマルズキ(Marzuki)さん。道中ずっと最後尾からグループ全体の事とメンバーの様子を観察し、故障などで仲間を置いて行く事がない様に注意を払っていました。
そもそも彼の息子さんであるリヤン(Riyan)さんが私とコンタクトを取って来た事がきっかけで、私はマルズキさんとジャカルタからジョグジャカルタまでの道程をご一緒させてもらえる事になったのです。その上さらに、出発前からとても濃厚なインドネシアの時間を過ごす事が出来たのもこの縁によるものであって、偏にベスパを媒介とする可能性には驚かされるばかりです。
◎ツーリング中のコミュニケーション方法
次に常にチームワークを保つのに必要となるコミュニケーションについてです。休憩中の世間話はもちろんですが、実は移動中もメンバー同士でコミュニケーションを取っていました。ヘルメットに装着されたインカムを使って世間話をしながら移動をするというものではなく、ロードトリップに必要な道路や交通の状況を、常に身振りで伝達するというものです。 日本でもマスツーリングをする場面での走り方があると思います。道中は複数台での移動となるので、マルズキさんのグループも隊列を組んで行きました。先頭車両は道の真ん中を走り、2番目以降は車間を保ちつつ前の車両のラインをやや左右に外すように一列で走行します。 大きく左右に分かれず、一列に近い形というところに実は意味があります。と言うのも、道中は概ね次の様な感じで走って行きました。"この先、赤信号で止まる"という際には、先頭の人が左手を頭の上にあげVサイン(2)という合図を出します。確認すると2列になって、出来るだけ前に詰めながら信号で停止します。 実際に走ってみると分かるのですが、インドネシアはもの凄い数のバイクが同じ道路を走っています。信号待ちでは隙間という隙間に他のバイクが入り込んで来て、前へ前へと次々に割り込まれるため、グループで移動しているなら出来るだけ詰めて固まっていなければならない状況です。もしも一列でそのまま停止した場合は列が長くなったままになってしまい、次に発進時に割り込まれたり離れ離れになってしまうのです。
そしてスタート後は自然とまた一列になったり、先頭の人が左手を頭ので人差し指を立てて一列になるのを促したりします。それに大型トラックなどが前を走っていて渋滞になっている場合などは縫うようにして前に出るのですが、その際も人差し指を立てて一列になり後続もそれに従ってついて行きました。 道中では他にも一列に近い形になる理由がありました。特に地方を走る際は舗装路でも舗装が割れていたり、穴が開いていたり、落下物があったりと、道が悪い場面に多々遭遇します。そうしたエリアへ入ってしまった場合、身体的疲労、車体へのダメージ、挙句は事故にも繋がりかねないので、先頭車両は足を使ってその情報を後続車へ伝えていました。 他の国、他のグループでご一緒させてもらった時は、手を使って障害となっている箇所を指差しながら後続車へ伝えたりしていましたが、マルズキさんのグループでは足を使っていました。車体の左側に障害物があれば左足を出し、右側であれば右足を出す。道路の左右に渡っているものや路面全体であれば、自分が安全である範囲で両足を出して後続車へ路面状況を伝えていました。このような様子を見ていると、一人ひとりがチーム一員としての自覚が強くあるようで、お互いに道中安全に走り切るための行動として現れていると感じました。
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