BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.04

    「旅は終わらない」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.04 「旅は終わらない」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

翌朝。

バイクショップの前で車からバイクを降ろすと、ジェームスから店が開いたらスタッフにこの紙を見せるようにと、メモを渡された。そのメモにはどうやら僕の旅と故障の説明が書かれているようだった。まったく最後の最後までお世話になりっぱなしだ。キチンとお礼を言いたいのに、簡単な英語しか出てこない自分が腹立たしかった。

「カンイチ、グットラック!」

もの凄い数の羊が道路を横断
もの凄い数の羊が道路を横断。横断が終わるまでひたすら待つしかない。

最後に出会ったときと同じ、クールな笑顔でジェームスは去っていった。ありがとう、ジェームスのことは一生忘れないよ。
開店時間になり、スタッフに紙とバイクを見せるとクズのような廃車の山から合いそうなバイクを引っぱり出し、適当な部品をスパナで外すと、ヤスリでガリガリと削り、合うように作り変えてしまった。さすが、オーストラリ人。なければ作ればいいんだよという、発想がスバラシイ。
よし、これでブレーキもOK。ほぼ完璧だ。一時はどうなるかと思ったが...これでまた旅が続けられる。心のリセットボタンを押して、再びバイクを走らせた。

キャンベラの街を走っている時だった。どこからかパトカーが現れ僕の後ろにピッタリ付くと、バイクを止めるように手を振った。
「えええっ!? 違反したの? ウソ、どうしよう...」
鋭い緊張が走る。とりあえず路肩へバイクを止めて、ヘルメットを脱ぐ。ポリスがゆっくり近づいてくる...ドキドキ...
「名前は?」
「カンイチフジワラ、ジャパニーズ」
「休暇旅行?」
「イエ~ス、イエ~ス、ビックホリデー、アラウンド、オーストラリア。ディス、バイク50cc、ミニミニバイク...アハハハハ...」
とりあえずヤバイ雰囲気にならないように、知っている単語を必死で並べた。ポリスの表情を見たところ、シリアスな感じではなさそうなので少し安心する。ナンバープレートのことを気にしているようなので、バイクの国際登録証と国際免許証を見せると、何やら納得したらしく、
「グッドラック!」
と僕の手をギュギュッと握り、ビューンと行ってしまった。ポカーンと口を開けながら、パトカーの姿が見えなくなると
「チクショー、何でもないのかよ、まったく、脅かすなよ~」
大声で叫んだ。まるでドッキリカメラじゃないか。

オーストラリアは南半球。

線路の上で無邪気に遊ぶヒゲ男
線路の上で無邪気に遊ぶヒゲ男。列車は、たぶん、来ない(笑)

オーストラリアは南半球。南へ行くほど寒くなるということは頭では分かっているが、北半球に住んでいる僕にはどうもピンとこなかった。だがそれが最近、体で分かるようになった。
とにかく南下するほど寒くなるのだ、本土の南端にあるビクトリア州に入ると、連日の悪天候も重なり「これが灼熱のオーストラリアかよ!」と叫びたくなるくらい冷え込むようになった。
着込んだ服を数えてみると上が5枚、下が4枚も着ていたのでビックリ。もうこれ以上着込む服がない。暑いと思いこんでいたオーストラリアが、ここまで寒いとは想像もしていなかったので、余計に寒く感じる。

ブルブルと震えながら走っていると、目の前を一匹の猿がヒョコヒョコと横断していった。
「猿? あれっ、でもオーストラリアに猿っていたかな?」
とバイクを止め、ブッシュへ近づいて行くと、何とそれは猿ではなくコアラだった。...信じられない。日本の動物園では順番待ちのうえに、見られるのは数十秒と言われる超人気者のあのコアラが。それも野生のコアラをこんな間近に見られるとは夢のよう。僕は鼻の穴をフガフガさせながら、ガシャガシャとシャッターを切った。
さらに本土最南端「サウスイースト岬」に近づくと、草原をピョンピョンと跳ね回るカンガルーや、滑稽な姿で走り回る大型の鳥、エミューの姿まで見ることができた。まさかこんなに簡単に大型の野生動物を見られるなんて...、こんなことは日本ではほとんど不可能。オーストラリアの大自然に圧倒された一日となった。

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