BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.05

    「忘れられない友との出会い」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.05 「忘れられない友との出会い」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

メルボルン、アデレードとオーストラリア南部の2つの州都を通過して、1号線を北西へ向かう。アデレードを出たころから、内陸部に向かっているせいか次第に晴れる日が多くなった。

シンとカオル
ロウソクを振り回す怪しいシンとカオル。今でも僕はふたりとつき合いがある。

快晴の下、大陸の中央部を南北に縦断するスチュワートハイウェイと南部を東西に横断するグレートウエスタンハイウェイの分岐点、ポートオーガスタに到着。この町を出るとどちらへのルートへ向かうとしても、人口1万を越える大きな町は1000km以上存在しない。そう、ここから本格的なアウトバックの世界が始まるのだ。
その前にある程度、携帯用の食料を蓄えておこうと思い、スーパーマーケットで買い出しをしていると、背後から日本語らしき声が聞こえてきた。まさか、こんな町に日本人がいるはずが...と振り返ると、そこには髪はボサボサ伸び放題、顔は日焼けで真っ黒け、服は東南アジアの民族衣装風の、国籍不明男が、白い歯をニカニカと光らせて立っていた。視線を横に移動させると、その傍らにはなぜか荷物満載の自転車が...
その男の名は「坂本真一」。もちろん日本人だ。彼(以下シン)の話を聞いて驚いた、5年計画の世界一周自転車ツーリング中で、最初の国がここオーストラリアだというではないか。
とてもそんなことしてる風には見えないんだけど...アハハハ...。とにかく、すごいヤツに会えたのが...何だか無性に嬉しい。

コンニチワ~、カオルです

「これからパースへ向かうんやけど。ある筋の情報によるとナラーボー平原を横断するすごいダートがあるらしいんや」
恐らく僕が走ろうとしているルートのことだろう。
「知ってるよ。線路沿いのルートだろ、実は僕も走る予定なんだ」
「えええっ!ホント?」
シンは「へ」の字の目を「の」の字に広げて、驚いた。
「いい地図持ってるから、見せてあげるよ」
道路に地図を広げ、お互いの頭をぶつけながら夢中で話をする。と、そこにまた新たな影が近づいてきた。気配を感じ視線を上げると、またまた荷物満載の自転車がいる...よく見るとその横には女が立っているじゃないか。それもシン以上に色が黒いぞ...おいおいおまえは一体何者だ!?
「おお、カオル、帰って来たか、彼女はオレの連れだよ」
どうやらシンの友だちらしい、ああビックリした。
「どうも、コンニチワ~、カオルです」
「はじめまして、藤原です」
「昨日から野宿している、いい場所があるんだ。良かったらそこで一緒にご飯食べようよ」
「いいね~、行こう行こう!」
僕たちはすぐに意気投合した。
そこは砂浜に面したちょっとした公園でトイレと水場もある、なかなか居心地の良さそうな場所だった。夕食は玄米とシン特製の野菜炒めとなった。出来は正直ぼちぼちだったが、久しぶりに大勢で食べる食事は賑やかでとてもおいしかった。

落ちてきそうな星空の下でいろんな話をした

日が暮れると3人でシュラフを川の字に並べ、落ちてきそうな星空の下でいろんな話をした。シンとは同じ世代であり、また旅という共通点があるので、どんな話題でも不思議と会話が弾んだ。
自分の情熱をぶつけられるような何かをしたい。自分にはどんな可能性があるのか試してみたい。僕たちは人に合わせた生き方をするんじゃなくて、自分に正直に生きて行こう。ふたりはそう言って、大きく頷き合った。こんな風にいきなり人生観を語り合えることがとても不思議だった。何十年つき合ってもこんな話ができない友だちもいるのに、これもひとつの相性なのかな?
そしてここで初めて分かったことがあった。実は相棒のカオルは元々はひとりでオーストラリア旅行をしていた、有名な場所を巡る、まあ普通の観光旅行だ。ところが2ヶ月前に偶然出会ったシンの影響を受け、何を思ったかいきなり自転車購入。そのままシンと一緒に自転車旅行を始めてしまったというのだ。いやはや、カオルの無謀ぶりには感心する。なんて女だ。僕が女だった絶対にあり得ないぞ~そんなこと。
そんな会話をされているとも知らず、ガーガー大口を開けて寝ているのが、またカオルらしい。
それからシンとカオルと僕の脳天気な楽しいポートオガスタ生活が始まった。昼間は3人でスーパーをウロウロ、公園で買ってきたフルーツを死ぬほど食い、夜はみんなでアホなギャグを飛ばしながら日本食もどきを作って食べた。まるで小学生のキャンプみたいに楽しく、僕たちは昨日会ったばかりなのが信じられないくらい仲が良かった。

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