BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
モトラ
VOL.07 「オーストラリアど真ん中」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]
エアーズロックへ向かって走っていると、久しぶりにバイクらしき対向車がやってきた。すれ違う瞬間、シドニーで一緒だった西本くんのバイクと分かり、慌てて急ブレーキをかけた。
手を取り合い、再会を喜んだ。あと一日ずれていたら会えなかったはず、ホントに運が良かった。「途中でバイクが壊れちゃって、部品が届くのを一週間待ったり、もう大変だったんですよ」と頭をかいた。他のみんなも色々苦労しているんだな。
お互いの旅を無事を願い、大きく手を振り別れた。
そうこうしているうちに、前方の地平線にエアーズロックらしき岩が見えてきた。何だかついに憧れていた人に会えるような心境、自然とペースが上がる。
まずはユララ・ツーリスト・リゾートへ向かう。実はエアーズロック周辺は国立公園に指定されているため、キャンプは禁止になっているからだ。エアーズロックを訪れる旅行者のほとんどはユララ・ツーリスト・リゾートに宿泊しているのだが、着いてみるとこれがまたスゴイ施設だった。銀行、郵便局、スーパーから病院、学校まであるというから目の球が飛び出る。まるでひとつの町のよう。さすがオーストラリア、スケールが違いすぎるぞ。
キャンプ場はホリデーをエンジョイする、オーストラリア人で賑わっていた。指定されたサイトにテントを張っていると、東洋人とモトラが珍しいのか、次々に人がやってきては質問をしてくる。一組が終わると次の一組という感じで、休むヒマがない。嬉しい悲鳴を上げた。
翌日、エアーズロック登頂に出かける。西本くんから30分もあれば楽勝、と聞いていたので軽い気持ちで登りはじめたが、10分も経たないうちに汗ビッショリになってしまった。
「ハァハァハァハァ...ニシモトォ~話が違うぞ~っ!ウゲッ...」
急勾配の連続に口から心臓が飛び出しそうだ。そして最大の失敗はオフロードブーツを履いてきたことだった。鉛のように重たい上にメチャクチャ暑い、さらに靴擦れではたまらない。ブーツを脱ぐと大きなマメができていた...くそぉ~、泣きっ面にハチとはこのことだ。
1時間近くかかってようやく頂上に到着。そこには疲れも吹き飛ばすような、壮大な眺めが広がっていた。
これが正真正銘360度の地平線。北海道「開陽台」から2年、僕は夢に見た地平線を本当に見ているんだなぁ...そう思うと感動で心が震えた。
僕が求めていた本物の地平線が広がっている。まるで大海のような壮大で果てしない大地が、どこまでもどこまでも続いている。僕はしばし時間を忘れ、その風景をうっとり眺めた。
子供のような笑顔
ユララに滞在中にシドニーからバイクで遊びに来ていた、ポールと仲良くなった。ここで一番はじめに話しかけてくれた人で、排気量は大分違うが同じホンダ車ということもあり、話が弾んだ。
これまで真冬の北海道ツーリングや日本一周など、僕の話を楽しそうに聞いてくれる。オーストラリアはどんなルートを走るんだ、子供のような笑顔で聞いてくるので、僕も下手な英語だが何とか気持ちに応えようと頑張った。
夢中で話をしていると、ポールの後に彼女が少しずつ近づいてきて、「もう、いい加減にしてよ、早く食事にしましょう」と目で訴えはじめた。これはヤバイ雰囲気...。少ししてポールも気がついたようだが、僕との話が面白くてなかなか自分のテントに戻れない。
ポールは彼女の様子を横目でチラチラ覗きながら、次第に落ち着きがなくなってきた。彼女のゴキゲンをそこねたらマズイと思い、僕が「じゃあ、また後で」と話を切ると、「シーユー」といって大急ぎで彼女の元へ走って行った。何だかその光景がホノボノしてて思わず顔が綻んだ。
その他にも数組みの家族と親しくなり、キャラバンカーに招待されてコーヒーをご馳走になったり、一緒に食事をしたり。みんな国籍やスタイル関係なく、接してくれる。特に旅行者は気さくな人が多く、住所を書いた紙を僕に渡し「近くに来たら私の家へ遊びにおいで」と言ってくれる人も少なくなかった。
こんな風にしてオーストラリア人は旅仲間の輪を広げて行くらしい。そういえば1ヶ月以上も一緒に旅をしているという夫婦もいた。僕はそんなオーストラリアスタイルが大好きだった。
日本は宿が中心だからこうはいかない、でも日本もこんな風に友だちの輪が広がったらいいのに、と思う。
楽しかったユララを出ると再び単調な世界が待っている。
スピードメーターの針を40km/hに合わせて走り続ければ、1時間後には確実に40km先にいる。何て単純明快な世界。僕の行方を遮るモノは何もない、自分が止まろうと思わない限り、一日中でも走っていられる、とんでもない世界だ。僕はひたすらアクセルを開け続けるだけ、目の前には流れる風景があるだけ。まるで僕はバイクの一部品のような気がしてくる、単調な道は生きている感覚さえ奪ってしまうのか。
ポートオーガスタ以来、久しぶりに町らしい町にやって来た。アリススプリングスだ。オーストラリア中部ではここが一番大きな町で、エアーズロック観光などの拠点となっている。人口は2万人足らずだが、不毛の大地を延々と走り続けて来た僕には、大都会に見える。
街の中心部には砂漠のど真ん中とは思えない、近代的なショッピングセンターやギフトショップが並んでいた。ヒゲはボウボウ、全身砂だらけの僕は少し浮いている存在のような気がするが、とりあえずこの町にいる限り、食べ物や水の心配をしなくていい。
ここでしばらく生気を養うことにしよう。そう思いながら、町外れにあるキャンプ場へ向かった。
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