BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.12

    「忘れ去られた雨」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.12 「忘れ去られた雨」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

カーナボンを過ぎた翌日。これまで雲の「く」の字も見当たらなかった青空に、グレー色の雲が南の空に姿を現した。その雲はみるみる間に範囲を広げ、空一面を覆い尽くしてしまった。そしてついに、もう限界とばかりに雨粒を落とし始めた。

2ヶ月ぶりの雨
2ヶ月ぶりの雨。雨が多くなると道の周りも賑やかになる。

「えっ? 雨、ホントかよ~っ」
雨は一体いつ以来だろう? 手帳をめくると最後の雨は6月27日と記してあった。ということは、今日が8月20日だから、約2ヶ月振りの雨じゃないか。これにはブッたまげた。
そんなわけで「雨」の文字は僕の辞書から消え去っていた。
徐々に雨粒が大きくなってきたので、レインウエアを着ようとバイクを止めるが、長い間使っていなかったのでどこにあるのかわからない。バックの底で海苔のようにパリパリになったレインウエアに袖を通すと、バリバリと音を立てたので大笑いした。
レインウエアを見てスタート当時を懐かしく思い出した。あのころは若かったなぁ...。
雲が多いということは乾燥した砂漠的な地域を抜けて、緑豊かな温暖な地域に近づいている証拠。パースも近い。

庭園都市「パース」

名も知らない花
名も知らない花だがあまりの美しさに、思わずシャッターを切った。

次の目的地、庭園都市「パース」が近づいてくると、徐々に町と町の間隔が短くなり、通り過ぎる車もどこか急ぎ足になった。服装もこぎれいになり、スーツ姿も目立つ。
都会は自分のペースで走れないので窮屈だが、久しぶりの都会はやはり興奮する。高層ビルを見上げながら、都会だ、ビルだ、と田舎から出てきたお上りさんのように、無邪気にはしゃいだ。
「このバイクで旅行してるのか?」
バイクを止め地図を広げていると日本語で声をかけられた。ヒゲをたっぷりと蓄えた中年男性で少しおしゃべりをした後「メシでも一緒に食べるか?」と誘ってくれた。

その人はオーストラリアの真珠関係の会社でダイビングの仕事をしている人で、半年は日本、半年はオーストラリアという生活を続けているという。「今はオフシーズンだからやることがなくて...ブラブラしてるんだよ、ガハハハ...」と豪快に笑う。日本のサラリーマンと違って、何だか自由に生きているぞっ、感じがすごくいい。
日本ではなかなか出会えない人に逢うとスゴク刺激になる。いろんな生き方もあるんだな。
最後に「時間があったら遊びにおいで」といってホテルの名前と住所を置いていってくれた。僕もオジサンと同じ歳になったら、オジサンのように豪快に笑えるオジサンになりたいものだ。

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