BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.16

    「ナラーボー平原へ突入」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.16 「ナラーボー平原へ突入」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

走り出すと荷物がいつもより25キロ近くも重いせいか、ちょっとしたギャップでもハンドルが取られ、車体がフラフラ動く。

モトラの勲章
日に日にモトラの勲章が増えていく。

坂道になると荷物が重くて今にも止まりそうな速度になってしまう。こんな調子でナラーバー平原を横断できるのか? 不安が津波のように押し寄せてくる。まあ、ガソリンは走れば走るほど軽くなるから少しずつラクになるだろう。
「...って、それよりシンだよ、あの野郎どこへいっちまったんだ」
顔を顰めハンドルを西へ向ける。トコトコと20kmほど走り、大陸横断鉄道の次の駅、ゴールデンブリッジにたどり着く。線路に沿って家が5建並んでいるだけの小さな集落だ。
パンをかじりながらシンを待っていると、ランドクルーザーが1台やって来た。近くに止まるとゴツイ男が降りてきて、ユーのフレンドからメッセージだといって小さなメモ用紙をくれた。
メモを開くとミミズのような文字がのたまう日本語が書いてあった。シンのメモで、どうやら少し手前のブッシュにいるらしく、ついさっきシンのすぐ近くを走り去る僕の姿を見たらしい。
なってこった。そんなわけで無事再会を果たす。
シンとブッシュで一泊キャンプをしてから、再びゴールデンブリッジへ行き、以前シンがお世話になった家を訪ねる。

「おう、また逢おうや」

ドアを開くと家族は手を広げて歓迎してくれた。最初の晩はデビッド家族に隣の夫婦も加わり、みんなで一緒にバーベキュー大会。
昼間は靴を蹴飛ばして棒を倒すという、わけの分からないゲームで盛り上がった。夜になると男だけがこっそり部屋に集まり怪しいビデオの鑑賞会、これは万国共通の男のつき合いらしい(笑)。
滞在3日目。長い付き合いとなったシンとも別れなくてはならない。昼メシに家の台所を借りて家族全員のピラフをふたりで製作。人参やキャベツ、タマネギ、セロリなど中身はごっちゃませだが味は上々。デビットたちも、思ったよりも喜んでくれた。
出発の時間が近づくに連れてシンも僕もしんみり...。そんな中嬉しいことに町の人総出で、僕たちを送り出してくれた。ひとりひとりと抱き合い、別れを惜しむ。
大きく手を振り、ふたりで走り出す。そしてふたりの分岐点にくると、シンともサヨナラだ。
「じゃあ行くよ」
「おう、また逢おうや」
お互いの情熱を確かめ合うように、固い握手をする。心は熱いが思うように言葉にならない。僕はただひたすらシンが小さくなる後ろ姿を、見送ることしかできなかった。最後までやり遂げろよ...

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