BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.23 / Vol.18

    「横断日記2」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.18 「横断日記2」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

ナラーバー平原横断4日目。ナラーバーは乾燥しているオーストラリア大陸の中でも、特に乾燥が激しい地域と聞いていたのに、朝起きると空一面を暗雲が覆い尽くしていた。まさかとは思うが一応、雨具を出しやすいところに入れておくが、キツネに摘まれた気分。

岩から砂へ
岩から砂へ。モトラと僕は砂の海をゆっくりと進む。

路面は相変わらず岩だらけだが、さすがに2日目ともなるとテクニックが向上しているのか、岩に激突する数も格段に減る。ところが調子に乗って飛ばしていると、人の顔半分ぐらいのサイズの岩を避けきれずに大激突、大ジャンプをしでかしてしまった。
うまく足をつき転倒は免れたが、冷や汗をかいた。落ち着いてバイクを見ると、岩がプラグ部に当たったらしく、プラグキャップは割れ、プラグ本体もグニャリと曲がっていた。
とりあえず致命的なダメージでなく、ホッとする。モトラはセンタースタンドがエンジンガードを兼ねているので、エンジンにぶつかることはないが、走っている場所が場所なだけに、エンジントラブルは命取りになりかねない。これからはもう少し慎重に走らなくてはと反省する。
曲がったプラグ交換をしていると、珍しく西側から車がやって来た。昨日の昼にローリナを出て以来、初めてみる車だ。
近くに止まると運転手が僕に向かって何か叫んでいる。意味が分からず首を傾げていると、助手席をゴソゴソ...「これはおまえのじゃないか?」と言って、見覚えのある水筒を取り出した。
「おお~っ、その水筒もしかして...僕のじゃないかっ!」
男が差し出したのは何と、昨日落とした僕の水筒だった。
有り難いことに落ちているのを見つけ、拾ってくれたらしい。

感謝感激、僕はホントに運がいい。

まったく感謝感激、僕はホントに運がいい。大喜びで受け取ると、持ってきてくれた人も、自分のことのように喜んでくれた。さらに幸運なことに水筒はほとんど傷もなく、水も入ったままだった。よかった、これならまだまだ使えそうだ。
お礼を言い車が立ち去ると、我慢していた水をガブガブ飲み、二度と落とさないようザックの奥に押し込んだ。これなら絶対に落ちないだろう。今度落としたらシャレにならないからな。
地平線にポツンと「フォレスト」の集落が見えてくると同時に岩が減り、今度は砂が多くなってきた。
家が5件並ぶだけのフォレストを抜けると、一段と砂が深くなり、セカンドギアを使わなくては進めなくなった。粒子が細かいフカフカの砂で、特に深いところでは30cmもある。ズブズブとハンドルを取られ、思うように走れない。ギアを落として、もがくように一歩一歩砂の海を進んで行く。
「くそ~っ、岩地獄の次は砂地獄かよー! バカヤローッ!」
大声で叫ぶが、状況は変わらない。地道に進むしかないのだ。
砂地獄は10km近くも続いた。ようやく抜け出すと疲れ果てて、もう一歩も動く気になれなかった。テントを張ると僕は気絶するように倒れ込み、泥のように眠る。 性も根も尽き果てた一日だった。

ナラーバー平原横断5日目

岩
この岩はくせものだった...

残りの食料を考えると今日中にクックに着きたい。このところ、アイドリングが安定せず、心なしかエンジンパワーも衰えた気がする。バイクの調子が今ひとつなので、エアクリーナーとオイルの汚れをチェックしたが、特に異常は見当たらなかった。
走り出すと砂地獄は完全に抜け出したようで岩は少なく40km近いハイスピードでグイグイ飛ばすことができた。天気も回復の兆し、昼過ぎには雲ひとつない青空が広がっていた。
太陽が地平線と交わる頃、地平線の彼方に、まるで大地のカサブタのような「クック」の町が姿を現した。
「やったーっ! クックだ! ヒャッホー!」
平原横断の中間地点となるクックは、出発前からひとつの目標に置いていた場所。うれしさの余り大声を上げた。
クックは人口100人足らずの小さな町。無事到着すると、町外れの空き地にテントを張ると地元の子供たちが集まって来きた。そのうち高校生ぐらいの少年がバイクに乗りたいと言い出した。今日は上機嫌、貸して上げると、キャーキャー大騒ぎだ。
夜になると再び少年がやってきて、良かった僕の家に来てシャワーをどうぞと勧めてくれた。横断を始めからまだ一度もシャワーを浴びていなかった僕は、二つ返事で伺うことにした。
シャワーでスッキリするとこれまでの疲れが吹き飛んだ。そしてクックまで来たという喜びで胸が一杯になる。

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