BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.26

    「アボリジニとの出会い」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.26 「アボリジニとの出会い」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

タナミトラックロードから「4WD ONLY(4輪駆動車専用道)」と記されたラジャマヌへ向かうルートへ突入。

砂の深い道をしばらく走ると、道の真ん中にアボリジニがふたり立っていたのでビックリ。慌ててバイクを止めた。
よく見ると男と女で、男は肩からライフルを下げているではないか。大丈夫か? 言葉が通じるのか分からないが、一応英語で声をかけるてみると、僕以上にきれいな英語が返ってきた。
どうしてもライフルが気になるので、その銃でカンガルーを撃つのか尋ねると、「違うよ、鳥を撃つんだ」と得意げに鳥を撃つポーズを取った。
ふたりは服はボロ切れのように擦り切れ、髪もボサボサ伸び放題で、いかにも貧しそうだ。しかし、何もないひたすらブッシュが広がる世界でどうやって暮らしているんだろう? おそらく自給自足に近い生活をしているのだと思う。
「ライターかマッチを持っていたら譲ってくれないか?」
男が聞いてきた。
「僕も手持ちのライターをひとつしか持っていないんだ」
僕がそう答えると、男は分かったと笑顔で頷いた。彼らにとっての火は、僕らの考えるそれよりも重要な存在なのだろう。

欲に捕らわれていない目

僕はそのときふたりの瞳を見てハッとした。
それは町で酔っぱらいくだをまいているアボリジニ達の濁った目とは明らかに違っていたからだ。うまく表現できないが、欲に捕らわれていない目に見えたのだ。
ふたりの姿を見ていると、文明世界に浸りきっている僕たち日本人は、文明の利器を使いこなし進化した人間と勘違いしているが、実は僕たちの方が人間として退化しているのではないか。そんな気がしてくる。
太古の昔は「衣食住」生活に必要なことは全て自分や家族の力で賄ってきたはず。狩りで食料を得、集めた草木で住居を造り、織物を編んでいた。しかし、今はどうだろう。お金さえあればレストランで食事ができるし、服も買える、もちろん家だって手に入る。

本当の意味で「生きる」ためのことをしていなくても、何かひとつ現金の手に入る仕事をしていれば、生きて行ける。そんな時代のお陰で、僕たちは何もできなくなってきているのではないか。
土の上で眠れない、野グソができない、焚き火ができない、ナイフが使えない、動物(食用のための)を殺せないなどなど...できないことがドンドン増えている。パソコンが打てればお金が手に入るかもしれないが、電気のない砂漠の中では何の役にも立たないだろう。
そんな僕達がブッシュで自給自足で暮らしているアボリジニよりも進んでいるといえるのだろうか? 実は僕たちは退化しているのではないか? 出逢ったアボリジニの姿を見て、そう思わずにはいられなかった。
手を振って走り出すと、ニコニコしながら手を振り返してくれた。短い時間だったが、アボリジニの人達と過ごすことができて本当にラッキーだったと思う。他では体験する事のできない、とても貴重な体験であった。

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