BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.29

    「まさかテントの中で...」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.29 「まさかテントの中で...」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

ドゥンマラを出て5日。北部横断ダートロードの最初の目的地ノーマントンに無事たどり着いた。

ダートロード
気もひとつない青空とはこのこと。ダートロードをひとり時速30kmでひた走る

オーストラリア全土の地図の中では太く大きな文字で記されていたので、大きな町だろうと期待していたが、着いてみると人口1000人にも満たない小さな町だった。日本地図で人口1000人足らずの町、というか集落が記されていることなどあり得ないのに。まったく、オーストラリアの地図にはやられっぱなしだ。
それでもこれまでの町に比べれば大きな町で、ガソリンスタンドはもちろん、ファーストフードからキャラバンパーク(キャンプ場)、スーパーマーケット、銀行まで必要なものは何でも揃っていた。
僕は「テイク・ア・ウェイ」に入ると、大好きなチキンバーガーを思い切りほおばった。幸せを胃袋で感じる瞬間だ。
ノーマントンを出ると所々舗装が現れるようになり、車の量も格段に増えたことで、難所は越えたことを実感した。
その翌日、次の町までたどり着けず、ブッシュにテントを張ることになった。そこは疎らなブッシュの中に蟻塚がポツポツと立っている、北部のどこにでもあるような場所だった。
焚き火で茶を沸かし、簡単な食事を終えてテントでくつろいでいると、どこからか人の唸り声のような声が聞こえきた。えっ、こんな奥地に人がいるの。ウソだろ。しかし、どう考えても人間の、それも苦しんでいる声にしか聞こえない。
辺りはもう真っ暗、何だか段々怖くなってきた。改めて耳の穴をかっぽじって、よ~く耳を澄ませると、むむっ、微かに蹄のような音が聞こえぞ。さらにむしゃむしゃと草を食べる音も聞こえる...ということは、あれ、もしかして、牛の声だったりして...アハハハ...。早とちりな自分に苦笑いをした。
ところが翌朝には笑えないようなことが起こった。

目の前を歩くアリの行列

ガソリンスタンド
これがガソリンスタンド!? どんなガソリンでもいい、とにかくエンジンが動けばね

僕は目の前を歩くアリの行列に驚いて目を覚ました。初めは半分寝ぼけていて良くわからなかったが、それがもの凄い数なのでひっくり返りそうになった。
列の先を辿ると、何と、昨晩食べたコーン缶詰の残り汁に向かっていた。缶の中を恐る恐る覗くと
「ギョェ~ッ!」
思わず声を張り上げた。あずきの缶だったかと思ってしまうほどの、おびただしい数のアリの死体が汁に浮かび、缶の中が真っ黒に染まっていたからだ。僕は吐き気を感じ、這うようにテントから飛び出した。うぇ~っ。
あんなところで寝ていたのかとゾッとする。テントの中の荷物を外に出し、最後にテッシュで缶を掴み、そ~っと外へ置いた。
テントが空になると持ち上げて逆さまにし、バタバタと揺らしアリを追い出した。それしても凄まじい数だ...。
その日から蟻塚の近くには死んでもテントを張らない!と固く固く誓ったことは、言うまでもないだろう。

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