BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.32

    「ファンタでヘベレケ」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.32 「ファンタでヘベレケ」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

翌朝、見渡したところテントに弾痕は見当たらなかった。ホッとして外を見ると、うわっ。テントの周りに無数のフンが転がっているではないか。どういうこと? 視線を遠くにやると、20mほど離れた木の下に30頭ほどの牛がたむろし、こちらの様子をジーッと窺っていた。奴らの仕業だな。それにしても驚くことが続く。

オーストラリアと砂
オーストラリアと砂は切っても切れない関係?

周りの様子から、僕が牛達の憩い場を占拠してしまったということが分かった。これは申し訳ないことをした。急いでテントを畳むが、牛達の熱い視線がグサグサ突き刺さる。はいはい、分かりました、すぐ退散しますよ(笑)。ごめんね~。
走り出すと昨日の目的地にしていたロードハウスは僅か5km先にあった。昨日あと5km走っていれば、怖い目に遭わずにすんだのか。ホントに後少しだったんだなぁ。
給油を終え走り始めて1時間くらいだろうか、前方からバイクがやって来た。こんなところで、珍しい。手を挙げながらチラッとヘルメットの奥を覗くと、驚いたことに日本人だった。
近藤さんは今から2週間前、ケープヨークへ向かう途中、地面に隠れたクラックにタイヤを取られて大転倒。
「そんで情けないことにフライングドクターのお世話になっちゃって...飛行機でケアンズの病院に運ばれたんですよ...」
苦笑いをしながら、埃だらけの頭をポリポリと掻いた。
約2週間の入院でケガはほぼ完治したので、事故現場近くに預けていたバイクを引き取ってきたのだという。
「ケアンズで準備して、もう一回チャレンジするよ!」
「いいですね、僕はバイクが小さくて時間がかかるから、またどこかで、会えるかもしれませんね!」
「そうだね、またすぐ出てくる予定だから会えるんじゃない。とにかく、フライングドクターのお世話だけにはならないようにね」
近藤さんとオンボロXT250はトトトトトッ...と頼りない排気音を残し、ジャングルの中へ吸い込まれていった。
大ケガをしたのに、また挑戦するなんて...パワーあるなぁ。よ~し、僕も頑張るぞ!!

2日目の夜

上半身裸でパンク修理
気温40度、上半身裸でパンク修理

ハンリバーのロードハウスの外れでテントを広げていると、来る途中で知り合った、4WDのふたり組が僕のテントにやって来た。
ライオンのように伸びた無精ヒゲ、埃と油が染み込んでだ雑巾一歩手前の作業着、遠慮のない言葉と態度。普通の人ならちょっと引きそうなふたりなのだが、なぜか気が合い(自分と同じ匂いがするから?)、一時間近くも道端で話し込んでしまった。
昼間はビールを一緒に飲もうと誘われたのだが、アルコールが苦手だと断っていたのに(ホントにこう見えても下戸なんです...)またまた宴会が始まってしまった。酒ばかり飲んでいて、ここからさらに200km先のコーエンまで行けるの?
「そうか、カンイチはアルコールはダメだったんだな、よーし分かった、良い考えがあるぞ」
ニヤリ笑うと、男はスタンドでファンタを買ってきて、その中に透き通った液体(たぶんジン)を2,3滴注いだ。
「これなら飲めるだろ」
恐る恐る口をつけると、味はほとんどジュース。少しアルコール臭が鼻を突くがこれなら何とか飲めそうだった。
ところが調子に乗って3、4杯飲んだあたりから突然、気持ちが悪くなってきた。しゃべる気にもなれないくらいひどい。
その場は何とか繕ったが、ふたり組が帰っていった後もしばらくその場から動けず、テントの中でウンウン唸る。
「ああ神様、もう二度と調子に乗ってアルコールは飲みません」
固く固く心に誓った。

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