BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.34

    「障害物競走はつづく」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.34 「障害物競走はつづく」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

ウェィンロックリバーから20kmほど走ったところにあるテレグラフタワー(電波塔)の近くにテントを張る。人工物のないジャングルの奥地にいると、人の気配があるところが恋しくなるのだ。

パースの車検場
こんな風に凄まじい道が延々と続くのである

テレグラフタワーには運良く泊まりで作業をしている人がいた。お願いをして水を分けてもらう。ところが、お茶でも沸かして飲もうかな~と思いバイクを見ると、何とフレームに取り付けていたハンゴウがなくなっているではないか。
「うそ、マジかよ」
あの激しい振動でゴムが外れて、落ちたのだろうか。それにしても、あれだけ大きい物が落ちたんだから、気が付きそうだよな。
クソーッ、それにしても悔しいな。これからは火を使うものは食べられないということじゃないかのか。ああ、悔しい。
ヤケクソ気味にパンとコーンを水で胃袋に流し込んだ。
ケープヨーク行5日目。手持ちの食料も底を付き始めているし、ガソリンの残量も心配なので、今日中に何としてもバマガの町にたどり着きたい。
モトラに乗ったままでも渡れるれるような浅い川を2つ越え、しばらく走ったところで、道が突然「消えた」。
厳密に言うと消えたのではなく、土砂崩れで20mほど道が崩れなくなっていた。歩いて状況を探ると土がズッポリと抜け落ち、ほとんど直角にえぐり取られていた。この状態ではどう考えてもバイクで通過するのは不可能。それにしても、よくもまあ、次から次に難関が現れるもんだ。まるでバイク版の障害物競走だよ...。

これでも一応メインルートなんだから、どこかに必ず迂回路があるはず。そう思い探し始めるとすぐ近くに下れそうな斜面が、さらに30mほど離れたところにバイクでも通れそうな崖があった。
見た感じ、崖の斜度は45°長さおよそ4mだ。これなら何とか行ける。ギアをスーパーローにシフトチェンジする。
「よ~し、行くぞ~、おりゃぁぁぁぁぁぁっ!」
気合いと共にアクセルを全開、バイクを一気に押し上げた。
グゥオオオ~~ン!
ジャングル切り裂くようなエンジン音を撒き散らしながら、モトラは崖の上へ到達した。 「ひゃほっ!」
ターザンのような雄叫びを上げる。

実写版テレビゲームの中を走っているようだ

パースの車検場
巨大な黒猪の死骸が転がっていた

それからも道は変幻自在に表情を変えた。崖、砂、コルゲーション、ひび割れ...何でもありだ。そして風景もジャングルのトンネルを抜けたと思ったら、今度は大草原が現れる。まるで実写版テレビゲームの中を走っているようだった。
再びジャングルになると、予定外の分かれ道が現れた。道標がないのでどちらへ行けばいいのか分からない。それは僕の持っている情報にはない分岐点だった。どういうこと
ガソリン残量を考えると、ここで道を間違えることは絶対に許されない。
見たところ、すぐ先で川が交差していている左の道の方が車の轍は多い気がするが...方向的には右の道が本線のような気がする。しかし、どちらにしても決定的な判断材料にはならないな。車が通れば聞けるのだが、今日は朝から車の「ク」の字も見ていない。
散々悩んだ末、日本の林道で迷ったときの鉄則に当てはめ、轍の多い左の道を選んだ。

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