BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.40

    「まさか...モトラが動かない...」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.40 「まさか...モトラが動かない...」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

ここで川にエンジンを落としたら、元の木阿弥だ。必死に体勢を持ち直し、どうにか最悪の事態は免れた。ああ、良かった。冷や汗を拭う。あと少しでとんでもないことになるところだった。

ゴキゲンの僕
対岸でエンジンを載せ終えてゴキゲンの僕

対岸に全てを運ぶと、エンジンの取り付けに取りかかった。
プラモデル作りにハマっていた小学生時代、説明書通りに組み立てたつもりが、最後にいつも1つ2つ部品が残っていた僕だが、今回ばかりはそうはいかない。絶対に部品が残らないようにしなくっちゃ...。プレッシャーが重くのしかかる。
壊れた水道の蛇口のように額から汗が流れ落ちる。日陰になる場所がないため、直射日光が当たるので余計に暑い。服を一枚、二枚と脱ぎ、パンツ一枚になってもまだ暑い。
滝のような汗の中で格闘すること数十分、ようやく組み上がった。もちろんどこを探してもネジ一本落ちていない。完璧、ぺきかんだ。
荷物を再びパッキングしてキャリアに積み込む。さあ、これで走れるぞと喜び勇んで、キックスターターを踏み降ろす。
「トトトトトトトトト...」
一発でエンジンは目を覚ました。ホッとする瞬間。と、と、ところが...アクセルをいくら開けても、パランパランと不安定な排気音を響かせるだけで、回転が上がらないではないか。一体どういうことだ? 無理矢理走ろうとするが進まない。

「ウソだろ...」

命がけの急斜面の坂道
バイクを止めるのも命がけの急斜面の坂道が続く

僕は全身の力が抜け、空気の抜けた風船のようにヘナヘナとその場にへたり込んでしまった。こんなことがあっていいのか...まるで太陽が沈んだように目の前が真っ暗になった。信じられない。
しかし、落ち込んでばかりはいられなかった、何とかして原因を突き止めなくては。ここで旅を終わらせたくない!
とにかく自分で分かることは全てチェックする。エアクリーナーとキャブレターは問題はなさそう。次にプラグ。少し濡れていたので乾かしてエンジンをかけてみるが、状況は変わらず。どこだよ!?
残るは電気系。間違った配線をしていないか、一本一本確認して行くが、どれも合っている。これでもう自分がチェックできるところはなくなった。もうダメだ、悔しいけどどうにもならない。
「ここで旅が終わるのか...自分のミスで終わるなんて、最悪パターンだよなぁ~、あ~あ、くそ~っ、悔しいな...」
口では諦めたようなことを言いながら、さらにしつこくモトラを見て回る。電気系なのは確かなんだけど...どこなんだ原因は。諦めきれずモトラを睨み付けていると、車体はほとんど乾いているのにポタポタと水が落ちているところがあった。その先を追って行くと、それはCDIのビニールカバーだった。カバーを外すと、大量の水がドバッと溢れ出た。
「これか!?」
テッシュで水分をふき取り、キック。アクセルを開けると...おおっ、回転が上がるじゃないか。これだったのか! センタースタンドを上げてアクセルを開けると、モトラは勢い良く走り出した。
「やったーっ、走るぞ、旅が続けられる、やった、やった!」
まさに地獄から天国。拳を空に突き上げ、喜びを爆発させた。

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