BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周 夢大陸オーストラリア編

    2008.11.24 / Vol.42

    「大陸の狂った鳥」

CREDIT

    • ライター
    • 執筆

    藤原かんいち

    • 撮影

    藤原かんいち

    • バイク

    モトラ

VOL.42 「大陸の狂った鳥」[夢大陸オーストラリア - 番外編 -]

それにしても車が多くて走りにくい。
最高でも時速50kmしか出ないモトラは、かなり交通の妨げになっているようで、気が付くといつも僕の後に車の渋滞ができていた。ついこの前まではどこをどう走っても自由だったのに...。

ゴールドコースト
サーファーが集まるゴールドコーストを散策

ナラーバー平原やケープヨークを気ままに走っていた頃を懐かしく思い出している時だった。
「ガーッ、ガーッ!」
突然ヘルメット越しに鳥の声が聞こえきた。ハイウェイを走っているのに、どうして鳥の声が? 気のせいか?
「ガーッ、ガーッ、ガーッ!」
やっぱり聞こえる。しかし辺りを見渡しても鳥の姿はない。どこだろう? 何気なく振り返ると、な、な、な、なんと、僕に襲いかからんばかりに、黒い鳥が追いかけて来ているではないか。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁっ!」
マジかよ。驚いて左手をグルグルと回し追い払おうとするが、怯む気配も見せず、グングン僕に近づいてくる。
「な、な、な、なんだこの鳥は!? コノヤローッ、あっち行け!」
バイクを止めて、叫びながら勢い良くヘルメットを振り回す。すると少し驚いたらしく、スーッと舞い上がり木の上に留まった。だが僕の様子をジーッと窺っていて、逃げる気配はない。

日本人のオートバイ旅行者が鳥に襲われて死亡?

ヒゲは伸び放題
残り1週間、ヒゲは伸び放題、荷物は随分と軽そうだ

とりあえず襲ってきそうにないと思い走り始めると、驚いたことにまた追いかけて来るではないか。何て鳥だ!? あの鋭いくちばしで首を刺されたら...そう思うと急に怖くなった。
日本人のオートバイ旅行者が鳥に襲われて死亡
そんな新聞見出しが、脳裏をよぎる。イヤだイヤだ、それだけは勘弁してくれ~。ひたすらアクセル全開で逃げる。僕は体を丸くして、ただただ逃げるしかなかった。
5~600m追いかけて来ただろうか、ようやく姿が見えなくなった。それにしても、バイクを追いかける鳥なんて初めてだ。完全に狂ってるよ。砂漠で野垂れ死ぬのもイヤだけど、鳥に襲われて死ぬなんてシャレにならない。
だが安心したのもつかの間、しばらくすると今度は2羽で襲って来るではないか。僕をめがけて急降下、頭上スレスレを掠めて行く、恐ろしいったらありゃしない。三脚を振り回して応戦するが効き目ナシ。やっぱり逃げるしかない。慌ててバイクに跨った。
「ヒェ~ッ、助けて~!」
ロックハンプトンまで10km以上こんなことが繰り返された。鳥地獄から開放されたところで地元の人にその話をすると
「今は産卵のシーズンだから、親鳥が卵を守るために自分のエリアに入ってきた不審者を追い払っているじゃないかな」
という。ふ~ん、なるほどね...。でも待てよ、どうして僕が不審者なの? まあ確かに格好は小汚いし、ヒゲは伸び放題でかなり怪し気だけど...。鳥に人相まで分からないだろ!?

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