BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
パッソル
VOL.18 『 トップオブザヨーロッパ 』[ヨーロッパ大陸編]

ドイツで日本を思い出す

「黒い森」と呼ばれるドイツ南部に広がる森林丘陵地帯へ向かう。
森に黒と名前が付くくらいだから、これは昼間でも暗い、うっそうとした深い森が続いているのだろう...と期待していたら、これが関東近郊の山をツーリングしていたら普通にありそうな山道なのでがっかりする。
緑豊かな山の斜面をクネクネと延びる道、その風景が日本に似ているので、走っているうちに、いま自分がいるのが日本なのかドイツなのかわからなくなる。おまけにヨーロッパはバケーションシーズンなのでバイクがいっぱい、次々にパッソルの横を走り抜けて行く。まるで夏の奥多摩か箱根をツーリングしているみたいだ。違うのは右側通行なのと車のナンバーくらい、それ以外は何も変わらなかった。
スイス国境が見えてくる。
EUでは国境の建物さえなかったが、スイスは料金所のようなイミグレーション施設があり、いかにも国境という感じだ。これまでとはちょっと様子が違うので、緊張しながらスピードを徐々に緩める。顔が確認できるところまで近づくと係官が「はいどうぞ!」と指を横に振った。特にパスポートチェックなどはないようだ。
無事スイス入国! この瞬間、新しい扉を開けたような、新鮮な気分になる。
トップオブザヨーロッパ

さあ、スイスの旅が始まりだぁ~と喜んだのもつかの間、スイスの物価の高さにいきなりふたりの目が飛び出しそうになった。
最初に着いたチューリッヒのツーリストインフォメーションで、ホテルが一番安くても1万円以上と言われて「げげげげっ...」と驚き。とりあえず夕食と、近くのファーストフードへ行ったところ、メニューにドネルケバブが800円、コーラ(500ml)のペットボトルが320円と書かれてあるのに「マジ~ッ!」と目を疑い。
そして最後には、インターネットカフェで1時間1300円も取られたときは半分キレた。これまでは300円位でできたのに、何で4倍以上もするんだぁ!?
おっといけない、スイスの魅力は自然にあるんだと、はたと気が付いた僕たちはチューリッヒでひと仕事を終えると、すぐにインターラーケンへと向かった。

町を出ると湖の向かうに山が連なるスイスらしい雄大な自然が広がる。やっぱりスイスはこれだよ、後ろのヒロコに向かって手を振る。ヒロコも嬉しそうに大きく手を振る。
インターラーケンはスイスアルプス観光の拠点の町。着いた日は大雨だったが、翌日にはウソのように晴れ、さらに翌々日の朝には雲ひとつない青空が広がった。
その青空を見た途端、予定なかった「ユングフラウヨッホ(標高3454m)」へ行きを決心した。ユングフラウヨッホは登山列車で行けるヨーロッパ最高峰。スイスアルプスを訪れた人なら一度は訪れてみたい憧れの場所。そんなすごい場所に、こんな最高の天気に行けるチャンスは滅多にない。そう思った僕は、もういてもたってもいられなくなったのだ。

列車に乗り込むとすぐに満員になる。動き出すとみんなカメラを取り出して窓から写真を撮りまくっている。みんなも僕たちと同じように期待に胸が膨らんでいるんだろう。
急勾配を登り続けること1時間半。トンネルにある終点駅から外の展望台に出ると、目の覚めるような風景が広がった。手が届きそうなところで氷河が白く光り、その向こうでは険しい岩山が切り立っている。空はどこまでも広く青い。
「もう、最高だね!」
「来てホントによかった!」
目の前に広がる、夢のような大自然の風景を眺めながら僕たちは何度もそう呟いた。
旅の大先輩、はるみ&クルト

さらにスイスでは、友人の紹介で約20年前にタンデムで世界一周をした、日本人のはるみさんとスイス人のクルトさんご夫婦の家を訪ねた。
初めて会うのだが同じ世界一周ライダーということですぐに意気投合。旅のことや共通の友人のこと、夫婦のことなどを楽しくおしゃべりした。さらに夜はふたりがサイドカーで冬のシベリアを横断した時のビデオを見せてもらったが、-20~30℃という厳しい世界を楽しんでいるのがとても痛快だった。本当にバイクツーリングが好きなんだなぁ。
そこでヨーロッパで一番高い峠(PASSO DELLO STELVIO/標高2758m)が、予定ルートからそう離れていないということを小耳に挟んだ僕は、登山列車で行ったユングフラウヨッホに次いで、今度はパッソルで行けるヨーロッパ最高峰へ挑戦することにした。
新しい目的ができてすっかり盛り上がっている僕の横でヒロコは
「あらあら、また余計なこと聞いちゃったわね...」
と苦笑い。
パッソルとヨーロッパで一番高い場所へ

7月後半のオランダからドイツ、ルクセンブルグ、スイスまでの1ヶ月は本当によく雨に降られた。それも日本の梅雨のようにシトシトと一日中降り続けるのだから厄介だ。
せっかくの峠に着いてもずぶ濡れの上に視界ゼロでは、峠の楽しみも半減。雨が降り続くリヒテンシュタインで2日間停滞をして、雨が上がったところを見計らい「明日の峠では晴れてくれ!」と祈るような気持ちで、リヒテンシュタインを出発する。
まずは最初の難関である2388mのフルエラ峠に半日がかりで到着。
霧がかかっているが、よく見ると周りの山肌には数日前に降ったと思われる雪が積もっている。バイクを降りて雪に触ってみる、
「うわぁ、つめてーっ!」
外気温8.5℃、8月中旬とは思えない寒さだ。

1000m位下がったところにあるゼネズという町で一泊。翌日、起きたときは曇っていたが、みるみる雲が切れ、出発する頃には青空が広がった。森を抜けると、道は山の斜面をなぞるようにクネクネと延びるようになる。先行して数キロ先で待っているヒロコと会うたびにバッテリーの残量を確認。メモリが残り1つになったところから一緒に走り、使い切る少し手前で充電したバッテリーと交換する。
一度標高2149mの峠まで登ったが、標高1375mのサンタマリアまで一気に駆け下りる。サンタマリアは歴史のある町で、壁に独特の模様が描かれている古い建物が多く、まるで絵本に出てくる町のよう。これまでのスイスの町とは違った雰囲気なのは、イタリアが近いせいだろうか。昼を簡単に済ませると再び山を登り始める。
道はクネクネの九十九折れから、ダートに変わった。

登り坂の連続に、ついにパッソルの「HEAT」マークが点灯。しばらく登ると、ついにモーターがストップ。しかし慌てず騒がず、しばらくキーをオフにして、熱くなったモーターを冷やす。そして再スタート。これを何度も繰り返し、少しづつ距離を伸ばしてゆく。登り坂が長時間続くのはきついが、降りて押すほどの急勾配ではないのが救いだ。
森林限界を超えると、周りは乾燥した短い草とゴツゴツした岩だけになる。山の上の方に建物が見えるが、あそこが峠だろうか?
カーブをいくつ曲がっただろう、前方に文字の書かれた標識が見えてきた。その先には建物が見える。標識の下に人がいる。あっ、ヒロコだ。ヒロコが僕に向かって手を振っている。峠だ。パソデロステルビオに着いたんだ。
「ひゃほーっ、やったぁーっ!」
コブシを握り、ガッツポーズ。僕たちはついにパッソルと共に、ヨーロッパで一番高い峠、パソデロステルビオに立ったのだ。ヒロコやったね。
バイクミーティングとキャラ&ヴェレーノ

アルプスを越えてイタリアに入る。
ロベルトという町のバイク駐車場に止まっているバイクの写真を撮っていると、ちょうどその持ち主が帰ってきた。「面白いバイクだね!」「電動バイクなの?」と会話が始まる。
そこで彼が、今日この町でバイカーのミーティングがあるんだけど見ていったら?と言う。ヨーロッパライダーのミーティングは見たことがないので、いいチャンスと思い、彼の後をついて行く。
溜まり場らしきバーへ行くと、クラブのリーダーらしき人を紹介してくれた。それからは次々に仲間がやってきて「へぇ日本から」「世界一周してるんだ」「それも電動バイクで?」「ちょっと見せてくれよ!」「これで、信じられないぜ!」と盛り上がる。

さらにリーダーから、せっかくだから今夜のイベントで、日本語で挨拶してくれないかと依頼されてしまった。こうなったら、何でもやっちゃいますよ、とノリで引き受ける。
それからどんどん人が集まりアタフタしていると、クラブメンバーのひとり小柄で陽気な女性のキャラと、背高い男性のヴェレーノが、わけがわからずオロオロしている僕たちを助けてくれた。キャラは英語が得意なのでイタリア語のわからない僕たちは大助かりだ。
7時ごろ時間が空いたので4人で食事をすることにする。テーブルを囲んでおしゃべりに花が咲く。住所交換して日本に来たら家に遊びにおいで、一緒にツーリングをしようよ、というとふたりとも大喜び。特にヴェレーノは「うおおおっ!」と怪獣のような叫び声を上げて喜んだ。ヴェレーノは腕に日本語で「毒」とタトゥーを入れているし、バイクもヤマハだから日本に興味があるのだろう。ふたりが日本に来たら楽しそうだなぁ。

夜のイベントにはヨーロッパ各地から360台ものバイクが大集合。それが全部一列に連なって数キロ先にある丘を目指すのだが、その姿は壮観の一言。パトカーが先導して、さらにスタッフのバイクが先回りをして、横道から車が入れないように横道にバイクを止める。この時間だけは僕たち専用の道というわけだ。
丘の上には平和の鐘があり、トーチを持った人たちが鐘を囲み、みんなで世界平和を祈った。そして、僕たちもステージに立つと、恥ずかしながら日本語で「世界が平和でありますように!」とスピーチ。それは3、4時間前には想像もできないシーンだった。
それはまさに「明日がわからない、それが旅」という言葉そのまま。どうやらまたひとつ心に残る、忘れられない一日が増えたようだ。

○スイス/チューリッヒ→→→○スロヴェニア/リュブリャーナ
取材・文/藤原かんいち&ヒロコ
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