BBB MAGAZINE

  • 藤原かんいち電動バイク世界一周

    2007.11.02 / Vol.19

    電動バイク世界一周の旅『 アドリア海の真珠 』

CREDIT

VOL.19 『 アドリア海の真珠 』[ヨーロッパ大陸編]

藤原かんいちの冒険ツーリング

国境を越えて

スロベニアの首都「リュブリャーナ」
スロベニアの首都「リュブリャーナ」は思っていたよりも近代的だったのでビックリ

スロベニアと国境を接する町ゴリザでイタリア最後の夜を過ごした。

そして翌朝。緊張しながら国境へ向かう。これまでの国境はほとんどがEU加盟国同士なのでフリーパス同然だったが、この先はちょっと変わるはずだ。
国境まで数百メートルのところまで来ると、並行する隣の通りに露店を出すキャンピングカーがズラッと並んでいた。スロベニアから物を売りに来ている人たちなのだろう。この雰囲気こそ国境、という感じだ。

遮断機が下りた国境事務所の前にバイクを止めると、ポリスが僕達に向かって「ノーノー、国境は越えられない」と手を横に振った。
「ええっ、うそーっ!」

よく話を聞くと、どうやらここはローカルの人たちが通る国境で、外国人は数キロ離れた別の国境を通らなければいけない、ということだった。ああ良かった、国境が封鎖されているのかと思ったよ。
もうひとつの国境は思ったよりものどかで、通過する車はほとんどなかった。
パスポートにポンとスタンプを押して終わり(押さなくてもいいようだったが...)。思ったよりも簡単な国境越えで良かったが、ちょっと物足りないような気もした。

スロベニアを楽しむ

リュブリャニツァ川に架かる竜の橋
リュブリャーナの中心を流れるリュブリャニツァ川に架かる竜の橋。その欄干に立っているのがこの竜は市のシンボルにもなっている

冷たい雨が降り続く中、首都のリュブリャーナに到着した。ビルはポツポツとしかないが、まあ、それなりに大きな町だ。
とりあえず宿の情報を仕入れようとツーリストインフォメーションへ行くと、押すな押すなの大混雑だった。見所も多くないので観光客も少ないと思ったら、大違いだった。それなのに担当者は女の人ひとり、なかなか質問を聞いてもらえず苦労した。

物価は意外と高く、ホテルは1万円以上が当たり前のようだった。仕方なく町から4kmほど離れたペンションに泊まることにする。限りある資金、大切にしなくては!


洞窟城
123mもある断崖にめり込むように建っている洞窟城。内部には16~19世紀の家具や絵が展示されている

落ち着くとパッソルは宿に置いて、マジェスティにふたりで60kmのところにある"ポストイナ鍾乳洞"を訪ねた。まずトロッコに乗ると、いきなり洞窟の中をハイスピードで疾走した。右に左に揺れまくり、いろんな形の鍾乳石が次々に後方に消えてゆく。なんだか遊園地みたいだ。

その奥はガイドと一緒に歩いて見学、洞窟は桁違いに大きく、いままでに見たこともないような不思議な形をした鍾乳石がたくさんあり、なかなか楽しかった。(撮影禁止で見せられないのが残念!)
その後は、近くにある洞窟城を見学。断崖の洞窟に作られたお城はホラー映画の舞台になりそうな雰囲気で、僕はお金をもらっても住みたくないと思った。周りの風景はのんびりしているんだけどなぁ...

予想外だったクロアチア

クロアチア
クロアチアに入り思わずガッツポーズ。未知の国を訪れるときはいつもワクワク。どんな出来事が待ち受けているのだろう

次に向かったがクロアチアは、1992年まで独立戦争をしていた国。
だが、格闘技好きの僕はクロアチアと聞くと、どうしても真っ先にミルコ・クロコップを思い浮かべてしまう。そんなわけで"強くて、クールで、きれい好き"という勝手なイメージがあったのだが、実際のクロアチアはちょっと違っていた。

首都ザグレブの道はデコボコ、路肩にはゴミの山、立て看板は多い、商店もまとまりがなくゴチャゴチャしている。そして泊まった宿には落書きがいっぱいだった(安かったから仕方がないけど...)。一日で持っていたイメージは吹き飛んだが、逆に気取りがなく、親しみが持てる国でもあった。


プリトヴィッツェ湖群国立公園
プリトヴィッツェ湖群国立公園は一時「危機にさらされている世界遺産」のリストに登録されたが、今は本来の姿を取り戻している

ザグレブを出ると"プリトヴィッツェ湖群国立公園"へ向かった。公園が近くなると、SOBE(一般家族の部屋を旅行者に開放している民宿)の看板が急激に増えた。きっと地元の人にとっては大切な収入源なのだろう。すぐ隣のラコビカの町など、半分以上の家がSOBEじゃないかというくらい多く、逆にどこするか決めるのに困るほどだった。

この"プリトヴィッツェ湖群国立公園"は独立戦争の時には「危機にさらされている世界遺産」のリストに登録されたというが、訪れてみるとそんなことが信じられないくらい、美しい自然本来の姿を取り戻していた。

大小16の湖と92ヵ所の滝があるという公園を、僕たちは森の中や湖畔を歩いたり、水の中を泳ぎ回る魚や、断崖流れる滝を見たりしながら過ごした。空気もとてもおいしく、やっぱり人間は自然と触れる時間が必要だと改めて思った。

アドリア海の真珠

聖ヤコブ大聖堂
中世の町並みが残るシベニクにある聖ヤコブ大聖堂は15から16世紀に建てられたものでゴシック様式とルネッサンス様式が見事に融合している

クロアチアを縦断してザダールに出ると、青い海が目の前に広がった。
海がきれいなのはもちろんのこと、クロアチアの海岸線には中世の面影を残す魅力的な町が数多く残っている。ザダール、シベニク、トロギール、スピリット...点在するこれらの町は数十キロしか離れていないので、僕たちは個性のある町をひとつひとつ訪ねながら、ゆっくりと南下することにした。

最初の町ザダールで泊まったSOBEでは、笑顔を絶やさない奥さんがとてもチャーミングだった。3泊したのだが、最後の夜は記念に家族みんなの名前を日本語で書いてプレゼントすると、旦那さんは「どこかに貼っておこうかな!」と、とても嬉しそうだった。


ハイライトアドリア海の真珠
これがクロアチア観光のハイライトアドリア海の真珠と言われるドブロヴニク。城壁に囲まれたオレンジの屋根の旧市街と青い海のコントラストが美しい

次に訪れたスピリットでは、横に並んだ車の人が「どこのメーカー?」「電気バイク?」興味シンシンで声をかけてきた。その人はヤマハに勤めているらしく、はじめて見るバイクに大興奮している。道を聞くと、車で先導してあげるよ、といってわざわざ町の中心まで連れて行ってくれた。

パッソルの話の後、ウエブサイトはあるのかと聞かれ「日本語だけど...」と応えると「あははは...それは困った!」と大笑い。海を越えたバイク仲間とおしゃべりはとても楽しかった。
走りながら眺めるアドリア海は青く透き通り、ビーチや入江はどこも夏を楽しむヨーロッパ人でいっぱいだった。チェアに横たわりみんな気持ちよさそうだ。

クロアチアに入って13日目。入り組んだ海岸線の向こうに、一番の目的地"ドブロヴニク"の町が見えてきた。
実際に着いてみると、ドブロヴニクは別格の美しさだった。特に丘の上から眺める旧市街はまさに絶景。青い海に突き出した城壁の中に、積み重なるオレンジ色の屋根。それは「アドリア海の真珠」と呼ばれるのが十分納得できるほどきれいだった。

ルート = スロべニア/リュブリャーナ → クロアチア/ドブロヴニク
取材・文/藤原かんいち&ヒロコ

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