BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
パッソル
VOL.20 『 戦争の傷跡 』[ヨーロッパ大陸編]

戦争の傷跡

前回、ヨーロッパを訪れたとき(1991年)は、ユーゴスラビア国内は独立戦争の真っ只中。とても外国人旅行者が入れる状況ではなかった。
...あれから14年。
世界地図からユーゴスラビアという国の名は消え、5つの国となってそれぞれの道を歩き始めた。問題を抱える地域は一部残っているが、和平は大きく進み、外国人が自由に旅行できるほど安全になった。
僕たちが旧ユーゴスラビアの国クロアチアの次に向かったのが、ボスニア・ヘルツェゴビナ。ここは主要三民族がそれぞれの領域拡大のために、お互いの土地を奪い合い、殺し合ったという、悲しい過去を持った国。(過去といっても和平協定を結んでまだ10年だが...)
そんな戦争の傷跡をいきなり目にしたのが、モスタルという町だった。
町のメインストリートに入ると、破壊攻撃を受けて廃墟となった高層ビルや集合住宅が、手付かずのままいくつも放置されていたのだ。それはまるで生きている人と人の間にミイラが座っているような、異様な風景だった。さらによく見ると、人が住んでいる団地の壁にも、凄まじい数の弾痕がクッキリと残っているではないか...

「こ、こ、これは...」
生々しい戦争の傷跡は目を覆いたくなるほどだった。
道路沿いで見つけた宿に荷物を置き、旧市街へ行ってみる。
ガイドブックには町の象徴である"スタリ・モスト橋"は、破壊されたと書かれてあったが、行ってみると修復されたらしく、きれいな橋が架かっていた。
訪れる人もなく閑散としているのかと思っていたが、スタリ・モスト橋へ続く通りには土産屋やレストランがズラリと並び、観光客もたくさん歩いていた。活気もあり、とても賑やか。遠足らしき子供達がたくさん遊びに来ていて、橋を楽しそうに走り回っている。
道を一本入るだけで全く別世界、そこにはここで戦場になったとは想像ができない、平和な風景が広がっていた。
壊れた建物のように、傷ついた人の心は修復できないかもしれない。だけど人間は未来を変えるができる。いまのこの平和な風景がいつまでも続いてほしい、そう願わずにはいられなかった。
忘れられない風景

モスタルからサラエボに向かって走っていると、反対車線から突然、和平治安部隊らしき戦車や車の隊列が現れ、ドキッとする。道路に立っているポリスも多く、まだ本当の平和が戻っていないことがわかった。
しかし、道の周りの風景は素晴らしく、川はゆったりと流れ、周りを囲む緑の山々はとても美しかった。
着いたサラエボは冬季オリンピックが開かれたのが信じられない位、こじんまりとした町だった。
町に入り旧市街の中心地、バシチャルシァ地区へ行ってみると、これまでのヨーロッパらしい町並みとは違い、石畳の狭い路地を囲んで瓦屋根の小さな店が並んでいた。
モスクが建ち、水差しや銅製の食器、金銀細工のアクセサリーを売る店が並ぶ姿は、どう見てもアジア。それはどこか懐かしい風景でもあった。
「この町並み、日本の飛騨高山辺りにそっくりだなぁ...」
「ほんと、アジアに近づいてるって感じがするね」
僕たちのヨーロッパの旅も終わりに近づいていることを実感した。
サラエボにもモスタルと同じように破壊された建物もあったが、それ以上に修復されたきれいな住宅の方がよく目に入り、復興が進んでいることがわかった。
ただひとつ、サラエボを出る日。丘に登ったところから突然、山の斜面を白く覆いつくされるほど、たくさんのお墓が見えたときは愕然とした。
「これだけの数の人たちが戦争で亡くなったのか...」
あのお墓ひとつひとつに、ひとりの人生と家族や友人の涙が詰まっているのか、と思うと胸が痛くなった。
僕たちはあの風景を一生忘れることはないだろう。
朝晩ぐっと冷え込む

ボスニア・ヘルツェゴビナの田舎では、どの家の前にも暖房に使う薪が山のように積んであったが、クロアチアに入った途端、見かけなくなった。代わりに家が大きくなり、庭の芝刈りをしている人なども見かけるようになった。
その落差に改めて驚かされる。
クロアチアの北東部を横断してセルビア・モンテネグロへ向かう。
国境に着くと係官が初めて見る電動バイクに興味シンシンで集まってきた。パッソルを囲みながら、あーだ、こーだと話し込んでいる。

入国手続きが終わって走り出そうとすると、係官が事務所へおいでと僕たちを手招いた。なんだろう? 何か問題でもあるのかな? と心配しながら事務所のドアを開くと、奥にあるテレビを見ていけという。
しばらく待つと、テレビ画面にセルビア版ビートたけしのようなコメディアンが映し出され、バイクに乗るジェスチャーをしながら
「ヤ~~~~マ~~~~ハ~~~~!!」
「ホンダァダァダァダァダァァァァ!」
「スーーーズキーーーーーーーッ!!」
バイクメーカーの名前をエンジン音風に変えて、大声で叫び始めたではないか。
なにーっ? このビデオを見せるために引き止めたのか? あははは...、まったくもう、暇だなぁ...
さらに僕たちが国境を離れるときには、係官がみんな揃い手を振ってお見送り。セルビア人はなんとも陽気で気さくなのであった。お陰で緊張していた気分が一辺に和らいだ。
心にしみる親切

「どうしよう...泊まれるホテルがないぞ!」
「野宿はヤダよ~」
首都のベオグラードに入ったいいが、泊まれる宿が見つからず、ふたりで頭を抱えた。
安いホテルはあるがバイクを置ける場所がなく、逆に駐車場のあるホテルは高くて泊まれない。
困っていると、近くにいた警備のおじさんが心配をして「どうしたんだ?」と声をかけてきた。

事情を説明すると「○×ホテルは駐車場がないなぁ...」「あそこなら駐車場があるけど、4ツ星だから高いか...」「うーん難しいなぁ...」と一緒に頭をひねってくれた。
やはり、いいホテルはないらしい。
すると警備のおじさんは「俺が警備している空ビルにバイクを置かせてもらえないか、事務所に交渉してみようか?」と言ってくれるではないか。ううっ、なんて親切なんだ。
しかし、お願いをすることなく、どうにかツーリストインフォメーションでいい宿を紹介してもらうことができた。が、安心したのもつかの間。今度はもらった住所の通りが見つかない。

町をウロウロしていると、またしても地元の人が声をかけてくれた。その人が通りすがりの人に聞いてくれ、結局、一緒に歩いて宿の近くまでついて来てくれた。そんな見知らぬ土地で受ける親切は、心にしみるように嬉しかった。
そこでふと考えた、僕も日本にきた外国人旅行者のために、こんな風に泊まれるホテルを一緒に考えたり、時間を割いて道案内をすることができるだろうか?
そんなチャンスは少ないかも知れないが、そんなときがきたらぜひ恩返しがしたいと思うのであった。
激変したルーマニア

ルーマニアに入ると大平原がどこまでも続いていた。
ニワトリやアヒルの群れが道を横切る。蹄を鳴らしながら枯れ草を積んだ荷馬車が走って行く。家の煙突からユラユラと上がる白い煙...そこには数十年昔のヨーロッパにタイムスリップしたような、のどかな風景が広がっていた。
「うん、これがルーマニアだよ!」
入国してしばらくは14年前に訪れた時とほとんど変わらない風景が続いていた。ところが、大きな町に入ってビックリ。通りにはきれいな店が並び、物が溢れているではないか。

「えっ、これがあのルーマニア?」
一瞬目を疑った。14年前はレストランに入ってもメニューはなく料理は一品だけ、ストアを覗いても並んでいる商品は数えるほど、ガソリンも長蛇の列に並ばなければ買えなかったのに...
最初に入ったガソリンスタンドにはオシャレなカフェがあり、写真入りのメニューまで置いてあるではないか。もちろん料理の種類もたくさんある。
ヒロコとふたりで近代的なものや新しい建物を見つけては驚き、歓声をあげた。10年ひと昔というが、なんだか別の国に変わってしまったようだった。

それが「24時間営業」という意味だと知ってまたビックリ。えーっ、こんな田舎町のレストランが24時間営業!? 書き入れ時の昼でも閑古鳥が鳴いているのに、夜中にお客さんが来るのか? と心配になる。
それが日本にある24時間営業の店とは比べ物にならないくらい多いのだから驚く。お客さんの数は日本の比にならないほど少ないのに...。始める前に現地調査とかしているのだろうか? そんな愛嬌たっぷりのルーマニア、これからもどんどん変化して行くのだろう。
僕たちは10年後のルーマニアがまた訪れてみたくなった。

ルート = クロアチア/ドブロヴニク → ブルガリア/ソフィア
取材・文/藤原かんいち&ヒロコ
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