BBB MAGAZINE
CREDIT
-
- ライター
- 執筆
藤原かんいち
-
- 撮影
藤原かんいち
-
- バイク
パッソル
VOL.27 『 感動的なバオバブとの出会い 』[アフリカ大陸編]
感動的なバオバブとの出会い
この旅のひとつの大きなテーマは世界中の巨木に会うこと。
巨木の中でも特に幹が太いことで有名なのがバオバブ(童話"星の王子様"に出てくる。幹がトックリ状に太くなった木)。主にアフリカの熱帯地方に自生するバオバブだが、その数は意外に少ないようで、なかなか会えなかった。
早くバオバブに会いたいと急く気持ちを抑えながら、ベットフォードの宿でもらった情報を頼りに、グラベロッテという町にやって来た。この近くにバオバブがあるはずだが...
すると道端にそれらしい看板を発見。ダートを3kmほど走ると、あった!
バオバブが大地に太い幹をドーンと下ろしていた。幹が丸みを帯び太く、これぞまさにバオバブという風貌。割れ目から中に入ると空洞になっていて、中はふたりが横になれるくらい広い。僕たちは色んな角度からバオバブを眺め、バオバブを楽しんだ。
それが"バオバブめぐり"のスタートだった。次に訪れたモケティシのバオバブは、見た瞬間に腰を抜かしそうなほど大きかった。一軒家くらいの大きさは優にあるだろう。二股に分かれた幹はどちらも巨大でまるで恐竜のような迫力だった。
だがここで驚いていられない。さらに北へ行ったジンバブエ国境近くには"BIG TREE"(樹齢3000歳、幹周りが40m以上)と呼ばれる超巨大なバオバブがあるからだ。
バオバブへ続く道は、最後の最後ついにデコボコと砂の悪路に変貌した。まるでバオバブが「お前はここまで来る強い意思があるのか?」と僕たちをふるいにかけてよう。よーし、絶対行ってやるぞ。悪路を必死に走り続けること3時間、僕たちはついにバオバブの目の前に立った。
周りのものを圧倒する存在感。木ではない、別の生き物のようだ。そして大きい、恐ろしく大きい。メキシコで会った"トゥーレの木"が世界一太い木とされているが、もしかしたらもっと大きいかもしれない。
僕は夢に見たバオバブに会えた感動で涙が出そうになった。いままで色んな巨木に会ってきたが、会えたことの感動と興奮は、間違いなくこのバオバブが一番だった。
予想外なことばかりのジンバブエ
さあ、ついに心配していたジンバブエに入る時がやってきた。
ジンバブエは経済危機でガソリンが手に入らないとか、治安がかなり悪化しているとか、マイナスの情報ばかりを耳にしていた。それなら入国せずにモザンビーク経由でマラウイに入ろうとか思ったが、かなりの遠回りになり時間がかかることから、思い切ってジンバブエに入ることにした。一応、万が一に備えてポリタンクを南アフリカで購入。マジェスティ用の予備ガソリンをパッソルに積んで、ジンバブエに突入する。
最初の村に着いてまず驚いたのが宿の値段だった。物価は安いと聞いていたのに4000円もするではないか。聞けば2ヶ月に1回のペースで値上がりしていて、3年前には3千ジンバブエドルだった宿代がいまは3百50万ドル。何と千倍以上! ああ恐ろしい...
食堂に入るが、どの料理も高くて7~800円以上。南アフリカでよく飲んでいた見慣れたジュース(確か200円くらいだったかな)があったので、いくらかと思ったら... うそーっ800円もする。こんな高いジュース、買うヤツいるのか!?
かなり物価高なのに、最高額紙幣が5万ドル(約50円)というのはどういうこと? ふたりでちょっと食事しただけで、20、30の大枚がドンドン飛んでゆく。そして、何か買う度にいちいちお札の数を数えなくてはならない、これがまた疲れる。まったく、この国はどうなってるんだぁぁぁ!?
そんな経済状況で首都のハラレは大丈夫なのか、心配になる。ハラレはビルが立ち並ぶ大都市。町に入ると何はともあれ、日本人旅行者が何度か強盗に遭っているという通りを避けて、予定していた宿に逃げるように滑り込んだ。
色々悪い噂を聞いていたので、町はどれだけ悪い雰囲気なのかと思ったら、昼間歩いた感じは至って平和。女の人や子供も普通に歩いている。さらに心配していたガソリンも以前ほど不足してないようで、スタンドで普通に買うことができた。
さらにハラレは物価が安い上に何でも手に入る。また宿の人たちはみんな親切、インターネットもできる。徐々にハラレの生活が快適になり、ジンバブエもまんざら悪くないなぁと思い始めるほどだった。入国前のあの心配がウソのようだ。やはり何事も"百聞は一見にしかず"実際に行ってみないとわからない。
タイムスリップしたモザンビーク
スーパーとお店が数軒あるだけの小さな町に到着した。ここがジンバブエとの国境の町ニャマパンダだ。最後の食事を済ませ、お金がかなり残っていたのでコーヒーやトイレットペーパーなどを買う。まだ残っているが欲しいものがないので、そのままは国境に入る。
出国手続きは簡単に終わったが、次の税関がバイクに積んだ荷物を全部開けて見せろという。こんなことを言われたのはこの旅始まって以来。この荷物を詰めるのに僕たちがどれだけ苦労しているのか、わかってるのか? それに入国ならまだしも、これから出て行く人間の荷物の何をチェックするのだ?
面倒臭いなぁと思いながらリアボックスを開くと、ひとつひとつの袋を指差して開けて見せろと言う。パソコンや周辺機器、ガイドブック、薬箱、ヒロコの化粧品、食料など、ひとつひとつを手に取ってはニヤニヤ眺めている。途中で魚の缶詰を見つけると、何と「これくれないか?」というではないか。これが目的だったのかと頭にくる。ヒロコは「これは今夜食べるからダメ!」とうまくあしらったが、油断も隙もあったものではなかった。
どうにか無事に終わりモザンビーク側へ。こっちは実にのんびりムード。イミグレーションの人も、その周りにいる両替人は危ないからやめたほうがいいぞとか、小さな町ではガソリンは買わない方がいい、水が混じっているときがあるんだと、色々アドバイスしてくれた。この国境はパソコンもなく、全て手書き記入。かなり時代遅れだが、その分人は素朴で親切だった。
モザンビークに入るとこれまでよく見かけたレンガの家はなくなり、全てが茅葺き屋根で土壁の家になった。まるで昔のアフリカの風景を見ているよう。内戦が長く続いた国なので、近代化が遅れているのだろう。
道を走っているとバイクを見つけた子供たちが怖がって逃げてしまった。こんなことも初めてだ。大人もバイクと僕たちの顔を見ると、表情が固まってしまう。もしかしたら東洋人を初めて見たのかもしれない。こんな国がまだあったのか、と驚く。
ようやく着いた小さな宿では、夜になると水の入ったバケツが部屋に運ばれてきた。どう見てもシャワーはなさそうだもんな。隣の部屋を覗くと床に排水用の小さな穴が開いている、どうやらこの部屋が洗い場になっているようだ。
次に案内されたトイレも同様、土間の真ん中に四角い穴が開いているだけ。これぞアフリカンスタイルという感じ。僕はいいけど、きれい好きなヒロコは大丈夫か? 心配になる。しかし最初は戸惑っていたヒロコだがすぐに慣れたようで「汚くて流れないトイレよりはこの方が快適だわ、お風呂も行水みたいで楽しい」
と意外な反応が返ってきたのでビックリ。女ってわからない...
ブランタイアでついにダウン
モザンビークのテテから突然体がだるくなり、翌日からついに熱が出てしまった。
風邪だろうと思い、日本から持ってきた風邪薬を飲むが、なかなか直らない。それでもバイクで走れないほどではないので前進を続けた。
マラウイとの国境の町に着くな否や、まるで砂糖に群がる蟻のように、ものすごい数の人間が僕たちの周りに集まってきた。
「チェンジ、マラウイクワチャ、グットレート!」
「イミグレーションはこっち!」
「バイクはこっちに止めて!」
「オレが全部仕切るから問題ないよ!」
「両替は? ドル? ランド?」
むさ苦しい男たちが、僕たちの耳元で勝手なことをがなり立てる。遠慮も何もあったものじゃない。出国手続きや両替ぐらい自分でできるよ。頭にきた僕は 「ああ、うるさい!」
日本語で怒鳴り返したが、多勢に無勢。全くひるむ様子がない。「バイクは俺が見張っているから、安心して手続きして」
チップ欲しさにと勝手なこと言っているのを無視してイミグレーションへ。モザンビークの普通の人は素朴なのに、いつかはみんなこうなっちゃうのかなぁ...
手続きは簡単であっという間に終わった。そしてマラウイへ入国。100kmほど走って、マラウイ第二の都市ブランタイヤに到着。都市というより大きな田舎町という感じだ。宿に着くと、すぐにベットに横になる。発熱が3日も続いている。さらにリンパ腺まで痛くなってきた。これはどう考えても普通の風邪ではない。そう思った僕は、思い切って病院へ行くことにした...
ルート = (南アフリカ)ネルスプリット→ピーターズバーグ→(ジンバブエ)マスビンゴ→ハラレ→(モザンビーク)テテ→(マラウイ)ブランタイヤ
総走行距離:32,396km(アフリカの走行距離:5,598km)
取材・文/藤原かんいち&ヒロコ
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